目前の人が困っている事には違いない。

「たけのこ」からのハガキ。

昔、「たけのこ」から1通のハガキが送られてきたことがある。

Hirakenさんの、

この投稿を読んでいて、ふと思い出した。


かれこれ、10年近く前の話。

音響関係の専門学校に通っていた頃、僕は名古屋駅構内にあるイタリアンレストランでアルバイトをしていた。

駅構内の商業施設の一部ということもあって、平日も割と賑わうことが多かった。バイトに入ると基本的に閉店時間まで仕事をし、「終電に間に合えば良いか」というノリで仲間と話をしていた。

その日も同じように終電に間に合うようにバイト先を出て電車のホームへと向かった。

平日の終電。さほど人は多くない。酔っ払いがベンチで眠りこけていたりもしない、健全なホーム。僕は一番後ろの車両に乗るためにプラプラと歩いていた。

https://unsplash.com/photos/hQFrxZydZQk

そこで一人のおじいさんに声をかけられた。

すいません、ちょっといいですか?

この時点で僕は警戒していた。これに似たような経験があったからだ。無視して行こうとも考えたが、相手はおじいさん、そして終電前。顔は明らかに困っていた。

とりあえず、立ち止まって無言。

ちょっと財布を落としてしまって…。帰れんのですわ。

おじいさんは言い出した。

うん、やっぱりか。実は以前にも似たようなことがあった。その時、僕は500円を貸してあげた(戻ってこないけどね)。そんな話を友人たちにしてみると、「それはダメ!」と注意された。

正直、ダメなのはわかってはいるんだけど…。騙そうとしていようがいまいが、この人が困っているのは事実じゃない?と考えてしまう。

「で、どこまで帰って、いくら必要なの?」

◯◯駅まで帰って、そこからタクシーに乗りたい。切符は買ったんだけど、その後に財布を落としてしまって…申し訳ない。

「駅員さんに言ってみました?財布落ちてなかったって?」

…(中略)

「で、家まではタクシー1メーターで行けるんですか?」

はい、ちゃんとお返ししますので。どうにかなりませんか?

で、僕は1,000円貸した。当然、戻ってくるとは思ってなかったけど。おじいさんは「返したいので、住所を教えてくれ」と言ってきた。

そりゃ、返すにはそういう方法くらいしかない。最初は断ってたんだ。大丈夫ですからって。実際、実家の住所を伝えることが嫌だった。

食い下がるおじいさんとのやり取りがめんどくさくなって、住所を教えた。よっぽどおかしなことはないだろうと思って。

使い込まれたおじいさんの手帳に住所を書き、おじいさんが電車に乗ったのを見届け、おじいさんからはなるべく離れた車両に乗った。「どこで降りるか?」なんて確かめたくなかった。


それから2週間ほど経ったある日、ハガキが届いた。

「変なの届いてたけど、何?(笑)」

妹から手渡された1枚のハガキ。達筆な筆書で住所が書かれていた。表にはおそらくお礼の言葉…達筆なんじゃなく下手なのかな?何となくしか読めなかった。送り主の名前はない。

きっと、あのおじいさんだよな…それしか思い浮かばない。「貸した1,000円分のハガキが届いたらどうしよう。」と心の中で少し強くなった。

もう一度、表の文字を読もうとしてみる。

きっと感謝を述べていることしかわからなかった。もしかして、詩なのかな…そんな難解な文字列の最後だけは読めた。

「たけのこ」

これっきり、「たけのこ」からも「たけのこ」以外からも謎のハガキは届いていない。

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