greenz小野裕之さんから学ぶ、ソーシャルデザインの可能性

近年、ソーシャルデザインというワードがクローズアップされています。少子化や高齢化、地方の衰退、コミュニケーションのあり方、格差など。現代には多くの社会課題が山積しています。

社会課題を解決へと導くソーシャルデザインは、現代社会に求められるとても重要な役割の1つといえるでしょう。私たち博報堂も社会を構成する一員として、ソーシャルデザインを実践していくことは重要課題だと考えています。

博報堂 ソーシャルデザインは、ソーシャルデザイン分野におけるパイオニアとして知られる、NPO法人greenzの小野裕之さん(事業総括理事/greenz.jpプロデューサー)をお招きし、ソーシャルデザインの現状と課題、今後についてディスカッションさせていただきました。

ソーシャルデザインに取り組む企業や行政や個人を紹介するwebメディア『greenz.jp』は2006年にスタートし、2009年より本格的に事業化を開始。小野さんは事業化のタイミングでgreenzに参画し、現在はプロデューサーという立場で活躍されています。

小野さんは、いまだに多くの人が「NPOは、非営利活動だから売り上げを上げちゃいけないんですよね?」と誤解しているといいます。株式発行などによる資金調達や、営利のみを目的とした活動はできないという決まりはあるものの、売上を上げること自体には何ら問題ありません。

ソーシャルデザインという言葉は、『greenz.jp』がスタートした2006年から、ある一部の人のなかでは使われていたと思います。

小野「2006年当時、greenz.jpでは環境や貧困のような記事が多かったのですが、徐々に社会課題全般をテーマとして扱うように変化していきました。当初、社会課題をビジネスで解決するソーシャルビジネスは、日本ではまだまだ一般的ではなく、たとえば貧困解決をビジネスにすると謳って良いのか、という戸惑いがあったように感じます。とはいえ、言葉が先行していくだけで、その実態や事例はそんなに広まっていない。つまり、そういう空気感そのものこそが課題だと考えました。」

ソーシャルデザイン=自分ごとから

転機となったのは、2012年に刊行した書籍『ソーシャルデザイン─社会をつくるグッドアイデア集』(朝日出版社)だったとのことです。その書籍のなかで、ソーシャルデザインを「社会的課題の解決と同時に、新たな価値を創出する画期的な仕組みをつくること」と定義して、それが、義務感からではなく「自分ごと」を起点にしてほしいという願いを込めました。

小野「自分ごととは、自分が気になるテーマや、自分が得意なことです。たとえば、子供が産まれれば、食の安全が気になると思います。子育ての仕方を考えるようになるかもしれません。自分が課題に気付いたとき、その課題に関わりをもつことはすごく大事だと思っています。自分が大事だと思う課題を解決し、新しい価値を作る。課題解決だけですと、解決した当事者しかその影響を受けられません。価値をつくりだすことで、さまざまな人を巻き込み影響を与えることができる。課題解決と価値作りを一緒におこない、属人的にせず、画期的な仕組として成立させる。この課題解決と価値作りを両立させる可能性を、この『ソーシャルデザイン』では提案しました」

逆から見ると社会課題は、誰かのテーマではなく、掘り下げていけば必ず自分のテーマとつながっている。僕たちはその課題を解決することと価値作りを両立させて、社会に還元していくべきと考えます。

小さくはじめること、楽しむこと

greenzでは現在、イベントの主催や、スクール事業、greenz peopleなど、さまざまな活動を行っています。webメディアだけでなく、greenzの活動に共感した人々が具体的にソーシャルデザインに参加できる活動を行い、ムーブメントを盛り上げています。なかでも、小野さんがプロデューサーとして率先しているのが、企業や行政、個人とのコラボレーションです。

小野「ブレイクスルーが起きたり、価値を作りだそうとしている人たちは、もちろん組織のなかにもいるのですが、組織の硬直化や、ルールによって、思いを実現できないことは少なくありません。私たちも思いはあるけれども、リソースが少なくて実現できないこともあります。でも、お互いの足りないピースが上手く噛みあえば、新しい価値が作れるのではないかと思っています。そのために、起業家の方たちとネットワークを作り、一緒に新しい会社や事業、プロジェクトを作っていくことをおこなっています。」

イノベーターたちのネットワークから生まれたアイデアを、プロジェクトや事業に展開していく。そうしたインキュベーション事例が少しずつ増えているといいます。

そのひとつが鉄道会社と提携して展開しているHOOD天神です。福岡への移住定住促進や支援を行っているベンチャー企業とともに、コワーキングスペースの運営を企画されているそう。地方の人口減少に対して、市民と共に解決策を模索する活動として注目されています。

また、greenz.jp上で紹介している事例からの学びも多いと小野さんは語ります。

小野「過去に記事として紹介した事例のひとつが、株式会社AsMamaさんです。AsMamaさんは子育てをシェアできる仕組みを提供しています。AsMamaさんは運営費用は企業とのタイアップでまかない、お子さんを預けたいママと、預かってもよいというママを、少額の『謝礼』で結びつけるサービスです。ベビーシッターに近い感じかもしれません。利用者にとって完全無償ではなく少額でも有償なのも、ポイントだと思います。対価と時間制限がある方が、お願いする方もされる方もコミュニケーションしやすいと思いますので」

大切なのは、ニーズに自分の持っているスキルをマッチングさせることと小野さんはいいます。ソーシャルデザインにおけるビジネスは、多くがスモールビジネスです。しかし、いきなりスケールさせるとどうしても質が荒くなります。小さなニーズに小さく答えているものがつながっていると考えればよいのではないかと指摘します。また、ソーシャルデザインをはじめることは、ビジネスモデルを新しく作ることではないと小野さんは考えます。

小野「商売のかたちはもう世の中に出尽くしているなかから選べばいいと思うんです。Googleも主な収益源は意外とシンプルな広告モデルですし、Amazonだって本屋がスタートです。社会にあるものから選ばせていただくというスタンスの方が、スタートしやすいですから、無理に新しいことをやろうと考える必要はないんです」

広告、通販などのように○○屋と考えた際、どのような○○屋でありたいのか。その「どのような」の部分に思いがこもっていればビジネスモデルはシンプルでよい。greenzの取材先にもそういう企業が多いとのことです。アイデアをベースに起業するより自分のこととして、『楽しかったし、続けたい』と考えて起業する人の方が多いそうです。

我々は日々の暮らしの中で、実は数々の課題に直面しています。しかし、その多くは、知らず知らず、見て見ぬふりになってしまっているが現状です。また、個人で世界の貧困や地球環境の課題に取り組むのは簡単なことではありません。しかし、普段の生活で関わっているものの質を、すこしだけ向上させることはできるかもしれません。自分はどんな社会の中でどんなふうに暮らしたいか? という問いを起点に考えるのが自然だと小野さんは語ります。

ソーシャルデザインに対し、私たち博報堂ソーシャルデザインは今後、どのように取り組むべきなのか? その問いかけには簡単に答えることはできません。むしろ容易に答えを出さずに問いかけ続け、考え続けることが大切なことだと思っています。

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