1/3 スケール三田式 3 型改 1 製作記

マルチパートシリーズの第2部。

Norimichi Kawakami
The New RC Soaring Digest

--

If you prefer you can read the English translation of this article, which was provided by the author. この記事に進む前に、このシリーズの最初の部分を読むことをお勧めします。

製作その2 中央翼リブ組み立て

リブ切出しと組立治具製作

スポイラー製作に続いて中央翼本体の製作に取り掛かりました。翼の製作方法には各自流儀があるようですが、私の流儀を説明します。

まず、リブを切出すために図面を原寸大で印刷します。この時、下の画像のようにリブと共にリブ下面に接し高さ30mm程度の組立治具となる部分も一緒に作図して印刷します。

画像6 リブと組立治具部品図の印刷

この印刷されたものを3Mのスプレー式剥がせる糊でリブ用バルサ板に貼り付け、OLFAの30度薄型カッターで線に沿って切出します。

画像7 3M製スプレー式剥がせる糊とOLFA製30度薄型カッター

図面は0.09~0.13mmの極細い線で印刷していますので、これに沿って慎重に切出せば殆どレーザーカッター並みの精度で切出せます。

これが切出し後のリブと組立治具の構成部品です。

画像8 切り出されたリブと組立治具構成部品

リブと組立治具構成部品の切出しと共に、治具前後枠と下部補強部品も切出しておきます。すべての部品の切出しが終わったらまず治具組み立てから開始します。中央翼は2mの長さになるので、製作中の取り回しやすさを考えて左右2つに分けて別々に作り、最後に結合することにしました。

中央翼の図面を原寸大で印刷したものを平板の上に敷き、その上に直接治具部品を図面のリブ位置に配置していきます。これを治具の前後枠で支えてから瞬間接着剤で接着します。枠と治具部品には互いに噛み合う切り込みが設けてあり、簡単且つ正確に組み立てられます。図面は接着するときに垂れた瞬間接着剤で治具にくっつきますが気にしません。このようにして中央翼の組立治具が下の写真のように出来上がりました。

画像9 組みあがった中央翼組立治具

中央翼の組立

リブ切出しと組立治具が完了したのでいよいよ中央翼本体の組立です。次の写真が片翼分のリブです。まだ型紙が貼りつけられたままです。

画像10 切り出された中央翼片翼分のリブ

尚、リブは基本的に3mm厚バルサで作りましたが、左右両端の後縁までプランクされる部分は2mm厚バルサとしました。また一番内側のリブには1.6㎜厚のシナベニアを、一番外側の外翼と接するリブには2mmのハードバルサを保護板として貼り付けることは前に説明した通りです。

型紙は当初貼りつけたままでも良いかと思ったのですが、剥がしてその重さを計測してみて驚きました。優にリブ数枚分の重さがあります。考えてみると型紙用に購入したA3コピー紙はずっしりと重量がありました。紙は重いです。

これを組立治具の所要の場所にセットして、カーボン角パイプの桁フランジと1.6㎜厚シナベニアから切出した桁ウエブを組み合わせていきます。この状態でスポイラーと、外翼と結合するためのカンザシ受けとなるアルミチューブも組み込んでおきます。組合せ完了後重量のあるスチール製のL型棒を2~3本上に置いて重しとし、リブをキッチリと治具に合わせます。治具とリブは元々一枚のバルサから切り離して製作したものなのでピッタリと合います。

画像11 中央翼の組立

左側の写真でリブ前縁側に立っているバルサの板はリブを正確に垂直に立てるために噛ました治具です。尚、左右の翼を後程結合するために桁位置を正確に揃えておく必要がありますので、下の画像のような簡単な位置決め治具を噛ませておきました。

画像12 桁位置決め治具

この状態で低粘度瞬間接着剤を結合部に垂らし、カンザシ受けのアルミチューブはたっぷりのエポキシ樹脂で周辺の桁ウエブに接着します。画像13は接着完了後の中央翼リブ組み立てです。赤く着色されたものがスポイラーで、カンザシ受けのアルミチューブも見えます。

