AIの未来は人間の最高の相棒

Koichiro Nishijima
R3 Cloud Journey
Published in
6 min readFeb 23, 2018

旧正月も過ぎて春になった沖縄から、真冬の東京に出張するというなかなかの苦行をしている西島です、こんにちは。

3000人の応募者から1000名が抽選で選ばれたという、昨今のAIへの注目度の高さが伺える ABEJA SIX 2018 に PowerBudget を利用して参加してきましたので、その参加報告です(PowerBudgetについてはこちらを御覧ください)。

多くのセッションがプロダクトの説明というよりは、実際の試行錯誤やユーザー事例の共有で、「どうプロダクトを適用したか?」と言うよりはもう少し広く、「実際の問題をどうやってAIを使って解決するか?今後解決していきたいか?」という方にフォーカスされていたように感じました(勿論プロダクト解説のセッションもあったのですが参加しておりませんでした…)。

その中から、事例セッションレポートを以下お届けしたいと思います。

c-3 「人工知能の眼」が伝統の技の継承をサポートする

株式会社南部美人の五代目蔵元 久慈さんのパワフルなトークと、株式会社imaの三浦さんの掛け合いで大いに盛り上がったセッションでした。

一般的に考えると、こと日本酒を造る職人芸のような属人的な領域は、形式知に変換することはおろかAIの適用とは随分縁遠い分野に思われます。そういった領域に、テクノロジーを適用すべく挑んでいるのが三浦さんの会社です。不勉強にて存じ上げなかったのですが【Art of Artificial Artisan~匠の眼プロジェクト】の第一弾とのことです。

元々、20年前に久慈さんが体験していたことが、AIと日本酒づくりの幸せな出会いになったようです。

蔵元である久慈さんは、職人さんがお米を蒸す前の吸水工程(浸漬)を見ていたときに、職人さんがじーっとお米を見ていて「よし、ここだ!」と言って水から上げていたタイミングが、全然意味が分からなかったそうです。経過を何枚もの写真を色々撮って並べてみたけど(当時の荒い画像のせいもありますが)、それも全く理解できなかったと。でも、その経験があったから、AIで画像解析する、という話を三浦さんから聞いたときにピンときて、すぐ「これは行ける」と思い至ったそうです。

特殊なデバイスを作成し、それ使って水の中のお米の画像を撮って、関連する様々なデータを入れて(いつの、どこで取れたお米で、品種はなにで、気象条件はどうで、などなど)解析すると、水から上げるタイミングがよく分かるようになったそうです。職人技を酒蔵の財産として形式知に変換して、保存できるようになった瞬間ですね。

久慈さんが強くおっしゃっていたのは、

  • 日本酒の世界は、大昔の侍が作ったレベルを超えられない
  • だから、まだAIが人間を超えるなんて言うレベルにはならない、もしかしたらずっと訪れないのかもしれないと個人的には思っている
  • 今回分かった職人技術の可視化という話を日本中の酒蔵で共有すれば、どんなに小さい酒蔵でも、誰でも絶対失敗しない日本酒を作れるようになる
  • そうすれば、もっといろんなチャレンジが出来るようになって、日本酒はもっと良い、次の次元に行けるはず
  • 周りからは「あいつ大丈夫か」扱いだけど、これは絶対に日本酒業界のためになるので頑張る!

などなど、熱い宣言で締められました。

職人芸だからと言って端から諦めるのではなく、未来に日本酒を繋ぐために課題を解決しようと行動し続けるそのパッションが、素晴らしいですね。とかくIT業界、否定から入る人が多く見受けられるような気がするので、見習いたい姿勢です。

あまり普段日本酒は飲まないのですが、とりあえず南部美人を飲んで応援するところから始めたいと思います(^^)

c-4 「ジャンカラ」のユニークデータがもたらす顧客分析の現実と未来

ジャンボカラオケ広場を展開する東愛産業の渡辺様の事例紹介でした。

すみません、関西の出身ではないので「ジャンカラ」が何か分かっていなかったのですが、「あまり外に出て話す会社じゃないので、今回が最初で最後だと思います」という気合(?)とともに、かなり詳細な実店舗におけるマーケティングのお話(主にクーポン施策)を共有していただきました。

あまり数字は記録に残してほしくない風だったので載せませんが(上司に睨まれながら登壇しているとのこと!)、会員情報に対して以下の3つの分析を1年ほど前から開発、実運用開始し実際にABテストをしつつ以下のような施策を実施したとのことでした。

  • クラスター分析:20のグループに会員を分類する
  • 会員ネットワーク分析:グループのリーダーとなっている人を見つける。そのハブとなっている会員には重きをおいて施策を実施する
  • 離反者分析:来店の頻度(間隔)を分析する:離反確立が高まり、決まった値(例えば50%)になったとき、クーポン配信

結果、施策しなかったケースとの比較では、客数・売上ともにアップ、客単価は施策の割合ほど下がらなかった(ネットワーク効果が働き、クーポンを発行した以外の顧客にも波及効果がある)とのことで、「失う前提の顧客だから、利益殆どなしでも戻したほうが効果が大きいので、絶対やったほうが良い」と、力説されていました。

この手のデータ分析はAIのお得意なところで、実際どのような業種でも適用範囲が広い例にあたると思います。が、これをAWSなどを使って自前で組むのはリソースもなくて大変だけど、ABEJAさんの製品を使うと楽できるので、一回やってみたらいい!というメッセージは、参加者の皆さんにも響いたのではないでしょうか。

AIの未来はきっと明るい

AIについては、油断すると盛り上がるのは「AI脅威論」やら「なくなる仕事200」やら、ある種センセーショナルな話題が多いですが、地に足の着いた実例や試行錯誤の現場の話を聞くことが出来て、非常に有意義なイベントでした。勿論、この世から無くなる仕事は多数出てきますが、それは既に歴史のなかでも多数繰り返してきたことですのでそれ自体はそんなに心配する話ではないです(例えば「交換手」という職業、ありましたよね?)。

AIがより発達して人々の仕事の大部分を代替するような世界になったとき、人間は人間として何をするのか?と自問自答しておくのは、いまからでも遅く無さそうです。

(個人的にはSF好きなので、進化しまくって人類を滅ぼすところまで行ってほしいと願ってますが(笑)これではイーロン・マスクとポジションが同じになってしまうので、心の中だけに留めておきます。)

最終的に行き着く未来としては、仕事を奪うというベクトルよりは、上手く人間をサポートして、能力を拡張してくれる「人間の最高の相棒」になってくれるといいですね! そして既にその未来は手の中にある、と思わせてくれた ABEJA SIX 2018 に感謝です。

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Koichiro Nishijima
R3 Cloud Journey

大阪の会社であるアールスリーインスティテュートに、沖縄のワンコ×2がいる部屋からリモートワークで参画している根っからのクラウド・コミュニティ大好き人間。オープンソースとクラフトビールをこよなく愛する。