Alibabaはなぜ、フリマではなくコミュニティ重視のC2Cのマーケットプレイス事業を行うのか?

Shogo Ieda
ProductAnalysis
Published in
6 min readMar 4, 2017

日本国内外のProductを取り上げ、その展望を考察する、不定期連載ProductAnalysis。

第2回はTaobao(スモールB2C)とT-mall(B2C)、Alibaba(B2B)のマーケットプレイスを展開するAlibaba傘下のC2CアプリXianyu。

なぜAlibabaがフリマではなくコミュニティ重視のC2Cのマーケットプレイス事業に取り組むのかをAlibabaの事業の歴史的背景と競合との関係をもとに考えてみる。

WeChatPaymentとAlipayの送金サービスのポジショニング

まず両者が現在どういうポジションにいるのかを図解した。登場人物はWeChatPaymentとAlipayである。

WeChatPayment:中国でLINE、Twitter、Facebookのように使われているWeChatが提供する決済・送金サービス。下図で緑字で記載している部分。

Alipay:Alibabaが提供する決済・送金サービス。下図で赤字で記載している部分。

筆者作成

①オフライン取引×C2C

現金で友達や同僚とやりとりをする部分だ。後ほど説明するが、Alipayはオンライン場の取引で使われる匿名ベースのサービスであったため、この領域は取りきれていなかった。

中国版LINEのWeChatは2013年にアプリ内で使えるPaymentサービスを提供し、(知っている人は知っている)お年玉マーケティングで、ここ数年で一気に成長し、オフラインの個人間の送金はほぼ独占している。

④オンライン取引×B2C

一方こちらは、Alipayが圧倒的シェアを誇る部分である。スモールB2CのTaobaoとB2CのT-mallというマーケットプレイスを自社で持ち、かつ両プラットフォームにAlipayを送金手段として提供しており、オンラインの購買は全てAlibabaが握っていると言っていいほどだ。(JDなどが追い上げているが)

③オフライン取引×B2C

では、この領域の勝者はどちらか?

ここが中国で絶賛殴り合いの市場だ。そしてWeChatPaymentが優位である。

なぜ、WeChatPaymentがこの市場で優位なのか?

その解答は、Alibabaがフリマではなくコミュニティ重視のC2Cのマーケットプレイス事業を展開する理由へとつながる。

フリマアプリの文脈ではなく、ソーシャルを取りたい文脈で、C2Cのマーケットプレイスに参入するAlibaba

オフラインの取引で主に考えられるのは、タクシー、コンビニ、レストランなどである。これらの場面で使われる送金アプリにはソーシャルさがそのアプリに入っているかが、最も重要な要素であると思う。

オンラインでの行動は個人で完結するが、オフラインは2人以上で行動する場面がかなり多い。タクシーを友達と乗ったり、同僚とご飯を食べに行ったりなど。

その際に、送金アプリに友達がいるアプリといないアプリならどちらを使うだろうか?間違いなく、支払った後にそのまま同じアプリで割り勘できる前者だろう。

もちろん、それぞれの送金アプリが使える導入店舗があることが大前提であるが、導入店舗数が同じであったときは、ソーシャル要素を持つアプリの方が便利で使われる。

Alipayはあくまで匿名の送金サービスで、オフラインの友達は新たに追加しなけれればいけない。

この差(WeChatPaymentはすでに友達と繋がっているが、Alipayは繋がっていないこと)が、オフラインのB2CでWeChatPaymentが優位になっている理由と言える。

筆者作成

※上の図では、WeChatPaymentがB2Cのオフライン取引への参入のしやすさを3本の実戦で、Alipayの参入の難しさを点線で表現している。

となると、Alibabaがこの差を埋めるべく、オフラインでのつながりを確保しにいくのは当然の流れだ。(図では⑤で表現している。オンラインの関係からオフラインの関係へと転化するので、図では⑤をオンラインとオフラインの真ん中につけている。)

この文脈で展開してるのが、Xianyuだ。

WeChatが獲得できるソーシャルな関係は、オフラインで一度会ったことがある人だけだ。(出会い系機能はあるにはあるが)

しかし、Xianyuは、オンラインで地域や趣味のコミュニティに入ることができ、その中で中古品などの売買を行い、関係性を作ることができる。

だから、オンラインでのC2C市場はあまり重要視していないと言える。フリマのような取引には興味がない。Alibabaにとって大事なのは、オフラインに結びつくコミュニティを作れるかどうかだ。

コミュニティと結びついた出品がどれだけされているかなどがKPIに置かれているだろう。

B2Cのオフライン取引での優位性となるC2Cの送金市場を抑えたいという、Alibabaの本当の意図が隠れている。

この戦略はアプリでどうデザインされているのか?

最後にXianyuのアプリにこの戦略がどうデザインされているかを紹介して締めたい。下タブの左から2つ目にはコミュニティ機能がある。

一般的なマーケットプレイスだと、検索が置かれることが多い。

各コミュニティの下には、常に出品ボタンが配置されている。

同じ中古商品のマーケットプレイスでも、最終的に取りたい市場や競合の環境で、日本と中国ではまったく違う文脈で事業が展開されていて、非常に面白かった。

では、ざいじえん。

追記)

AlibabaがどうC2Cのマーケットプレイスに参入するかを先に考えたのではなく、Xianyuのコミュニティ機能の配置の位置を見て、なぜこの位置にコミュニティ機能を置くのだろう?という疑問から考えた。

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Shogo Ieda
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C2CマーケットプレイスのPM->ペイメント事業の戦略とか組織とか