画像13 接着完了後の中央翼リブ組み立て

組立治具のお蔭で正確なリブ組み立てが簡単に製作できました。治具はこの後のプランク作業にも威力を発揮します。尚、この状態で重量を測定したところ左翼が355g、右翼が344gで合計して約700gでした。左右の重量差が若干大きいのが気にいらないところです。尚、この後のプランク作業では大量のバルサ粉が出ますので、涼しくなってからにしようと中央翼の製作は一旦中断しました。

主翼の強度計算

今回は大型機で重量も重いので主翼の強度計算をしておきました。

設計荷重

航空機の強度計算は機体の制限荷重倍数(許される最大G)に、安全余裕として安全率1.5を乗じた終局荷重倍数で発生する荷重(設計荷重)に対して、壊れないことを確認する作業です。設計を開始した時点では三田式3型改1実機の制限荷重倍数が見つけられなかったので、アクロバット飛行をする固定翼A類に適用される制限荷重倍数6.0を採用しました。これに安全率1.5を乗じると終局荷重倍数は9.0となりますが、更に余裕をとって10として設計荷重を算出して強度検討することにしました。

最大全備重量8.7Kgの機体に10Gをかけるということは、主翼に87Kgの揚力がかかることを意味します。主翼には質量がありますから揚力と反対向きに10G分の慣性力が働きます。揚力と慣性力の差分が主翼を上に曲げるモーメントになります。この関係をEXCELの表計算で計算した結果が下の図です。

グラフ4 主翼の設計荷重

これは片翼についてグラフ化したもので、主翼STA=0が胴体中央線、主翼STA=2655が翼端です。揚力、慣性力共にSTA=1000より外では外側に行くほど減っていますが、この範囲がテーパーした外翼です。揚力がSTA=100付近より内側でゼロになっているのは胴体内にあるためです。

曲げモーメントは翼端でゼロで翼根に向かって徐々に増加します。STA100付近で増加が止まり一定になるのはこの位置で翼が胴体に結合されているからです。曲げモーメントの最大値はこの翼胴結合部で、その値は約34,000Kg・mm=34Kg・mです。

強度検討

この曲げモーメントによって翼は上向きにたわみ、桁に応力が発生します。モーメント荷重による桁のたわみと応力は材料力学の梁理論で求められます。詳しい説明は省略しますが、これをEXCELの表計算にして計算しました。結果を下図に示します

グラフ5 設計荷重による主翼の応力とたわみ

たわみは翼端に行くほど大きくなって、翼端では154㎜程度と予想されます。応力はモーメントの大きい翼根が最大で翼端に向かうに従って減少しますが、STA1000付近で再度増加します。これはここからが外翼で桁フランジが細くなるためです。最大応力は25Kg/mm2程度であることが判ります。この応力はカーボン角パイプのフランジに発生しますが、カーボンの許容応力は70Kg/mm2程度ですので、十分な強度があることが判ります。

尚、中央翼と外翼は外径20Φ、内径16Φのカーボンパイプ製のカンザシで繋がれています。STA1000はこのカンザシだけでモーメントを伝えますがそれによってカンザシに発生する応力は26.8Kg/mm2と計算され、十分余裕があることが確認できました。

後日実機の制限荷重倍数が5であることを元東海大学グライダー部教官の方から教えて頂きました。また完成重量は約10Kgに増えてしまいました。この条件での設計荷重は10×5×1.5=75Kgですので、上に述べた87Kgの設計荷重は安全側であることが確認できました。

動力システムの選定

グライダーに動力システムの選定とは似合わないことですが、私の所属するラジコンクラブの飛行場は平地にあり、私はグライダー用ウインチを所有していないので、保有するRCグライダーには全てモーターと折り畳み式プロペラを装着して自力離陸できるようにしています。1/3模型も他機と同じくモーターと折りペラを搭載する予定で、そのためにはモーター、動力用バッテリー(LiPo)、モーターコントローラー(アンプ)からなる動力システムを選定しておく必要があります。

モーターの選定

まずモーターの大きさを決める必要があります。このクラスのグライダーでは重量1Kg当たり約130Wのモーターが必要とのうろ覚えの知識から、最大重量8.7Kgの本機では約1,100~1,200Wクラスがが妥当と踏みました。

