Yuichiro Amano
RISE monday
Published in
2 min readDec 19, 2016

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不完全への愛しさ

物理的な制約から解放され始めてもう数年が経つ。

果たしてあの日見た景色に今でも美しさを感じることはできるのだろうか。

Photo by Yuichiro Amano

身体の隅々まで澄み渡る空気、夢の世界へいざなう夜空に浮かぶ月と煌めく星々、心を温もり照らし立ち昇る太陽の灯火と雲の連なり、幾多の年輪が刻まれた手の温もり、空腹に囃し立てる台所から漂う匂い、無邪気な心の底からの笑い声。

不完全で隙だらけの「当たり前」の日常にこれほど愛しさを感じるとはきっと思いもしなかっただろう。

AI(Artificial Intelligence; AI)に従属していくHumanity。美しさへの感覚を失い、合理性と効率化を研ぎ澄ましていく人類。まるで新たな進化を遂げホモ・サピエンスへと終わりを告げるかのように。

虚ろな目が見つめるのはいつでも誰かの粗探し。輝きを失った目に映るのは誰かが描いたアルゴリズム。

「未来の誰か」が生き延びる為に「過去の誰か」が消し去られていく。

次なる「答え」を探し求め新たな地へと開拓を繰り返し支配していく。すでに答えが埋もれているとも気づかぬうちに。

真の持続可能性な世の中とはいったいなんだろうか?

母なるぬくもりと愛情を注がれこの地に降り立った無垢で産まれたての赤子であったあの日の記憶はどこへ行ってしまったのだろうか。

「ぬくもり」が「冷たさ」に変わる時は魂が肉体から過ぎ去る時。

「冷たさ」しか持たない社会は亡骸に埋もれた社会と同義なのかもしれない。

今こそAIの従属から逃れ、Humanity×AIのお互いが産まれもつ「ぬくもり」や「優しさ」を打ち消さない共存する社会を目指していかないか。

「不完全への愛しさ」がまだ消え去らないうちに。

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