ネイティブ広告を書くことはないにせよ

倉下 忠憲
Re:style
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6 min readDec 5, 2016

以下の記事を読みました。なんと動画とスライドまでついています。

ネイティブ広告はメディアの未来への脅威ではないかという気がしてきた | Lifehacking.jp

「ネイティブ広告」とは、短く言うなら「サイトの表示や体験と親和的な広告」のことで、いわれてみないと広告と気づかないくらいに馴染んでいることがその特徴となっています。

今までネイティブ広告の「ネイティブさ」がいまいちわかっていなかったのですが、「表示」と「体験」という二つの切り口はしっくりきました。

たとえば、R-styleで何かの記事広告を書くとしましょう。それが、サイドバーに表示されるバナー広告などではなく、1つの記事として投下されるならば、「表示」の側面ではそれはネイティブ広告です。しかし、その記事が、

は〜〜〜い。みなさんこんにちは。本を2000冊以上も読んできたRashitaです。

今日私がオススメする最高のビジネス書は、これ!

みたいな文章から始まっていたら、「体験」の方はまったくネイティブではありません。むしろ最高の異物感です。

そのサイトのコンテンツ(R-styleで言えば1つの記事)の体裁をとりつつ、その内容も__言い換えればコンテンツに触れたときに得られる体験も__他の記事群と同じであれば、それは「ネイティブ広告」と言えるのでしょう。その視点を採れば、「記事広告だけれどもネイティブ広告ではない」、というものは十分ありそうです。つまり「ああ、これって広告だな」という感じで書かれている記事広告がそれです。

そこまでは理解したとして、じゃあ次は、「なぜそのような記事が書かれる必要があるのか」という疑問が生じます。だって、いつもの記事と同じ表示であり、同じ体験を提供する記事であるなら、いつもの記事でいいではないですか。でも、現実にはネイティブ広告なるものの道が模索され、すでにいくつも書かれているわけです。なぜか。

メディアの食い扶持を稼ぐため

基本的にはこれでしょう。お金を得るためには、そういう記事を書く必要があるのです。なぜか。それは、一般的には通常のWeb広告__バナー広告など__の広告効果が低くなっているからなのだと考えられます。もし、これまでのやり方で効果を上げられているならば、無理して新しい方法を模索する必要はないわけで、新しい概念の提出は既存の方法の行き詰まりを指し示します。

さあ、ここで大きな問題がやってきますね。

「通常のバナー広告はクリックされないから、ネイティブ広告にする」

なぜ?

単純に考えれば、そうすればクリックされやすくなるから、でしょう。

もちろんぜんぜん別の切り口もありえます。単純な広告を出すのではなく、そのライターさんによる独自の魅力の切り出しをしてもらうため、というのがそれです。非常に美しい話で、むしろあるべき姿と言えるでしょう。

でも、実体はどうなのでしょうか。

堀さんの記事から、スライドの画像を1枚拝借させて頂きます。

堀さんは「ステマと言われないように、ちゃんと表示しようね!」と書かれています。全力で頷けます。しかし、こんな事例もあるのではないでしょうか。

「ステマと言われないように、広告の定義を変えようね!」

多くは語りません。でも、シンプルに言ってこれは欺瞞でしょう。広告表示をつけなくても文句を言われないような仕組みを作っているのと同じです。まあ、それは広告主にとってはありがたく感じられるのかもしれませんが__私はむしろ逆だと思いますが、そうとも言えないのでしょう。なにせ、こういう話もありますので__、情報(広告)の受け手にとってみれば、迷惑なことこの上ありません。ページの読み込み途中で表示位置を変えてくるバナー広告ぐらいうっとうしい存在です。

ここでふと考えます。ひとりのブロガーとして考えます。

たいていのブロガーは、基本的に記事広告のオファーなどやってこないでしょう。はじめたばかりの人ならばなおさらです。だから、基本的にそういうブロガーさんに上記のようなお話は(書き手としては)関係ありません。でも、ある程度続けていれば、中には人気が出てくる人もいるわけで、はじめてそのタイミングで上記のような「心配り」が必要になってきます。

でも、案外、そういう話は「ブロガー本」では大きく語られません。なぜならば、そういう本の大半が初心者向け(入門者向け)だからです。必要のない情報は書かない。重要な姿勢です。その意味で、中級者向けのブロガー本はもっとあってもいいのかもしれないな、と思いました。

もう一つ。もう一度堀さんのスライドを拝借します。

たぶん堀さんはこのような関係性の明示について一定の「指針」をお持ちでしょう。私も探り探りではありますが、たとえば献本頂いた本の書評を書くときは、「献本ありがとうございました」と書くようにはしています。他にも、すでに歴戦のブロガーさんは__読者に対して誠実であろうとしている限りにおいて__何かしらの運営指針を(明示されないにせよ)お持ちなんだと思います。

でも、それは明示されないからこそ他者からは見えにくく、学ぶ機会も少なくなってしまいます。

だったら、そういうのをすりあわせて「ブロガー憲章」でも作ったらどうかな、と思った次第です。別にそれをトップダウン的なルールにする必要もありませんし、またウェブメディア全体を牽引する存在でなくてもいいのです。「こういうことを心がけているブロガーがいるよ」というのが示せればそれで十分ではないかと。

まあ、「ブロガー憲章」はあまりにもキャッチーすぎますが、何かしら学べるものがあればいいかなと思う今日この頃です。

Originally published at rashita.net on December 5, 2016.

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倉下 忠憲
Re:style

物書きです。R-styleというブログを運営しています。ビジネス、経済、政治、投資、為替、麻雀、アニメ、ゲーム、ガンダム、iPhone、ライフハックなどに反応しやすい性質をもっています。