このクラスのモーターとそれに伴うLiPo、アンプの組合せを調査して一覧にしたのが下表です。

表1 候補モーターとそれに見合うLiPoとAMP

OS、FSD、E-MAXの3ブランドのモーターでおよそKV値が420~490、重量が350~380gです。

  • OSモーターは小生もこれよりひとクラス小さいものを複数使用しています。、品質も性能も良く満足しています。特にOSモーターは他社モーターより若干KV値を高めに設定してあり、重量の割にパワーがありますので、重量の厳しい小型グライダーには打って付けですが価格が高いのが難点です。
  • FSDモーターはReasonableな価格で問題ない性能を発揮するモーターで、私も一回り小さいモーターを、1/5三田式3型改1や1/5ミニモアに使用しています。
  • E-MAXモーターは一番安価なモーターですが作りもしっかりして問題ありません。これと同じモーターを私の自慢のスケール機であるCurtiss Jennyに使用しています
画像14 E-MAX GT4030/06モーターを搭載した私のCurtiss Jenny

3つのモーターの性能比較グラフを公表データを用いて作成したのが下図です。OSモーターのデータはOSのHPから、FSDとE-MAXモーターのデーターはKKHOBBYのHPから借用しました。

グラフ6 候補モーターの性能比較

横軸が消費パワー(W)で縦軸が静止推力です。搭載するプロペラによって多少の違いがありますが、性能にそれほどの違いは認められません。ただ、適切なパワー領域に若干の違いがあるようで、E-MAXモーターが略1,000W前後、FSDモーターが略1,100~1,200W前後、OSモーターが1,200~1,400W前後が妥当な使用範囲のように思われます。

動力用LiPoバッテリー

全てのモーターの許容電流が50~90Aあるので、1,100~1,200Wを賄うには5セルのLiPoで間に合います。5セルのLiPoの公称電圧は18.5Vですが、満充電すると20Vを超え、通常使う範囲でも20V近くありますから、60A流せば1,200Wが得られます。必要なバッテリー容量は次のように求めました。

モーターを全出力60Aで1分間も回せば相当の高度が稼げます。そのあとはモーター回転を止めてグライダーとして楽しみます。サーマルをゲットできれば最早動力は必要ありません。サーマルが弱く高度を落としてきたならば再度モーターランを行って高度を回復します。このようなモーターランを3回もやれば恐らく10分以上の飛行になり、操縦も疲れてきますので着陸させることになります。つまり、60Aの電流を1分間流すことを3回繰り返すだけの容量(60A×1/60h×3=3Ah=3,000mAh)を持ったLiPoがあれば良いことになります。LiPoは通常、容量の50~70%の消費に抑えて使用することがベストですので、4,300~6,000mAhの容量を持ったバッテリーが適当ということになります。

小生にとって幸いなことに、先に写真を載せたCurtiss Jennyのバッテリーが正に5,100mAhの5セルLiPoで、ピッタリと合います。このバッテリーは他に利用する事も無く稼働率の低いものでしたが、これで新たにバッテリーを購入しなくて済みます。

アンプ

OSモーターは最大電流が90Aなので100Aクラスのアンプが必要ですが、FSDとE-MAXモーターは最大電流が70A以下なので80Aクラスのアンプで足ります。アンプは容量が大きくなると高価になりますから、サンデーフライヤーにとってはこれも重要なポイントです。Sunriseのアンプは小生の1/5三田式にも採用しているもので、価格の割にしっかりしているアンプです。

結論

以上の検討から、モーターとしてパワー範囲の妥当性、価格、類似品の使用経験等を考慮してFSD FC5065–6Tを採用することにしました。LiPoは手持ちのKYOPOM 5セル5,100mAhを、アンプはSunriseの80Aのもの(実はこれも手持ちが有りました)を採用することに決定してモーターを購入しました。

尚、プロペラとしては上のモーター性能比較グラフから16乃至17×8が良さそうと見込みました。

失敗その4 後で説明しますが、実はこの決定は検討不足で、モーター/アンプ/LiPoを買い替える羽目になりました。余り深く考えずに重量1㎏当たり130Wと見込んだことが失敗でした。手痛い出費となりました。

ペイロード重量

以上のパワーシステムは目標重量で検討したペイロードに含まれます。ペイロードには他に受信機やその電源も含まれますので、ここでそれらを含んだ全重量を推定しておきました。

