FIS TOKYO report #10 SKIN-TECH Output_微生物からコンピューターまで。地球上の“命あるもの”との関係を再定義する

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Sep 1, 2018 · 6 min read

2日間のディスカッションを通して、チームは人間が直面する2つの変化に着目した。1つ目はコミュニケーションの拡張だ。3Dプリンティングなどの技術により、個人の身体やアイデンティティに合わせた衣服やデバイスをつくれるようになれば、言語以外のコミュニケーションがより高度に発達する。2つ目は地球規模で進行する環境破壊だ。人類が現在の社会システムや暮らしを維持できなくなったとき、ファッションの役割は確実に変わっていくだろう。

チームはこの2つが並行して起こるとき、人間の既存の価値観が大きく揺さぶられると予想した。その変容に人類が向き合うために何が必要なのか。チームが出した解答は、“人間中心の考え方”からの脱却だ。人類は地球の長い歴史の中でつい最近生まれた生き物に過ぎない。しかし「自然環境は人間に利用されるために存在する」という考えのもと環境に対して後戻りできないほどのダメージを与えてしまった。私たちは他の生命体とよりフラットな関係を結び直す必要がある。

そこで重要な役割を担うのが、身体と外の世界の境界を定義している衣服であり、それを通じてコミュニケーションをより豊かにする先端テクノロジーだ。

人間が「バクテリアの集合体に過ぎない」と意識し、自然環境と一体化するために、どのようなTECH-SKINが想像できるだろうか。

チームはそう問いかけるために、以下のクリエイティブクエスチョンを紡ぎ出した。

人間の価値観が変化したとき、TECH-SKIN、ファッションと体は、どのように命あるものと一体感を生み出していけるのか?

(How can tech skin foster kinship with all living things in a future where human value have shifted?)

人間中心の考え方で地球をコントロールするのではなく、微生物からコンピューターまで、あらゆる生物と共存していく。「人間が主体である」という前提を覆す問いを説明するため、チームは一つ一つの単語を丁寧に選び出した。例えば”foster kinship”という言葉には、人類があらゆる生命体と一体化するのではなく、平等かつ相互に作用しながら存在するという意図が込められている。また繋がりを“connection”と表現した場合コンピューターに「接続」するような意味が付随する。そこでkinshipという、より“血縁”を意識させる言葉を選んだ。

さらにチームは、コンピューターと人類、そして微生物までがフラットな関係性を紡ぐ未来を表現するため、会場が期待するプレゼンテーションの枠組みをあえて拒否した。発表はすべて自動音声によって行い、イノベーターたちはボタンを押す“機械”となり、性別やアクセントも様々なコンピューターたちが意見を述べた。また、人間以外の“命あるもの”を表現するために、プレゼンテーションの冒頭では観客にヨーグルトを配布。人間が食品と定義したヨーグルトが生き物であると認識させようと試みた。

Photo by Masahiro Oie, Ars Electronica Tokyo Initiative

プレゼンテーションが始まると、会場にはぎこちなさの残る機械音声の声が響き渡る。バクテリアから魚、マンモスなど、地球上の“命あるもの”のなかで、ごく最近生まれた人間は、どのように他の生物と関係性を構築し直せるのか。そのためにテクノロジーや衣服が果たす役割とは何であるか。簡潔にまとめたスクリプトをコンピューターが読み上げていく。

Photo by Tsukuru Ozaki

プレゼンを終えると、メンターのマーク・ダイサム氏が「人間が自然をコントロールするテクノロジーを獲得しつつある現代の素晴らしさと恐ろしさを意識させられた」と感想を述べる。

マーク・ダイサム氏「例えばプレゼンテーションの冒頭で配ったヨーグルトは、微生物の生態を理解し、人間が美味しく食べられるよう操作したポジティブな発明とも捉えられる。遺伝子組み換えやDNA操作など、私たちは生き物の進化のメカニズムを活用しつつある。人間がここまでの影響力を有する状況に対し、私たちはどう向き合っていくべきなのかと考えさせられます。」

同じくメンターのアストリッド・クライン氏は、テクノロジーを用いて野菜や植物と言葉を理解しようと試みている人たちの実験に言及。言葉によるコミュニケーションが持つ可能性を示した。

Photo by Tsukuru Ozaki

クライン氏の挙げた例も含め、今後もテクノロジーは多様なコミュニケーションの手段を提供してくれるだろう。それらをどのように活用していくのかを思考する上で、まずは「人間主体の視点」から解き放たれる必要がある。チームはそのための手段として、衣服とテクノロジーの融合、TECH-SKINに希望を見出したのだった。


TEXT BY Haruka Mukai

向 晴香
編集者・ライター。在学中にソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、複数のウェブメディアにライターとして携わる。卒業後は教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後独立。関心領域はメディア全般と海外コメディー、歴史、テクノロジー。
https://twitter.com/m___hal


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