【ほぼ全文書き起こし】ソフトバンクビジョンファンドも登壇!Future PropTech 2019 London 世界の著名VCから見たPropTech/不動産テックの未来とは

Shun Sakurai
PropTech JAPAN
Published in
32 min readJun 23, 2019

こんにちは、850名以上が参加する日本最大の不動産/建設スタートアップコミュニティPropTech JAPANを運営している桜井です。
2019年5月14日にイギリス・ロンドンで開催された世界最大規模のPropTechカンファレンスFuture PropTech 2019 Londonにグローバルパートナーとして参加してきました。
今回は、日本のPropTechの盛り上がりにさらに期待して、カンファレンスの中から、世界のPropTech/不動産テックの著名ベンチャーキャピタルが登壇したパネルディスカッションのセッションをボリュームがありますがレポートしたいと思います。

はじめに:Future PropTech とは

筆者撮影:Future PropTech 2019 London

・FUTURE: PropTech is the World’s Number One PropTech Event!
・2015年に設立され今年5周年となる
・ステージコンテンツ、ブース出展の二つからなるPropTechに特化したグローバルカンファレンス
・これまでベルリン、ウィーン、ロンドンでイベントを開催し累計1万人以上が参加
・We were the first & original event to focus on the digital transformation of the real estate sector and proud to say we are still considered the very best!

数字で見るFuture PropTech 2019 London

・約2000名:1日開催のイベントの合計来場者数
・100人以上:世界中からスピーカーが登壇
・50か国以上:世界中から参加者が訪れる
・700社以上:世界中から多くの企業が参加
・58% 35%:不動産会社(58%)、スタートアップ(35%)が参加

グローバルパートナーとして参加

ブース出展エリアには、「インターナショナルゾーン」が設置され、日本を含む13か国のスタートアップコミュニティがブースを出展しました。
私たちPropTech JAPANも、グローバルパートナーとして出展機会を頂き、日本の状況について情報発信しました。

筆者撮影:Future PropTech 2019 Londonのインターナショナルゾーン

<インターナショナルゾーン出展国一覧>
日本
フィンランド
ポーランド
ブラジル
オランダ
ルーマニア
イギリス
南アフリカ
スイス
デンマーク
ロシア
スペイン
ノルウェー

カンファレンス全体のレポート、総括については別の機会にお届けしたいと思います。今回は、カンファレンスプログラムの中でも多くの聴衆を集客したセッションのについてレポートします。
※本人たちの発言をなるべく書き起こすようにしていますが、完全でないことに予めご了承ください。
見出し等の編集は筆者が実施しているもので、登壇者の発言ではありません。

パネルディスカッション:世界の著名VCから見たPropTech(不動産テック)

出所:Future PropTech 2019 London

Investing in Proptech — Insights from the worlds leading VC’s
<登壇者>
Justin Wilson
Partner Softbank Vision Fund
Constance Freedman Founder & Managing Partner Moderne Ventures
Roelof Opperman Principal and Co-Head of Investments Fifth Wall
David Gerster VP Data JLL Spark
Michael Beckerman CEO CRE Tech(モデレーター)

筆者撮影:パネルセッションの様子

拡大を続けるPropTechセクター

Michael Beckerman (CRE Tech):ハロー、ロンドン! (米英語のアクセントで)お分かりのように、私はロンドン出身ではないのですが、皆さんに会えて嬉しいです。
(360度聴衆が登壇者を囲むステージセッティングを見て)ある種のトークショーのような珍しい設定ですね。
私はMichael Beckerman、ニューヨークでCRE Techと呼ばれる会社を経営しています。
今回はGary(Future Proptec最高責任者)とFuture Proptechをサポートすることができ嬉しく思っています。
今日は私が米国でいつも使っている「CRETech」ではなく「PropTech」という言葉を使います。そして、ここに来られたことをとても嬉しく思います。