ペイロード重量として目標に置いた重量は1,800gでしたので約450g軽く済みそうです。しかし重心位置合わせるために錘を積む必要があるかもしれませんので、次に重心計算を行いました。

重心計算と重量重心管理

動力システム検討で予定していたペイロード重量より軽量で収まることが判明しましたが、それで重心が合うものか不明です。そこで重心位置を検討します。併せて以後の設計製作が進むにつれて随時チェックする必要がある重量重心の管理方法を決めました。

目標重心位置

この時点では実機の許容重心範囲が判りませんでした。そこで1/3三田式3型改1の目標とする重心位置はサーマル工房製の1/5模型で実績のある重心位置と同じにしました。1/5模型の重心位置は主翼前縁から75㎜後方にありますので、1/3模型では75×5/3=125㎜後方となります。これは、機首から測ってSTA846㎜の位置です。

0次重量重心検討

機体構成品毎の目標重量を元に重心位置の計算をしました。但し、目標重量では縦に長い胴体を尾翼も含めて一つに纏めていましたが、重心計算ではこれをもう少し分解する必要があります。胴体を主翼後縁直後の細くなるところで分断して前胴と後胴に別けます。更に、後胴は後胴そのもの、垂直尾翼、水平尾翼に3分しました。後胴そのものと垂直、水平尾翼の図面からそれらの重量を略算してみると、

程度と見積もれましたので、前胴は胴体全体の目標重量である2,800gからこれらを差し引いて、1,600gを目標としました。これらの目標重量と、動力システムの選定で検討したペイロード重量の位置を図にしたものが図面6です。

図面6 各部の重量とその位置

この図を元に、各部の重量がが作るモーメントを計算したのが表2です。

表2 第0次重量重心計算表

重心合わせに何も錘を積まないと重量は7,152gで収まりますが、重心位置は892㎜と目標の846㎜より46㎜も後方になってしまうことが予想されます。これは1/5模型から想定されたモーターや受信機用電源より軽いもので済むことが理由です。このままでは飛行できませんので、機首のモーター直後のSTA160に錘を積むことにすると483gを積んで重心が合うことが判ります。結局ノーマル飛行状態の重量は7,635gとなり、目標の7,600gを35g超過してしまいそうです。

折角ペイロード重量が目標値より軽いもので済むのに、重心が合わないために余計な錘を積んで、全体で目標重量を超過してしまうという理不尽な状況が予想されます。これの打開策は最後方にある垂直、水平尾翼の軽量化が最も効果的であることは自明です。尚、上の重量重心計算に用いた重量は全て目標とした重量であって、実際に実測された重量ではありません。その意味で実績率0%としてあり、精度もそれなりのものに過ぎません。これが第0次重量重心計算と称している理由です。製作を進めるに従って各部の実際の重量が実測できますので、それを用いて随時この表を改定します。

第一次重量重心計算

中央翼リブ組立が完成しています。その状態で重量を計測したら実測重量が700gで、残作業の予想重量は860gでした。このデータを用いて早速重量重心計算表を改定し第一次重量重心計算としたのが表3です。

合計重量は7,112gと予想され、そのうち700gは実測されましたから実績率は9.84%です。この状態でも尾翼はまだ第0次計算と変わっていませんから、重心位置に大きな変化は無く、錘は481gが必要です。ノーマル飛行状態の全備重量は7,593gと予想され、かろうじて目標内に収まりそうです。

表3 第一次重量重心計算表

重量管理図

下の図は第0次と第一次の重量重心計算の結果得られた重量と実績率をグラフ化したものです。

グラフ7 重量管理図

製作が進むにつれて、第2次、第3次・・・・・と重量重心計算を改定していくに従ってこの図も右に伸びていきます。この図を見ながら、常に目標重量を超えないように注意して以後の設計、製作を進めました。実績率は右肩上がりになりますが、それに従って、重量に変化を与える設計変更の自由度が減りますので、当初から注意深く対処する必要があります。

