NEORT株式会社は1周年を迎えました
2019年1月17日に創業したNEORT株式会社は今日で1歳になった。
起業当初の想定と比べるとかなりハードなビジネスをしているなと思うが、今はなんとか1年やってこられて少しホッとしている。
いろんなことがあったが、正直スタートアップによく言われるハードシングスや、1夜にしてビジネスの流れが変わるみたいな劇的な出来事はなく、じわじわと苦しい日々が続いたり、小さいがすっごく嬉しいことがたまーに起きるような1年間だった。
当時想像していたスタートアップ像とは異なる地味なものでもあったが、自分には珍しく気持ちが不安定になった時期もあったし、オフィスを出て人に会う機会が増えたのも起業したから経験できたことである。
年末のブログも更新しそびれてしまったので、このタイミングで一年を振り返ろうと思う。
創業直後
晴れて会社を設立し、ビジネスをかなり楽観的に考えていた時期だ。
純粋に自分の手でサービスを作り上げていくのが楽しくて、今まさに開発しているものが世界を変えるぞ!とワクワクしていた気がする。
この頃のメンバーは自分1人。
クライアントサイドの開発しかしてこなかった自分にとってAPIを書き、インフラを構築するのもとても楽しい経験だった。
NEORTリリース
NEORTをリリースしたのは2/23。
スタートアップの祭典「Slush Tokyo 2019」の会場でBasic認証を外してリリース記事を公開したのを覚えている。
イベント中にアクセス過多でサーバー落ちたらどうしよう!とか心配していたが、そんなことは全くなく、晴れて我が子が誕生したわけだ。
この時は無事リリースできた達成感とSNSでのまずまずの反応で安心しきっていたが、その後、次第に不安は大きくなる。
想定よりもユーザーが全然増えない。
特に、期待していた海外からのユーザーはめっきりだ。
ここが僕が楽観視していたポイントその1。
デジタルアートをつくるユーザーは海外の方が断然多く、ド競合サービスもないので、リリースしてサービス概要とURLをメッセで送れば、待ってましたとばかりに海外ユーザーが登録してくれるだろうと思っていた。
が、当然そんなことはなく「Looks awesome!! I will check it!!」の返信はくれても登録して作品が投稿されることは殆どなかった。
この頃は焦りと不安で食欲もなく、眠れない夜もしばしばあった。
本当に辛かったな。。。
資金調達を試みるもうまくいかず
事業はうまくいってないが、物事の始まりに困難はつきもの。
事業を伸ばす協力者を得るためにも資金調達だ!と思い、VCや投資家に積極的に会い始めたのもこの時期。
しかし、ただでさえ理解し難いビジネスに加え、市場規模も全然小さいということでマッチする相手を見つけることができなかった。
ここは自分の楽観ポイントその2だろう。
いくらそこそこ名のあるメガベンチャー出身のフルスタックエンジニア社長だろうと適切な市場規模とビジネスの成長性を納得させられなければ投資は受けられない。
途中、あまりに心が不安定で、出資を得るためにある程度の市場規模を語れそうなVR市場でVRミュージアムを作ります!みたいな事業プランを持って行ったこともあったが、完全にブレていたなと思う。
「資金調達をしないとスタートアップとしてビジネスをやっていけない」みたいな自分の偏見もあったので、ことさら固執するようになっていたが、ふとそういう生き方は自分の性に合わないなと気がついた。
理解はされないが、「デジタルアートが広く楽しまれる世界は必ず来る。」そして何より、「これが自分が心からやりたくて始めたことじゃないか。」と思い直し、改めて自分の道を信じて進む決意をした。
第一号社員のジョイン
NEORT第一号社員はデザイナーの中里という男なのだが、実は彼はNEORTリリース前の2月頭にTwitterのDMで手伝いたいとコンタクトをとってきてくれた人物で、正式入社の10月までの間無給で手伝ってくれていた。
サービスが思うように伸びないことによる自分の心理状況も影響してるかもしれないが、彼の存在はとても心強かった。
自分は1人で会社を始めたわけだが、もし次に会社をやることがあれば、絶対相方を見つけて始めると思う。
それぐらいに、1人は辛いのだ笑
中里くんのサポートはありがたかったが、売上がなく資金も限られている状況でいつまで手伝ってもらって良いものかと悩んでいた。
その旨を正直に話し、今後のことを相談したところ、なんと本気でNEORTへのジョインを考えてくれているとのことだった。
自分で言うのもなんだが、こんなビジネスとして成り立つかもわからない、いつ死ぬやもしれぬスタートアップに本気で入ろうと考えてるなんて、こいつ正気かと思った。
しかし、その後何度かとやりとりを経て彼はジョインを決めてくれた。
本当に嬉しかった。
会社を始めて一番嬉しかった出来事かもしれない。
と同時に、社員の人生を背負っていくという意識を持つようになったのもこの時期だ。
絶対に会社を死なせない。生き抜くぞ。と決めた。
中里くんは10月に正式にNEORT社員となり、デザインや実装、SNS運用やCSなどポジション関係なく大活躍している。
ちなみに福岡在住のリモート勤務である。
実空間でのデジタルアートの可能性