弊社はFuture PropTechと同様のカンファレンスを米国で実施しています。7〜8年前に始め、当初は100–200人の参加者の規模でした。
こうして、ヨーロッパを含む世界中のProptechセクターで起こっている全てをサポートできることを非常に嬉しく思います。
私達が2012年にイベントを始めたとき、私が知る限りでは12社のスタートアップしかおらず、ニューヨーク内でそのスタートアップ達を繋げていました。2012年、5000万ドルがこの産業に投資されました。昨年、このPropTechセクターに全世界で100億ドルが投資され、約4000のスタートアップが存在しています。 このセクターの成長は桁外れです。

みなさんはロンドンもしくはアメリカでその成長を目の当たりにしていることでしょう。私はFuture PropPtechに初めて参加しますが、このイベントに参加できていることを大変嬉しく思います。
このPropTech分野で日々行われているイノベーションは驚くべきものであり、投資のペースも信じられないほどです。

本日のこのVCセッションには、4人のトップインベスターに来て頂いています。 彼らがどこに投資し、どのようなトレンドに注目しているのか。またこの業界がどこへ向かっているのかについて話を進めたいと思います。

それでは、私は少し黙りますので、皆さん自己紹介をお願いします。では、Constanceから、Moderne Ventures社についても少しお話ください。

不動産領域は無視できない領域

Constance Freedman(Moderne Ventures) :皆さんこんにちは。 Constance Freedmanです。Moderne Venturesはベンチャーファンドを運営しています。弊社は不動産、金融、保険、そしてホームサービスを中心としたテクノロジー企業を投資対象にしています。

私たちの資金は3つの分野に分かれます。 1つは、一般的に収益が2〜1500万ドルの企業に投資するためのファンドです。さらにThe Moderne Passportプログラムという、産業新興プログラムにて企業が業界に参入するサポートをします。その一方で、テクノロジーのイノベーションを模索している約700の企業幹部や企業とスタートアップを弊社のネットワークで繋げ、サポートします。
私たちは2008年に最初のファンドを始めました。それ以来、過去10年間業界内の多くの変化を見てきました。

Michael Beckerman (CRE Tech):素晴らしいですね、ではRoelof、次お願いします。

Roelof Opperman(Fifth Wall):Fifth Wall社のRoelof Oppermanです。 弊社はPropTechにおける「Built World」と呼はれる部分に焦点を合わせている世界最大のVC会社です。
Moderne社と同様に、弊社プラットフォームのユニークな点は、大規模な機関投資家やファンドの出資に加えて、約60%がロンドンの不動産の大規模所有者および運営会社であるということです。

弊社はイギリスに支店があり、私はその支店の不動産技術投資グループを統括しています。 約10億ドルのAUMがあります。ヨーロッパは今大変盛り上がってきています。弊社のプラットフォームを構築する時は、ここで多くの時間を費やすことになるでしょう。

Michael Beckerman (CRE Tech):次、Justinお願いします。

Justin Wilson(Softbank Vision Fund):こんにちは。 Softbank Vision FundのパートナーであるJustin Wilsonです。 当社はテクノロジー企業に焦点を当てた世界的なリードステージ投資家です。他のパネリストの皆さんや、このカンファレンスの趣旨とは異なり、投資領域を「不動産」に絞っていません。

PropTechを一つのビジネス・セクターとして見た時に、非常に大きなビジネスチャンスがあると思っています。現に私達が数十億ドルを、このセクター内で投資しています。不動産領域は投資として無視することはできないカテゴリーです。
私たちの視点から見れば、不動産業界はまだ初期段階ですが、途方もない可能性を秘めている分野だと思います。そのため、不動産業界全体、住宅、商業不動産、その他さまざまな側面から見て、次に「賭ける」興味深いトレンドを探しています。

当社はグローバルに展開しています。 私はカリフォルニアのオフィスを拠点としていますが、ここロンドンとアジアにも事務所を構えています。
レイトステージの企業への投資に焦点を合わせています。 弊社の最小投資額の小切手は$100 millionドルからスタートです。これは、かなり大きなギャンブルともいえます。

Michael Beckerman (CRE Tech):どうしても「$100 million」と言いたかったのですね。(笑)