製作その3 垂直尾翼

中央翼リブ組み立てに続いて垂直尾翼の製作に着手しました。これには理由があります。今回の大型グライダーの製作に当たってはエルロン、ラダー、エレベータの動翼の前縁を実機のように半円のRを持たせて主翼や垂直、水平安定板に取り付ける(図面7 左側)ことを目論んでいます。通常のラジコン機の動翼の前縁はV字型に尖らせて布ヒンジや棒ヒンジで取り付けられています(図面7 右側)。私がこれまで製作した全ての機体がそのような形式でした。小型のラジコン機ではこれで十分ですが、実機の1/3にもなる今回の機体では、この形式では取付け部のギャップも大きくなり、空力性能に悪影響を及ぼすことが懸念されますし、なにより見栄えが悪くいかにも模型染みてしまいます。又実機のエルロンは所謂フリーズ形式で上げ舵時に前縁が翼下面から飛び出します。それに似せたエルロンとするには従来のラジコン式動翼取り付け方法では無理です。

そこで実機同様に動翼の前縁にRを持たせ、それに覆い被さるように前方から外板を伸ばします。こうすることで取付け部のギャップを最小にして空気の流れもスムーズになります。これにはヒンジにも一工夫必要です。

図面7 実機の動翼装着法(左)と通常のラジコン模型の動翼取り付け方(右)

私にとって初めての動翼取付形式となるので、まず動翼が1枚の垂直尾翼で製作経験を積んでそのノウハウを動翼が2枚の主翼や水平尾翼の製作に反映しようと考えた訳です。

垂直尾翼の構造

下図が垂直尾翼の構造図です。

図面8 垂直尾翼の構造図

翼型は胴体側面と垂直尾翼がスムーズに繋がるようにしたところ、11.53%翼厚の対象翼が最適と判明したのでNACA0011.53としました。

この図面を作図する過程で面倒なことが生じました。三田式3型改1の動翼は全て布張りでプランクされていません。そのため捩じり剛性を確保する目的で動翼のリブは全て斜めに取りついています。翼型は当然気流方向に定義されていますから、動翼のリブ形状はそれから作図で求めなければなりません。3次元CADが使えれば簡単に求めることができますが、私のCADは2次元ですので昔の製図版での設計を思い出してラダーのリブ形状を作図で求めました。それが右側の図です。尚、ラダーのリブは3mm板厚としました。問題のラダー前縁はラダー前桁に半円形のリブを数か所立てて、それを1㎜厚のバルサでプランクする方式にしました。

垂直安定板はフルプランクです。下部は水平尾翼取り付けのために大きくカットされており、一番下のリブはやはり斜め方向に配置されます。10㎜厚の厚い桁が最後部にあって、これで胴体後部に2本のボルトで取り付けられます。取付け部には補強のため硬板を埋め込みます。プランクのペコ対策として1×5㎜のヒノキ棒のストリンガーを最大翼厚付近に斜めに走らせました。実機ではもう少し後方に垂直に走っているようです。尚、垂直安定板のリブは2mm厚のバルサ、プランクは1.5㎜厚バルサとします。

ラダーヒンジは実機同様上下2か所に設け、ラダーは取外し自由とするヒンジ方式にしました。上側のヒンジは安定板から伸びたカーボン板ステーの先端に4Φの短い竹ひごを上向きに装着して回転軸とし、ラダー側に取り付けた穴あきアクリル板で竹ひごの軸を受けます。下側のヒンジはラダー下面から4Φのボルトを挿しこんで、安定板から伸びた穴あきカーボン板のステーを貫通してラダー本体にねじ止めする方式です。この部分にはカーボン製のラダーホーンも取り付けられます。

ラダーの組立治具製作

中央翼と同じようにラダーのリブと同時にその組立治具の部品も切出しました。それを組立てたのが下の図です。

画像15 ラダー組立治具

ラダー部品

切出しを終えたラダー部品です(画像16)。

画像16 切り出しを終えたラダー部品

ラダーのリブ組立

組立中のラダーのリブ組立です(画像17)。重いスチール製のL型バーで組立治具にしっかりと押さえつけています。

画像17 ラダーのリブ組み立て作業

リブ組立が完了したラダー

リブ組立が完了しました(画像18)。治具のお蔭でリブ表面のコンターもきれいに揃っています。

画像18 完成したラダーリブ組み立て

垂直安定板の製作

ラダーと同様の手順を踏んで垂直安定板を組み立てました(画像19)。組立治具(左)と垂直安定板部品(右)です。

画像19 垂直安定板の組立治具と部品

一番下のリブが斜めに走るので組立治具のリブ受けは他と角度が異なっています。部品もリブをしっかりと桁に取り付けるために、突合せではなく桁材に穴を設けてリブを挿し込む構造にしています。

