Sakaba game report : Play to Mint(前編)

Play to Earnバブルを経て、掲げられた新たなコンセプト

Nodra
[日本公式]SAKABA_JP
13 min readAug 24, 2023

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Web3ゲーム用語としてよく知られているもので、“Play to Earn”や“Move to Earn”、“X to Earn”があります。似たような言い回しで、“Play to Mint”という用語も見かけることが増えてきました。また、この用語を直接使用していないものの、コンセプトや取り組みの一つが“Play to Mint”で表されるものになっているWeb3ゲームも、多く見受けられます。

今回はこの“Play to Mint”について考えてみます。まだ明確な定義がない用語だと思いますので、筆者がWeb3ゲームシーンで見聞きした事から、定義づけ、特徴や期待されるメリットの整理などを試みます。

“Play to Mint”について理解を深めることが、Web3ゲームの今後の動向や可能性を探るみなさんの旅にお役に立てば幸いです。

今回は以下の流れでお話します。

1.Play to Mintって何?

2.Play to Earn(従来型)とPlay to MintのNFTの比較を通して

3.Play to Mintに期待したいこと(まとめ)

どうぞ最後までお付き合いください!

1.Play to Mintって何?

Web3ゲームにおいて、ある一つの特徴を表す用語です。

・ゲームプレイを通してアイテムなどのNFTを獲得、所有、P2P取引できること

・そのことを楽しさとエコシステムのコンセプトや主要テーマの一つとしていること

を表します。

現状、後者として用いられることの方が多い印象です。個々のWeb3ゲームプロジェクトの特徴説明やマーケティング時のキャッチコピーとして使用されています。

また、以下の特徴が付随しているケースが多く見受けられます。

・運営からの直接販売がなく、プレイでのみ一次入手できるNFTを用意している

・獲得したゲーム内アイテム等をユーザーがオプションでMint(NFT化)できる

・オリジナルFTを用意しない(これはゲームによってケースバイケース)

Play to Earnが、コンセプトや主要テーマ、マーケティングとしてなかなかうまく行きそうにないと考えられることが多くなり、新たなコンセプトが模索されている中で使われることが増えてきました。

類義語として“Play to Own”があります。結局、Ownの方法としてNFTを用いるので、ほぼ同義と言えそうです。個人的にはこちらの表現の方が、一般に馴染みのある単語なので気に入っていますが、Mintの方がよく使われているように思います。

また狭義では、景品NFTやALの配布方法のキャッチーコピー、ないし、配布形式の一つ、を表す言葉として用いられています。例えば、βテストプレイイベントでの景品NFTやALの獲得チャンスに対して、“Play to Mint!(ゲームをプレイしてNFTをゲットしようぜ!)”、と呼びかけるような使い方です。またこのNFTやALの配布方法は、ユーザーをゲームプレイというフィルターを通すことで、真にエンゲージメントの高いユーザーに対して1stコレクションNFTのようなものを所有してもらうための手法とも言え、その手法自体を指してPlay to Mintと呼ぶこともあります。この狭義の使われ方もよく見かけます。

筆者個人としては、Play to EarnやGameFiと呼ばれるWeb3ゲームも、トケノミクスやゲーム性の進化で発展していく可能性はあると思っています。ですので、Play to MintはPlay to Earnから派生した、新しいコンセプトの内の一つという捉え方をしています。

2.Play to Earn(従来型)とPlay to MintのNFTの比較を通して

ここでは、Play to EarnとPlay to Mintの比較を行うことで、Play to Mintのメリットを考察します。Play to Mintを掲げたゲームはまだリリースされていないものも多く、加えてリリースされたゲームのPlay to Mintを切り口とした評価や議論はまだ十分にされていないと感じるため、期待されるメリットとして記載します。

言葉の通りで、焦点をto Earn(稼ぐ)とするか、to Mint(保有)とするか、が大きな違いです。そこから生じる、NFTに関するユーティリティとエコシステムに見られる傾向の違いを整理します。さらには、そのユーティリティとエコシステムから引き起こされた、Play to Earnのユーザー動向やゲーム経済圏の状況を振り返ることで、Play to Mintで期待される状況(メリット)を浮き彫りにしたいと思います。