Justin Wilson(Softbank Vision Fund):$100 millionドルはあくまで最低金額です。実は $100 million小切手を書くのはそんなに簡単じゃないですよ。

Michael Beckerman (CRE Tech):では、Dave次お願いします。

David Gerster(JLL Spark):David Gersterです。 JLL Sparkで投資家として活動しています。 当社は$100 millionのProptechファンドを運営しています。
当社の特徴の一つは、私たちのファンドの出資者はJLLのみであることです。当社はベンチャーキャピタルではなく、事業会社ですので、投資の意思決定を下すときは非常に戦略的なアプローチを行います。
スタートアップをどのようにサポートすることができるか、 どのようにして実際に大規模な企業に成長させるかを考えています。

JLLは90000人規模の非常に大きな組織です。 例えば、投資チームに加えて、我々には「成長チーム」と呼ぶ別のチームもあります。彼らの仕事は、私たちのポートフォリオ企業をJLLに繋ぎ、それらを流通させ、その後どのように成長させることができるかを考える役割を担います。私たちは徹底して戦略的にアプローチを行うことに焦点を当てています。

PropTechはまだまだ初期段階

Michael Beckerman (CRE Tech):なるほど。それでは本日、観衆の皆様はどういった方々がいるか少し聞いてみましょう。各国によって参加者の傾向が非常に異なるからです。
スタートアップの方、手を挙げてください。 (会場の半数近くの手が挙がる)
多くのスタートアップと多様な方々が観客席にいらっしゃるようですね。

では、最初の質問です。Constanceから順に聞いていきましょう。私が2012年頃にこの業界で働き始めたときは、非常に小さいコミュニティでした。 それから約7年が経過した今、このエコシステムに入ってくるお金の額や、スタートアップの数は増加しました。
そして世界のGDPにおける不動産が占める割合は13%になりました。 地球上で最大の産業です。これは Fintechと比較すると、100億ドル多い金額です。
これらを踏まえて、Proptechの投資サイクルは、今どの段階にいるといえますか?

Constance Freedman(Moderne Ventures) :私は2008年からこの業界にいるのですが、約3年半前に私達は資金調達しました。その際、人々が私を見て頭を撫でるように「あなたが焦点を当てているReal Estate Techは非常にニッチな産業だ」と言われたのを覚えています。それが今では数兆ドル規模のニッチビジネスとなり、それはここに座っているパネリストによって正当化されたと思います。

ますます多くの資金が投入され、昨年で推定約140億ドルがPropTechに投資されました。ただ、私は実際の投資額はより高いと思っています。なぜなら、DocuSign等の企業に対する初期投資が「PropTech」としてカウントされていないからです。

ただ、誰もDocuSignをProptech企業と呼ぶことはありません。同社の昨年の企業価値は$45億ドルです。DocuSignはPropTech企業としてカウントされていません。これも踏まえて、様々な業界に関わっているテック企業が、必ずしもセクターを絞る必要も私はないと考えています。

では、私達が不動産、PropTech業界が現在、どの段階にいるのかと考えた時に、先ほどの別のパネルディスカッションのパネリストが言ったように、「まだそんなこといってるの!もう時代は2019年です。なぜ私たちはこの最先端テクノロジーを使わないのか?」という状態です。これは、まるで1999年、2000年ごろにインターネットの対応に追われたフォーチュン500の企業たちのような状態と似ています。

今、この段階になって、多くの不動産管理者や土地所有者が「テクノロジーが進化してきた。私達も少しは把握しなくては」と言っているはずです。
業界内の人々が、「まずは理解しなくては」と言っている時点で、この業界はまだ初期段階にあると思います。 誰もがこの舵を取りたいと思っているはずです。
「この既存のモデルを完全に変えることができるだろうか」と言っているスタートアップの中には、多くの創造的破壊を導くものもあると思います。 ただ現段階では、革新的な方法や創造的破壊を見いだすのは、従来の不動産の所有者や運営者の受け入れにかかっています。

ロンドンの不動産テックは米国から2~3年遅れている

Michael Beckerman (CRE Tech):共同創設者のBrad GreiweとBrendan Wallaceとの出会いを思い出しました。 彼らがニューヨークにやってきて会った際に、「2億ドルのファンドを立ち上げる」というようなものでした。 次の日、彼らはファンド発表をしました。 あれは4億ドルでしたか?