前縁材との組み合わせは通常の突合せ方式です。

画像20はリブ組立が完了した垂直安定板です。組立治具の効果絶大で、正確な組立が非常に簡単に完了しました。

画像20 垂直安定板のリブ組み立て

この後ヒンジ軸を桁に取り付けた後に1.5㎜バルサでプランクしました。プランク完了後にラダーを取り付けて垂直尾翼組立としたものがこれ(画像21)です。

画像21 完成した垂直尾翼組立

肝心のラダー前縁のR形状部は写真を撮り忘れてしまいました。半円形のリブを桁に垂直に立てて1㎜バルサで半円にプランクしましたが、リブ間隔が広すぎた上に1㎜プランク材が薄すぎた為に綺麗な半円柱の前縁とならず、多少の歪みが生じてしまいました。このため、凹みの大きいところは当てパッチを貼って整形するという始末でしたが、幸いカバーリング後は目立たなくなりました。

安定板の桁より後方に張り出したプランク部も精度に若干反省点があります。この部分は単に桁にバルサ板を縦張りで貼りつけてラダー前縁にかぶさるように張り出したのですが、長手方向に若干うねりを生じてしまいました。

この経験から以後のエレベータとエルロン製作では次のようにすべきとの教訓が得られました。

教訓2

  1. 前縁R部のプランク材はもう少し厚いものとするか、リブ数を増やして間隔を詰める。
  2. 前縁半径が小さい場合は半円状プランクが困難と思われるので、多少の重量増加を覚悟してムク材を貼りつけて整形する方式がベターであろう。
  3. 前縁R部に覆い被さる張出プランクの位置決め精度と強度を確保するために、リブ後部を三角形 状にして桁材後方まで張り出し、張出プランクを支える方式にする。(水平安定板の項参照

製作その4 水平尾翼

水平尾翼の概要

これが作成した水平尾翼の図面です。

図面9 水平尾翼の構造図面

スパンは996㎜、約1mもあります。実機の翼型情報は不明ですが、10%翼厚のNACA0010とすると胴体上面との接続がスムースになることが判り、それを採用することにしました。エレベータのリブが±45度方向に片翼で10枚もありますので、その翼型設計が結構面倒でした。

右側のエレベータの内側にはかなり大きなトリムタブが付きます。トリムタブは人力操縦での操舵力をトリムするものなのでサーボ駆動のラジコン機には不要ですが、スケール感を出すために実機同様に作ることにしました。但し作動は不要なのでヒンジを固めにして手で動かせば動く程度にします。

エレベータ前縁は半円形状です。エレベータがテーパーしているのでその半径は外側に行くほど小さくなります。この部分の構造はラダーの教訓を反映して、厚板を整形することにします。

ヒンジは左右エレベータに各2か所設け、エレベータを外側から差し込む方式にしました。左右のエレベータを結ぶ軸をねじで取り付ける構造にしてエレベータを取り外し可能に設計しました。エレベータの作動はその軸の中央に取り付けたホーンが水平安定板の中に伸びて、胴体側から立ち上がるリンクに接続されます。そのために水平安定板の中央付近は後側に切欠きが設けられています。実機ではホーンの先端にはカウンターウエイトが取り付けられてフラッターを防いでいます。1/3模型でもウエイトを取り付けられるようにしておきました。

水平安定板は後縁が桁ですが、前述の通り中央付近が切りかかれますので最大翼厚位置に2×5のヒノキのフランジ、2mm厚バルサのウエブで細いI型桁を設けました。実機では切欠き部分から垂直に桁を通していますが、本機では細い桁で曲げ剛性を確保するために、最大翼厚部に通しましたので後退角を持ちます。尚、水平安定板は1.5tのバルサで全面プランクしますので捩じり剛性は十分確保できます。

