Qiitaで修業を積み、卒業しよう
「最近Qiitaに記事は書かないんですか?」と聞かれる機会があったので、考えていることを書こうかなと思いました。ちょうど卒業シーズンなので、時期的にもいいかなと。本記事の趣旨は以下の通りです。
- Qiitaはビュー数が多く、記事に対する評価の仕組みもあります。そのため、「アウトプットの仕方」を学ぶのに適したプラットフォームです。
- 「アウトプットの仕方」を学んだら、「Qiita」での「ブログ記事」というフォーマットから出て、内容・媒体・発信サイトを変えるチャレンジをしていった方が良いと考えています。特にQiitaから出て独立(卒業)することは、後進のためランキングを開けるという意義もあります。
- お世話になったQiitaには卒業後も良い記事・既存記事のメンテナンスで貢献し、プラットフォームの維持に貢献したいです。
学び場としてのQiita
技術者にとって、「伝える力」というのは重要なスキルの一つです。その一方で、これは鍛えにくいスキルでもあります。日常的にコミュニケーションを取るメンバーは同じチームのメンバーなどに限られることが多く、そこでは「言わなくても伝わる」状態が生まれがちなためです。多くのチームを渡り歩けばこの点は解消できますが、それができる状態は限られていると思います。
Qiitaでアウトプットを行うことは、「伝える力」を鍛えるのに役立ちます。いつもなら身近なメンバに伝わりさえすればいいことを、(Qiitaに訪れる)不特定多数の技術者に伝わるよう記事を書く必要があるためです。Qiita上で評価が得られるよう試行錯誤することで、多くの人に「伝わる」情報発信の仕方=「アウトプットの仕方」を身につけることができます。
個人的な体験を少し書きます。以下の記事は、チーム内でのライブラリ選定に際して調べたことを書き留めたものでした。
それまで「いいね」(当時はストック)がついたことはあんまりなかったので、たいした反応があるとは思わずメモを置いたようなつもりでした。ただ、予想に反して多くの反響がありました。
「きちんとまとめて書くことで、他の人の役に立つこともあるんだな」というのが率直な感想でした。それ以後、記事を投稿する際は他の人が読んでも伝わりやすいことを意識するようにしました(細かいTipsは除く)。そうして書くようになり、次に当たったのが以下の記事でした(今ではもう古い情報になってしまいましたが)。
この頃Angularはまだ黎明期のフレームワークで、それほどメジャーではなかったと思います。実際この年のAngularアドヴェントカレンダーは綱渡りの状態で、無事完走できた時は喜びがひとしおでした。「アウトプットの仕方」が身に着くと、同じ技術に興味がある人たちとつながることができるというのも大きな効果だと思います。
卒業の意義
「学習にコンフォートゾーンはない」という格言があります(Learn Betterより)。学んでいるときはだいたいつらいもので、心地よいと感じていたら学びが少なくなっているということだ、という話です。Qiitaにおいても、一定の評価が獲得できるようになってくるとそれが心地よくなってきます。記事を書く=>いいねがもらえる=>ヨッシャ!というサイクルですね。「学び」ではなく「いいね」が目的になった記事を、多少ならずとも目にしたことがあるのではないかと思います。
より「アウトプットの仕方」を磨くには、「心地よさ」から出る必要があります。どこから「出る」のかについては、以下3つがあると思います。
- 「内容」: 書きやすい内容から出る
- 「媒体」: ブログ記事という媒体から出る
- 「サイト」: Qiitaというプラットフォームから出る
技術者として、新しいことを学んでいない状態は問題といえます。「内容」から出る(=新しい内容を書く)ことにチャレンジすることは、アウトプットの仕方を磨くだけでなく技術者としてのスキルアップにとっても重要だと思います。私は途中で業務システム開発(コンサルタント業務)から研究開発に移ったのですが、その際に書いた記事が以下です。「内容」を変えても「伝え方」が通用するか?という点を検証できたと思います。
ブログ記事というのは媒体としてはかなり書きやすい部類に入ります。そのため、「媒体」から出る(=新しい媒体でアウトプットを行う)ことは大きなチャレンジとなります。私がチャレンジしたのは、オンライン講座と書籍です。
新しいチャレンジを行うと、新しいフィードバックが得られます。私の場合、オンライン講座では声が小さいと指摘され(普段声を張ることがあまりないので・・・)、書籍では低評価をつけられるなど悲しい思いも経験しました。
「本を書く」となったとき、ブログを書くのとは勝手が違うことを体感できると思います。最近は技術書典が盛況なこともあり、書籍を書いてみるというチャレンジが行いやすくなりました(私も出させていただきました)。ページという物理の制約、なにより「対価」をもらえる内容にする、というのは他では得難い経験と思います。
オンライン講座、書籍、いずれもQiitaの記事を見たということでオファーを頂きました。つまり、Qiita上で記事を書くことで次のチャレンジに進める可能性があるということです。この点でも、Qiitaの存在意義は大きいと思います。
最後が、そんなQiitaから「出る」ということです。QiitaはQiita自体を見ている人が多いので、そこに公開される記事は(無名のブログにあるより)見られやすくなります。つまり、「ゲタ」をはいた状態ということです。このゲタを外した状態で同様のビューや評価が集められるか?というのが次のステップになると思います。
私は、現在は以下のサイトで記事を書いています。ここでは、日本語だけでなく英語の記事や、期間を決めて強制的にアウトプットする「連載」という形式などにチャレンジしています。
Qiitaから出るのにはもう一つ大きな意義があります。それは、新しくQiitaに入ったユーザーに道を開けられるということです。ある程度意識的にQiitaのトレンドに乗れる人が次のチャレンジを行うことで、後に続く人に「アウトプットの仕方」を身に着けるためのスペースを空けることができます。
見返すと、私の場合2017年の夏/冬ぐらいからQiitaへの投稿をあまりしていませんでした。これは、ちょうど書籍の執筆を始めた時期です。記事を書く暇がないぐらい他のことにチャレンジしていた・・・と思えばまあよかったのかなと思います。
卒業後
最近、Qiitaは批判されることがしばしばあります。実際、トレンドに乗るような記事をみて私も思うところがないわけではないです。ただ、アウトプットの仕方を身に着け、その先の様々なチャレンジができたのはQiitaのおかげと思います。そのため、今後もQiitaがよいアウトプットのプラットフォームであるよう、貢献していけたらと考えています。
その一つが、既存の記事のメンテナンスです。以下の記事は、実はかなり変更を入れています。Pythonの機能追加や環境構築におけるトレンドの変化などを取り入れるためです。
新規の記事も書くつもりですが、個人のブログとの兼ね合いがあるので頻度は落ちると思います。ただ、書くなら長く参照されるような体系的なものにしたいです。
あとは、身に着けた「アウトプットの仕方」を体系的に整理して「伝える」ことを行っています。以下は、社内の研修でつかった資料です。
こうしたことで、少しずつですが恩返しをしていければと。そして、自分自身は新しいチャレンジをどんどんしていきたい!と思います。