Roelof Opperman(Fifth Wall):そうですね。

Michael Beckerman (CRE Tech):冗談じゃない! 御社は莫大な金額の資金を集め投資しているのですね。では、そんなFifth Wallは今この業界のエコシステムをどのように見ていますか?

Roelof Opperman(Fifth Wall):まずは、マクロについて話をして、その後私達が焦点を当てているここヨーロッパの、ミクロについて話をします。

まず、Constanceの言ったことに同感です。今この業界で起こっているのは、一種の不動産業「ビックバン」です。それは非常に混乱しています。不動産業者がテックに参入しようとし、技術者が不動産業界に参入しようとしている。
これは役割が混同しています。人々は何が起こっているのかを理解しようとしており、それも徐々に落ち着きつつあります。特にサービス業界で、大きな創造的破壊が起こっています。これは、MIT, Caltech, IITの院生がこの業界を見たときは簡単に「(中間のプロセス等を)中抜きできる」と言うでしょう。

そしてそのエリアでテクノロジーを構築し始めます、その一方で、従来の大家が「私の素晴らしい資産は大丈夫。これは私が所有する財産なので、邪魔されることはない」と信じています。
そこに突然、WeWorkがやってきて、彼らの入居者を奪っていき、建物の中にも手を加えていきます。そこで混乱した空気が流れ始めます。

ただ、これは氷山の一角に過ぎません。私が「氷山の一角」と言うこと自体矛盾しているのですが、本当のことです。 私達はここヨーロッパでも出資し、多くの戦略の話をしてきました。個人的にヨーロッパはおそらくアメリカより2~3年遅れていると感じます。

Michael Beckerman (CRE Tech):(2~3年遅れていると)言ったのは私じゃないですよ。Roelofです。

Roelof Opperman(Fifth Wall):これはテクノロジーの差ではありません。 ここヨーロッパのテクノロジー(特にロンドン、ベルリン)は驚異的な2大中心地だと思います。
また、東ヨーロッパは世界でも有数の技術的才能を持っています。 ただ、大きな違いは、不動産業界自体がアメリカよりも保守的だということです。ロンドンでは、基本的に4つか5つの大手企業がロンドンをコントロールしています。ドイツでは、おそらく3つか4つです。 それがアメリカでは、はるかに細分化されています。

起業家たちにとって大きな課題は、スタートアップを立ち上げるために納得させるべき候補となる投資家が少ないということです。これはアメリカでも同じでした。だから、私はFifth Wallを設立しました。

しかし、今私が話している会話は、私が資金を調達していた2年半前に話した内容と全く同じです。 質問内容も同じです。過去2〜3年で米国がこの業界で上手くいっていることを実感しますし、不動産テックに大きな変化があったのは間違いありません。
ヨーロッパはまさにこれからです。 米国の取り組みを教訓として活かすことができるので、多くの点で有利になります。これが私達が思う今の業界です。

ビジョンファンドが注目するトレンドとは

Michael Beckerman (CRE Tech):なるほど。ではJustin、ソフトバンクはおそらく世界最大のベンチャーファンドであり、 不動産以外にも大規模な投資を行っています。

不動産領域において、WeWork、Opendoor、Katerraそして私達がよく知らない他のスタートアップにもかなりの投資をしてきました。不動産をセクターとして見たとき、今は何に注目していますか。過去の投資と対照的な話でも構いません。

Justin Wilson(Softbank Vision Fund):わかりました。最初に、私達はPropTech産業の発展と、不動産業界におけるテックの受け入れという意味では、まだ初期段階にいるという考えは他の皆さんと同感です。