サービスを運営していく中で、オンラインでの閲覧だけでは不十分だなと思うようになり、実空間での作品鑑賞体験も模索するようになる。
最初の取り組みはFab Cafeで行うことができた。
ロフトワークさんと複数名のクリエイターの協力で実現した「NEORT: Neo Visual Art Collection」という展示イベントである。
このイベントを通して、実空間に個人のクリエイターの作品が展示されることの価値を実感するようになった。
その後は、HELLO neo SHIBUYAやGRDATION代官山と作品展示を行、現在は2020年2月スタートの富士山展3.0の展示作品を募集しているところである。
学びと反省
全てが新しいことづくめなので学びの数は上げるとキリがないが、この一年間やってきて特に学びになったこと、そしてこうすればよかったなという点をあげておこう。
[学び①] サービスを早くリリースする
失敗しないよう入念なリサーチを重ねてからリリースをしようとしていたらきっと失敗していたと思う。
NEORTは開発に着手して半年未満でサクッとリリースをしたので、良い点もうまくいかない点も早期に知ることができ、これを踏まえて次の一手を素早く考えることができたと思う。
サービスを開発している間は100%楽しいという感情だけで、リリース後には苦しみも混じってくるが、やっぱり世に出してみなければ次の景色は見えないので、このプロセスは早めに経験する方が良いと思う。
[学び②] コンスタントにユーザーに会う
創業者は実際のユーザーに会って、彼らの抱える課題・ニーズを把握しなければならないというのはよく言われることだが、これに加えて僕が思うユーザーに会うメリットは、繋がりができることだ。
1つのトピックについて、対話を通して意見を交わし合うことで互いの人となりを知ることができ、初対面でもその後の良い関係に繋がることが多くあると思う。
実際に僕が会ったクリエイターの方がNEORTを使ってくれたり、その後の展示に参加してくれたり、飲みに行くような仲になった人もいる。
SNSで気軽にコンタクトをとることもできるが、実際に会って話をすることで印象が変わったりすることもあるので、今でもこれはコンスタントに続けている。
[学び③] いろんな機会に足を運び、人に声をかける
②と似ているが、こちらはいろんなイベントに顔を出し、自分から声をかけていくアクション。
これはエンジニア時代にはあまりやってこなかったことだが、事業に関連しそうなイベントにはどんどん足を運び、いろんな人に自分から話しかけにいくようにした。
すると、そこでの出会いが仕事や別の機会につながったりする。
ビジネスをやっていれば当然かもしれないが、これまで自分はエンジニアとしてオフィスの中でのみ仕事をすることがほとんどで、イベントといっても技術者しかいないようなものばかりだった。
しかし、スタートアップのイベントやコワーキングスペースの交流会などのイベントに行くと様々な人がいる。
少し勇気を出して話しかければ普通に話せるし、面白い人もたくさんいる。
そこから繋がりができ、次のビジネス機会が生まれたりするということを知った。
②もそうだが、やはり人との出会いが物事を前進させるなとつくづく感じる。
ここからは反省編。
[反省①] プラットフォームとして必要な要件を満たしていなかった
サービスを早くリリースするのは大事だが、コア体験がないままリリースしても当然のごとく失敗するだけである。
プラットフォームとは往々にしてAとBを結びつける場所だ。
当初はこの設計が曖昧なままサービスをリリースしていたので、誰にとって何のメリットがあるサービスなのかを伝え切れてなかった。
結果、ユーザーを獲得するのに苦労してしまったんだと思う。
これまでいつくかWebサービスの新規立ち上げに関わってきて、サービス設計はわかったつもりになっていたけど、全然だった。
自分はエンジニアリングしかしてこなかったんだなーと感じた。
今でもこれがNEORTのコア体験だ!と言えるレベルではないけど、まだ(落下しながら)飛行機を組み立てている段階。
これからしっかり胸を張って言えるものにしよう。
[反省②] 仮設検証なしでリリースした
今なら、課題とソリューションに対してそれぞれに仮説を立て、検証をクリアしたら次のステップに進むというプロセスを踏むのが良いと思うが、当時はこれをまったくしないままリリースしてしまった。
リリースして見えることの方が大きいので悪いことではないのだが、もう少しうまい進め方ができたと思う。
仮説の設定のその検証はこれからも必要になると思うので、ルーティーンになるように心がけてやっていこう。
[反省③] 創業メンバーが自分1人
自分は大丈夫と思っていたが、実際結構辛かったw
精神的に頼れる存在がいるとかなり違うと思うので、また新たに事業を始めることがあるならば、早いタイミングで必ず一緒にやるパートナーを探すだろう。
まとめ
恐らくこの一年が一番いろんな経験をした年だったし、自分のスキルも横に大きく広がったと思う。
苦しいことの方が圧倒的に多いけれど、それでも情熱を持ってやりたいと思えることに打ち込めている今が一番幸せだ。
小さいながらも良い流れができいる今、改めて気合を入れて頑張っていこう。