エレベータの製作

これがエレベータ組立治具の上に置いたエレベータ部品です。

画像22 組立治具上に配置したエレベータ部品

これは左側エレベータです。まだ切り出し用の型紙が貼りつけられたままです。桁の型紙に誤ってラダー前縁スパーと記されているのはご愛嬌です。スパーに沢山の四角い穴が開き、リブにも出張りがあるのにご注目ください。リブの出張り部がスパーの穴に嵌め込まれて、組立精度と剛性確保に貢献します。小さいリブにも穴が開けてあるのは、太陽に照らされエレベータ内の空気が膨張して、カバーリングフィルムが膨らむことを避けるための通気口です。

これが組立が完了したエレベータです。前縁のRも割と綺麗に出来上がりました。

画像23 組立が完了した左エレベータ

エレベータヒンジの製作

エレベータ用ヒンジがこれです。上側は水平安定板に取り付く部品で2mm厚のカーボン板と4mmΦの竹ひごで作りました。エレベータ側には2mmアクリル板で作った写真下側のヒンジ受けを取り付けます。

画像24 エレベータヒンジ

水平安定板のリブ組み立て

同様にして水平安定板のリブ組み立てを製作しました。

画像25 完成した水平安定板のリブ組み立て

ヒンジが取り付けられています。リブ後縁が三角形状にカットされて桁より後方に伸びていることに注目ください。これが今回の改善点です。これにエレベータ前縁に覆いかぶさる外板を貼って前縁Rとの距離精度を確保するための構造です。垂直安定板ではこれを設けずに桁に貼った外板を後方に張り出しただけであった為にその精度と剛性がイマイチでした。その教訓を活かした設計にしたものです。

エレベータと安定板を組み合わせた水平尾翼リブ組み立て写真が画像26です。大きな水平尾翼の大略がわかります。

画像26 水平尾翼リブ組み立て完成

水平尾翼の組立完了

水平安定板のプランク用に1.5㎜厚のバルサ板を購入しました。バルサ板は通常幅80㎜~95㎜にカットされて販売されていますので、本機のような大型機では幅が足りません。複数板を貼り合わせたプランク材を製作してからリブに沿って慎重に貼りました。プランク後前縁を平らに整形してから5mm厚の前縁材を貼って丸く前縁形状に整形しました。完成した水平尾翼が画像27です。

画像27 完成した水平尾翼木地

水平安定板中央付近に3つの穴があいていますが、ここに3mmボルトを通して胴体に固定します。左右のエレベータはカーボンロッドとカーボン板で製作した連結ロッドで連結されています。この写真では判りにくいので、その部分を撮影したのが画像28です。

画像28 エレベータ連結部

軸両端の丸板をエレベータの最内端リブに貼った保護リブ(シナベニア製)にネジ止めして連結します。軸の中央にはホーンが付いています。その中央付近にピボットを設けて、胴体側から上がってくるリンクに連結されます。ホーンはピボットより前方に伸びており、そこにフラッター防止及び操舵力軽減用の錘が付きますが、この写真では未だ何も付いていません。

以上で水平尾翼の木地組立が完成しました。この状態で重量を測定したところ268gでした。今後の残作業はカバーリングと塗装で約70gです。余裕をみて錘の重量40gも確保して置くと、残作業重量は110gで、完成重量は378gと予想され、予定の400g内で仕上がりました。

第三次重量重心計算

この段階で、重量重心を見直して第三次重量重心計算をした結果が下表とグラフです。これ以前にも垂直尾翼木地完成時に第二次重量重心計算を行っていますが、その説明は省略します。

表4 第三次重量重心計算
グラフ8 第三次重量重心図表

実績重量が1,130g、実績率が16%に上がりました。胴体後部に搭載する水平尾翼の重量が予定より軽く仕上がったので重心合わせの錘が減り、ノーマル飛行状態の重量は7,432gと計画の7,600gより168g軽くなりそうです。どうやら予測に使ったバルサの重量より実際の重量が軽く済んでいることが主な理由のようです。バルサは同じ板厚でも固さによって重量がばらつくので、計画段階では手元にあった数種類のバルサの重量を測定して安全の為一番重い値を用いています。今後もバルサ部分の軽量化が期待できそうです。

©2021 Norimichi Kawakami

--

--