他の産業と同様に、従来のプレーヤーはイノベーションのジレンマに陥っています。
利益目標やビジネス運営方法は固まっているが、皆が新しいツール、システム、テクノロジーの移行や受け入れに苦労しています。
特に不動産業は「遅い」と言われています。でも、そんなに焦る必要もありません。
Microsoftを見ると、今ではすごく先進的ですが、これまでに長い年月をかけて進化してきました。これは1990年代から2000年代にかけての最先端テック企業の一例で、新しいテクノロジーへの移行が遅すぎることを非難されていました。それから多彩な分野での追い上げを成し遂げました。

どの業界でも課題はあります。230兆ドルの不動産資産を抱える業界で、商業不動産や住宅分野で、不動産業者はどれだけテクノロジーの恩恵を受けているのか。ここには多くのビジネスチャンスがあります。
ソフトバンクの観点からは、住宅側で見いだしたチャンスを商業的側面で見出すのに苦労しています。
我々は物事の断片や、一部の技術にだけ精通しているイノベーターに注目しがちですが、商業ビルは大規模かつ全体的な問題を抱えており、多くのオペレータが実際に苦戦しています。私達が見ているレイトステージではこの種の課題を解決し成長する包括的な企業に注目しています。

また、私達が見ているのは10年の上げ相場のほん一部の時代です。そのため、マクロベースのテクノロジー分野に一般的な不動産だけでなく、景気循環を考慮したビジネスチャンスやその産業を見てみると、いくつかのサブセグメントに注目する傾向があります。
最近行ったリード投資の1つにClutterという会社があります。米国のセルフストレージスペースを提供する会社です。Fifth Wallもその会社の投資家です。 住宅のサイクルを歴史的に振り返ってみると、レンタルはもう少し回復する傾向があると思います。

Katerraは集合住宅建設に焦点を当てています。 私たちは、他の業界よりもマクロ経済環境に柔軟性をもって耐えられる企業に目を向けています。価値ある効率性と運用規模の活用を促進することができるテクノロジー企業もこのカテゴリに分類されます。
マージンが減少してビジネスが停滞し始めると、彼らはこれらの段階を経て運営に役立つ適切なパートナーを見つけることを視野にいれています。

JLLが重視する「JLLフィット」

Michael Beckerman (CRE Tech):会場にCBREの方はいますか? (1人が手をあげる)さて、私はあなたを怒らせようとしています。

個人的には、JLL Sparkは、不動産ブローカ、不動産サービス、PropTech企業への投資という点で異なるレベルにいると思っています。取引の流れとそのアナウンスがオープンで一目瞭然になっている。そして、素晴らしいスタートアップ達を世に送り出している。JLLはこの業界の仕事の本質を根本から変えようとしている。
それでは、JLL SparkがProptechにどのようにアプローチしているかお聞かせください。

David Gerster(JLL Spark):JLL Sparkの2人の共同CEOは、Christian Ulbrichからの任務を受けてProptechの開拓に指名されたんです。 彼らが着任して間もないころは、資金のアイデアさえ整っていませんでした。 JLLがProptechの今後の混乱の波にすべて対応できるように支援する方法を見つけようとしていました。
たくさんの投資を行いました。その中で私たちが理解したことは、戦略的に投資を行う重要性です。 その証拠に私を含め皆エンジェル投資家としての経歴があります。 ですので、私たちは常に「いい投資をすること」に焦点を当てています。

何百もの会社と面談する中で分かったことがあります。いわゆる「JLLフィット」が非常に重要であるということです。
どのように良い投資先を見つけるかだけでなく、JLLのグローバル組織に繋げ、その後ディストリビューションできるようにするためのスタートアップを見つけるにはどうすればよいでしょうか。
私はいつもVerge Senseの話をします。彼らはあなたが実際に天井に取り付けることができる建物センサーを作ります。
すべての処理がデバイス上で実行されるため、人々の顔をインターネットなどで送信する必要はありません。この小さな会社で全て処理します。私達はこの会社に投資し、今ではビジネスが大きく成長しています。

その一方で、実際にどのようなグループとこの会社を繋げるべきか等の詳細についても話をします。 彼らの融資受け取り後のプランは何か、これらを調べるために、当社はチームを設けています。経験豊かな幹部が率いる「成長チーム」です。彼らが一日中やっているのは、資金調達の際に起こりうる問題、また実際にこの種の質問を解決する方法について考えることです。

Michael Beckerman (CRE Tech):Constance、Moderne社はアーリーステージに焦点を当てているんですよね?

