映画『聲の形』

やさしく、暖かい作品だ。

原作に比べると、ずいぶんマイルドになっている。心の傷をぐりぐりと抉ってくるような、鬼気迫る雰囲気はない。それでも、あのどうしようもないもどかしさや、世界に対する無力感はきちんと表現されている。その上で、私たちを包み込むような優しい暖かさが、作品全体を覆っている。それは圧倒的な肯定なのだが、そこに至るための道は決して易しくはない。

映像表現としては、川の流れや水が印象的に使われていた。流転しながらもそこに在り続ける川。衝撃を受け止める水。波紋を浮かび上がらせる水面。こえ、という目に見えない波動の存在を知覚するためのメディア。作品の雰囲気と非常にマッチしている。

ただし、やはり圧倒的に尺が足りていない。話自体はうまくまとまってはいるが、エピソードのつながりに飛躍を感じる。その点だけが、唯一の不満である。映画版をご覧になった方は、ぜひ原作もお読みになるといいだろう。

あとは、さすが京アニということで女の子がかわいい。特に結絃がいい。悠木碧さん最高。あと、硝子役の早見沙織さんはたいへん難しかっただろうと思うが見事に演じ上げられていた。ディスコミニケーションがテーマの作品で、演技について考えるといろいろ不思議な感覚が湧いてくる。

言葉は私たちが使える非常に効率的なコミュニケーションツールだ。

でも、言葉があるからといってコミュニケーションが成立するわけではない。

では、コミュニケーションとは一体なんだろうか。

しんみりと考えてみたくなる。


Originally published at honkure.net on September 21, 2016.

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