🎮Play to Earn(従来型)のNFT

【ユーティリティとエコシステムの傾向】

・ゲームリリース前に運営が直接販売する

・高価格、ないし高価格帯が用意されている

・ユーティリティとしてトークンマイニング機能がある

-NFTを使ってゲームプレイをするとトークンが得られる

-NFTが高価格であればあるほど、トークン獲得効率が良い

-以上の効果が直接的ないし直接的に近い形で提供される

・ゲームリリース後は運営からの直接購入かユーザー間取引で入手する

【ゲームの陥った状況】

まず、参加者の大半のNFT購入目的が、トークンを獲得するため、トークンの獲得効率を向上させるため、そしてトークンを売却するためになりました。従って購入の際にNFTは、どの程度の金銭的リターンが得られるか、が主な観点として評価されました。

そして大半の人が、ゲーム経済圏(流動性)に自身が入れた金額よりも多くの金額を経済圏から抜くことを第一目的とし、収益がプラスになる行動、つまりNFT購入代金より稼ぐ金額が大きくなるプレイを目指しました。

そのような中、リスクが少ないプレイスタイルの定石として、“原資回収至上主義”が浸透しました。“原資回収至上主義”とは、購入したNFTの代金分のお金をできるだけ早く稼ぎ、その後超過して稼げた金額の一部をNFTの追加購入に充てることを繰り返すプレイです。つまり収支を最速で0円以上にして、絶対に損をしない状態をキープします。

この原資回収の手法や最適解は恐ろしいスピードで導き出され共有されていきました。原資回収へのユーザーのモチベーションは高く、熱心に攻略が行われたためです。それに加え、収益性(そのNFT購入で期待できるリターン)の情報を求めるユーザーの声を受け、運営が丁寧にホワイトペーパーに記載等を行ったことも原因の一つだと考えられます。そのせいで攻略が更に加速しました。場合によっては、リリース前にユーザーの攻略が概ね終わっているゲームすらありました。攻略情報が大いに共有された背景としては、原資回収が終わったユーザーが、”ゲームが攻略できた”承認欲求を満たすためや、新規参加者を呼びゲーム経済圏にお金を入れてもらうため、X(旧Twitter)のフォロワー数を増やすため等に、原資回収手法を積極的に共有したことが挙げられます。

その結果、ゲームがリリースしてから日が経てば経つほど、更にはゲーム参加者が増えれば増える程、経済圏から抜けていく金額(売り圧)が膨れ上がりました。経済圏を維持するには、新規参加者を呼んでマイニング用のNFTの購入等をしてもらい、買い圧をつくる事が必要です。しかし、その新規参加者も原資回収が終わると売り圧をつくる存在に変わります。従って、新規参加者の増加ペースを上げ続けて買い圧を上昇させ続けることが必要になりますが、長期的にはまず不可能です。そうして、ゲーム経済圏は衰退し、最悪の場合破綻しました。

【本来目指していたゲームの状況】

本来は、ゲームプレイを通してゲーム経済圏(流動性)にお金が一定数留まる事が想定されていました。一定数の参加者が、収益がマイナスの状態でもプレイする楽しみのためにお金を払い続けたり、プレイで得たお金を原資回収に充てずに、より収益性を上げるため、より先のクエスト等を楽しむためにNFTの再購入に回したりする。そうして、Play to Earnが機能しつつも、売り圧に耐えながらゲーム経済圏が徐々に大きくなっていく。このような事が目指されていました。

以上は“Play to Earn(従来型)の挑戦と生じた課題”に関する話の一部抜粋とも言えます。これだけで記事の一つのテーマにできる程書くべきことが多いです。沢山の出来事があり、多くの関心が寄せられ、そして考察されているためです。長くなってしまうので、今回はこれくらいの記載に留めておきます。

🎮Play to MintのNFT

【ユーティリティとエコシステムの傾向】

・ゲームプレイを通して獲得できるアイテムがNFTとして保有できる

・ゲームプレイを通してしか一次入手できないNFTがある

・アイテムをNFTとして保有したい場合、Mintできるオプションが用意されている *1

・一般的なゲームアイテムとしてのユーティリティが提供されており、トークンマイニング機能がない

-スキンなら見た目

-武器ならステータスUP

・ゲームアイテムをNFTにする意義としては以下に焦点を当てている(NFTゲームの提供価値への原点回帰)

-ユーザーの深い所有感(真のデータ所有の権利 ※注)

-希少性の担保

-運営のアイテム排出やP2P取引における透明性の向上

・運営の収益源としては以下

-アイテムのMint(NFT化)手数料

-P2P取引手数料

-NFTを獲得するため、ないし、獲得効率を上げるための課金

・・・NFT

・・・ゲーム内アイテム

・・・バトルパス

・・・等の購入

・中にはゲーム内でNFTを利用することだけにフォーカスし、オリジナルのFTを導入しないケースもある *2

(※注 -法律用語の所有権とは異なる)