Constance Freedman(Moderne Ventures) :はい。

Michael Beckerman (CRE Tech):レイトステージのスタートアップに多額の資金が投資される中、Moderne社のようにアーリーステージに焦点を当てているVCには本当に感謝しています。今、何に注目されていますか。また、現在この分野で具体的にどの分野に投資したいと思っていますか。

Constance Freedman(Moderne Ventures) :いくつかあります。現時点で非常に重要なのは、多くの成長機会があり、1年から2年、さらには3年後に何が起きているのかというビジョンがあることです。例えば、AIやサステナビリティのある分野です。
AIについてよく耳にします。それはどういう事でしょうか? そして、AIへの投資を考える時に先ほどDavidが言ったように、ビジネス上の課題がこのテクノロジーによってどのように解決に導いてくれるかを考えます。

もし、たくさんの会社が問題を探す解決策を持っているとしたら、 私たちは、企業がビジネス上の課題をどのように解決しているかに注目します。 例えば、Bytegainという会社があります。この企業は、専門家を企業に送り、広告費用をきちんと潜在客向けに広告できているかをアドバイスします。
他にはアイデンティティと詐欺防止のためにAIを使用しているSnapptという会社があります。 雇用手続きの効率化や、ビジネス全般にわたってあらゆることをサポートします。データに追われるのではなく、データを活用できます。それが、AIの本来の在り方だと思います。
もし他の人がAIに注目しているにも関わらず、今このトピックに注目していない人がいたら、これからAIに加えて機械学習とデータが役立つところです。 なぜなら、テクノロジーは時間をかけて学習しデータを蓄積する必要があります。もし、今着手していなくて、競合社がすでにそれにとりかかっているとしたら、あなたの会社は既に出遅れています。

サステナビリティについても注目しています。これはアメリカよりもヨーロッパの方々の方が興味を持たれているトピックです。もし、あなた自身が地球のサステナビリティに重点を置いていなくても、次の賃借人であり、新しい消費者層のミレニアル世代が重要視しています。
Sagegreenlifeのような壁面緑化を作っている会社があります。このようなサステナビリティに焦点を置いているスタートアップにも注目しています。

個人的にはロボットがどのように人間の生活に影響を与えるかにも興味があります。例えば、複数家族の空間で抱えるパッケージ問題についてロボドックやドローンがどのように解決するのかも注目しています。

これからは、シニア住宅のサポート、団塊の世代やシニア・コミュニティのダイエットをサポートするようなものが出てくるでしょう。 また、今日では想像もつかないようなトレンドが将来たくさん出てくるでしょう。ライフ、仕事、プライベートが一点に集中し、さまざまな企業がどのように取り組んでいるのか見るのは非常に興味深いです。

PropTechのカギは「中間層のイノベーション」

Michael Beckerman (CRE Tech):そうですね。ニューヨークでは既にLyric、Airbnb、そしてRXRと見られます。 Roelof、Fifth Wallのリテールサイドでの活動についてですが、とても革新的でユニークだと思います。 今、あなたが注目している新しいことは何ですか?

Roelof Opperman(Fifth Wall):Lyric はFifth Wallでの最初の投資でした。Lyric社に出会えて本当に感謝しています。 基本的に3つのカテゴリーに分類します。
家主に焦点をあてるカテゴリー。 私たちは特定の分野で大家の力になっているか? いくつかの案はVCが投資できる内容かもしれません。新たなプレーヤーが勝利するのかどうか、まだ見えていません。このカテゴリでは不動産管理ソフトウェアに高い需要があります。

次に建物単位でのソフトウェア、アプリです。 私達はヨーロッパでも特定プロジェクトを始めています。
今回は ヨーロッパの観客向けなのでヨーロッパをメインにお話しします。 今、確実に注目しているのは、アパート向けとオフィス向けのアプリです。私たちはスマートフォンでほとんどのことができるのに、自宅やオフィスにそれを活用できないのはおかしいと思います。

そして、不動産分野のイノベーションに最も重要だと考えているのが、中間領域です。これはこれから新しい資産クラスになるかもしれないし、新たなプレーヤーの参入があるかもしれません。そのアイディアに「ゴーストキッチン」「クラウドキッチン」があります。

Michael Beckerman (CRE Tech):皆さん、ゴースト・キッチンが何だかご存じですか。

Roelof Opperman(Fifth Wall):説明しましょう。それは業務用キッチンです。
あなたがロンドン北側でレストランを経営しているとします。あなたがまず気づくのは、多くのフードデリバリーがあなたのお店を通過して顧客に食べ物を届けていることです。多くのレストランでは売り上げの約半分をフードデリバリーが占めています。
そしてあなたは、ロンドン東側で多くの需要があることに気づきます。しかしあなたはそれらの顧客に届けることはできません。
これが従来であればあなたは次のように行動します。
「OK,私は東ロンドンにお店を出店しましょう。」
「OK,私は家の前に場所があるしすべてのコストも負担しましょう。」

そこで、あなたがキッチンを用意することができて、そのキッチンから配達できるとしたらいかがですか?

この分野にフォーカスしたスタートアップのエコシステムは既に構築されています。
不動産業の観点から見れば、古くなった小売店を買い取り、クラウドキッチンとして利用できることです。
スタートアップの観点から面白い点は、こうした分野の「モデル」がすでにたくさんあるという点です。コワーキングモデルのように、Co-Kitchen(共同キッチン)といったモデルもできるでしょう。
この領域でのベストプレーヤーはデリバリー会社です。なぜなら彼らはあなたがどこで何をオーダーしたかを知っているためです。
これは大きなセクターになると思います。

そうして私たちは米国でうまく言ったモデルを、海外でも実現できると言う。私たちのポートフォリオを見て「ヨーロッパでも展開することができますか?」と聞かれます。しかし、そう簡単にはいきません。業界の特定の事項そのものに違いがあるためです。
例えば、Opendoorが100%ヨーロッパで成功するか、私にはわかりません。なぜなら、その手数料が多いためです。

データファーストがもたらす不動産イノベーション

Michael Beckerman (CRE Tech):Justinが凝視してますよ。

Roelof Opperman(Fifth Wall):なぜなら、コミッションはロンドンではずっと低いからです。 例えばあなたの仲介手数料はイギリスではアメリカよりもはるかに低く、マージンも低いはずです。 しかし、このようにほぼ不可能に近いプロジェクトに対してチャンスを具現化するのも私達の役目です。もし、これが当たれば大きいでしょう。

Justin Wilson(Softbank Vision Fund):Roelofはクラウド・キッチンについて話をしました。Michaelの最初の質問に戻ると、ConstanceはAIに焦点を当てていると述べました。私の見解は、データがすべてのビジネスにとっての燃料だということです。
私達は今までAIについてたくさん議論してきましたが、企業にとってまだまだ道のりは長いです。 また、クラウド・キッチンを建てることによって、どのように最も効果的にデータを集めることができるでしょうか。ここで投資家としてどう出るかです。 私たちはDoordash、Alibaba Local Servicesの投資家であり、最近ラテンアメリカのRappiに投資しました。
この種のアセットは、私たちがちょっと工場地を改装すればキッチンに置きかえられ、そのスペースを利用して大きなチャンスを見い出すこともできます。

しかし、結局のところ、あなたは資産の最も有効な活用方法について知っているでしょうか。
DoordashやRappiは、彼らがビジネスチャンスについて考えるとき、「データファースト」で、近隣都市のデータなども活用して考えます。
例えば、午後6:00〜9:00の時間帯に中華料理の注文が多いにも関わらず、人手が足りていないことを把握しています。 だからといって、このオーダー傾向に手を加えることはありません。 ただ、私たちのポートフォリオ全体で、消費者が好む傾向の料理の種類、消費者が好む傾向がある画像の種類などを把握しています。
これらすべての情報はプラットフォーム内にあり、私達は消費者レベルのトランザクションデータを持っているので、将来これらのデータを活用することができます。 これは巨大な推進力になります。
そしてこれらのデータをいつ、どのように活用すればよいか。私達はほとんどの場合これについても、「データファースト」で考えています。