【期待されるゲームの状況】

まず一つ目として、Play to Earnが陥った経済バランスを解消することが期待できます。

to Earnを前面に出さずに、まず先にNFTアイテムなどが欲しいユーザー(ゲーム経済圏にお金を入れてくれる層)を呼び込む形になります。その人達が活発にMintと取引をしてくれることで、はじめてゲーム経済が回ります。ゲームが楽しいもので、その世界に没入し、NFTアイテムなどが欲しいと思う人の数や欲しいと思うプレイヤーの気持ちの強さがNFT価格に大きく影響します。

上述のような買い圧が発生しないと、Play to Earnがそもそもできない形になるので、ゲーム経済圏を構築しつつも買い圧と売り圧のバランスが取りやすいのではないかと考えています。また、NFTの価格は実際にゲームをプレイする人の思惑や感情に大きく影響を受け変動します。加えて、NFT獲得に向けての攻略はNFTによるトークマイニングのそれよりは複雑にしやすいです。例えば、バトルロワイヤルゲームにて勝利することでスキンNFTが獲得できるようにすれば、戦って勝つためのスキルを磨く必要が出てきますし、MMORPGにて深層のダンジョンの強力なボスを倒すことでレア装備NFTが獲得できるようにすれば、キャラの育成や協力プレイ等を考える必要が出てきます。先述のPlay to Earnと比較すると、一辺倒な攻略による売り圧増加の構図を崩せる複雑なエコシステムをつくりやすいです。

二つ目に期待できる状況としては、プレイヤーとしてエンゲージメントの高い人に恩恵を与えやすいというものがあります。お金だけではなく、時間や情熱、スキルを注いでプレイでパフォーマンスを出した人がより早く希少性の高いアイテムを獲得(Mint)できる構造を取りやすいです。

三つ目は、先ほど述べたNFTゲームとしての原点回帰です。ブロックチェーンにアイテム獲得の記録を刻むことの意義を、開発者にもユーザーにも改めて考えさせることを促します。プレイを通して獲得したアイテムを、思い出の形の一つとして、情熱やスキルの証として、自由で透明で堅牢で永続的な(ものとなりうる可能性を秘めた)分散ネットワークに残す浪漫。そこの楽しみや可能性に目を向けることを促す用語としてワークしてくれると、大変喜ばしいことだと筆者は思います。

その他にも以下のようなことが期待できます。

*1のようにMintできるオプションを用意する場合には、まずWeb2ゲームとしてプレイできて、興味を持ったら獲得アイテムのMintとNFT取引に参加してもらう形を取ることで、Web3ゲームへのオンボーディングを促進させることができます。

*2のようにオリジナルFTがない場合には、FTのトレードやFTの価格を気にすること、FTの価格やチャートの言及などを誰もできません。その分投機熱が入りにくいです。また、マネーゲームの印象を薄れさせやすい効果もあると思います。加えて、単純にエコシステムとして考慮すべき項目が減るので、開発者はエコシステムの設計及び導入(法的な対応も含め)がシンプルになり、ユーザーはエコシステムのコンセプトを把握、納得しやすくなります。オリジナルFTによる経済構築、ガバナンス、DAOを目指さないことにはなってしまいますが、Web3シーンの現状からすると、取り組みの一つとしては有意義かと考えています。

3.Play to Mintに期待したいこと(まとめ)

ゲームプレイを通してゲーム内アイテムなどをNFTとして獲得し保有する。時にはプレイヤー同士で取引をする。NFTとすることで、その活動の透明性や公平性、堅牢性を向上させ、所有感を高めていく。Play to Mintはある意味、ゲームアイテムなどをNFTとすることでどんなユーザー体験を提供できるのか?への原点回帰のムーブメントとも言えそうです。

そうすることで、買い圧と売り圧のバランスの取れた持続可能な経済、ゲーマー中心の没入感の高いダイナミックな経済、が実現できることを期待したいです。

また、よりシンプルな話として、ゲームの思い出の形の一つを、情熱やスキルの証を、ブロックチェーンに刻めること。誰にも改竄できないし奪われない、それでいて誰に対しても簡単に証明できる、“あなた自身のもの”として、自由で強固なネットワークに残せること。その喜びや意義深さを、今一度多くのユーザーに感じてもらう機会になることも期待したいですね。

後編ではPlay to Mintを考える上で参考となりそうなゲームを事例として紹介し、その他には、Play to Mintの取り組みがぶつかるであろう課題や考慮すべき事項を考察する予定です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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Nodra
[日本公式]SAKABA_JP

🎮Play&Search Web3 Gaming 📚Research member @NFTGamerJP