Michael Beckerman (CRE Tech):時間が迫ってきているようです。David、今何に注目していますか。JLLの観点からどのような分野に注目しているのでしょうか。

David Gerster(JLL Spark):Roelofが前述したようにテナント・エクスペリエンスに注目しています。
誰もが自分のポケットにスマートフォンを持ち運んで歩き回っている今、そこがあなたの自宅なのか、オフィスなのか、どんな建物に入っても機能するコントロールハブを入居者たちは期待しています。

そのため、オフィス領域でHqO、また集合住宅領域でLivelyに投資しました。そこにはアクセス・コントロール(出入管理制限)との強い結びつきがあります。RFID カードを持ち歩く人の数も減っていると思います。テナントの全体管理について、このトピックは長い間話題になっているかと思いますし、実際に需要があります。

Michael Beckerman (CRE Tech):そうですね。

Justin Wilson(Softbank Vision Fund):このVCパネルでは、すべてのVCがLPとして既存の大手企業を迎えています。また、アドバイザーとして手と手を取り合って取り組みを推進しています。これは珍しいことです。

不動産領域は、より一般的で、ファンドや個人投資家にとってもまだまだイノベーション機会が多いと考えています。このようなエリアは他にありません。
ただし私が驚いているのが、本日のパネリスト達が深く不動産、イノベーションの業界に入り込んでいるにも関わらず、アイディアを創造し、活用していくことについて、有機的な不動産業界のイノベーションは現段階では起こっていない点です。

これは何を意味するのでしょうか?私が観客の皆さんに問いかけたいことでもあります。

Michael Beckerman (CRE Tech):いい締めのコメントですね。この後のランチの時の話題にしてください。Future Proptech. Dave, Justin, Roelof, Constanceありがとうございました。

<総括>
PropTech/不動産テックはLaaSエコシステムで次のフェーズへ

本カンファレンス全体に言える事として、不動産領域のイノベーションはまだ初期段階にあるという事です。
しかしながら、変化は着実に起こり始めています。不動産テックを、PropTechと呼ぶように、狭い概念で捉えることなく、広範なイノベーションとして定義する必要があります。

不動産テックの初期段階が、宅建業法を前提にした不動産会社向けの業務効率化や改善、消費者向けのコスト削減だとすれば、既存の業務を前提としないフェーズへ移行を開始しています。

私たちの暮らし、人々の生活や働き方をより良くするサービスは次々に誕生し、Life as a Service (LaaS)としてサービスが誕生しています。オフィスや住まいの選び方が、レンタルオフィスや、オンライン賃貸で変化をしてきました。また、家具や倉庫もサブスク化し、暮らしに関するサービスはどんどん便利になっています。

その基礎となる不動産、Propertyのイノベーションは、LaaSのインフラとして、今後ますます変化が期待されます。

PropTech JAPANの活動へぜひご参加ください

PropTech JAPANでは、不動産分野のスタートアップエコシステム構築に向けてMeetupを開催しています。興味がある方ならだれでも参加できます。ぜひご参加ください。今後のイベント予定はこちら

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PropTech JAPAN Meetup vol.10 不動産×ブロックチェーン

2019年7月18日(木)18:00受付開始 18:30スタート

ご質問/情報交換等お気軽にご連絡ください

PropTech、LaaS領域でイノベーションに取り組むみなさま、関心のある方、ぜひMeetupへのご参加や、ご連絡お待ちしています。

ご連絡はshun@proptechjapan.org まで

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Shun Sakurai
PropTech JAPAN

Founder of PropTech JAPAN and a board member of ADRE (Aggregate Data Ledger for Real Estate) a blockchain consortium for Real Estate.