Sakaba game report:Play to Mint(後編)

Play to Earnバブルを経て、掲げられた新たなコンセプト-3-

Nodra
[日本公式]SAKABA_JP
11 min readSep 14, 2023

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後編では、まずPlay to Mintの事例紹介の続きをします。Play to Mintの考えに通じる取り組みを行っていると思うゲームプロジェクトを、例として選んでいます。

その後で、Play to Mintにおける懸念点と考慮事項を挙げておきたいと思います。Play to Mintは興味深いコンセプトですが、とはいえ、声高に“Play to Mint”と叫べばWeb3ゲームにおける課題が何でも解決するわけでは当然ありません。懸念点の多くは、この場で解決策や方向性が出せるような簡単なものではないですが、、、今後のために一旦整理しておくことは重要だと考えています。

以下の流れでお話します。

1.Play to Mintの事例紹介

2.Play to Mintの懸念点と考慮事項の考察

3.まとめ

どうぞ最後までお付き合いください!

  • 以降一部でPlay to Mintを“P2M”と表現します。

1.Play to Mintの事例紹介

それぞれのゲームの概要とP2Mの視点での取り組みを、順に見ていきましょう。

🎮Night Crows

ゲーム概要

Night Crowsは韓国の大手ゲーム会社であるWEMADEが手掛ける新作MMORPGです。基本プレイ無料でPCだけではなくモバイルにも対応しています。Unreal Engine 5を使用したリアリティのあるグラフィックとアクション、4つのクラス×2つの職業から選べるプレイスタイル、空中を自由に移動できるグライダーシステム、そして1,000人単位の大規模なPvPなどが特徴です。ファンタジーと本当の歴史を組み合わせて構築された中世ヨーロッパ風の世界観にも注目です。韓国では既にリリースされており、リリース後にはApp StoreとGoogle Playの韓国内での人気及び売上でNo.1を記録しています。今年中にWeb3機能を搭載したグローバル版がリリース予定です。

Link to Youtube from WEMADE(韓国版のプロモーション動画を参考としてリンクします)

P2Mの視点

Night Crowsのゲーム内経済には、「ユーザーが貢献した付加価値の結果としてブロックチェーン資産を生成できるソリューションを準備する。」としています。

NFTに関しては、具体的な情報はまだ少ないですが、エコシステムについて“Play and Own NFT”という表現がされています。ゲーム内で育成したキャラクターのMintなどがサポートされる予定です。

またトークンに関しても、P2Mの考えに通じるエコシステム設計になっていると思います。現在7つのトークンの導入が予定されています。これらは基本的に初期供給はなく*、ゲームのパフォーマンスに合わせてのみMintされます。まず基礎トークンとしての$Crowがあります。ゲーム内で獲得できるDiamondを通じてのみMintでき、他のトークンを取引するベーストークンとなります。$Crow はBurnしてDiamond と交換することもできます。その他6つのトークンは、ゲーム内で獲得するそれぞれの素材からMintできます。例えば、$FeatherはCelestial Piece、$PapyrusはPapyrusからMintします。またこれらのトークンもBurnすることで元の素材と交換することができます。

  • 所定の量の$Crowは、ゲーム経済における取引媒体とするために、初期流動性として運営から供給される予定です。

🎮The Machines Arena

ゲーム概要

The Machines Arenaはアドレナリンを刺激するペースの速いトップダウンヒーローシューティングです。見下ろし型のOverwatchのようなゲーム性になっています。基本プレイ無料で現在はクローズドβ版となっています。

ゲームモードは以下のPvPとPvEが用意されています。

PvPは4対4のチーム戦です。独自の能力と武器を持つヒーロー達から操作キャラを選択し戦いに挑みます。それぞれ独自のマップを備えた、以下の3つのモードがあります。

🎮PUSHBACK

レールに乗ったカートを戦いながら押し合うモードです。中立ゾーンから敵チームゾーンにカートを押し出すことで勝利となります。

🎮DETONATION

爆弾を仕掛ける(オフェンス)側と防ぐ(ディフェンス)側に分かれて戦うモードです。オフェンス側は爆弾を運び、設置場所に仕掛け、爆発させることで勝利します。ディフェンス側はそれを阻止することで勝利します。

🎮SKIRMISH

シンプルなバトルモードです。先に合計35キルを達成したチーム、ないし、制限時間の5分間に多くのキルを獲得したチームが勝利となります。

PvEはDeath Runというスキルと持久力を試す究極のシングルプレイモードです。次々と襲って来る敵を倒して生き残り、最高スコアを目指します。3セクションに分かれており、クライマックスにはボスも登場します。

Link to Tweet from The Machines Arena

P2Mの視点

チームは、ブロックチェーン使用の目的として、「プレーヤーが獲得した報酬や成果を制御できるようにして、デジタルコレクションを販売したり保管したりできるようにする。」としています。このデジタルコレクションがNFTになっていて、キャラクタースキン等があるようです。なお、FTの使用は現在予定されていません。

デジタルコレクションは、ゲームプレイを通して獲得できます。毎日のプレイ、トーナメントやイベントへの参加、シーズン報酬などで獲得機会があります。

基本プレイ無料に加えて、Web3に一切触れないで遊ぶことも可能です。クローズドβ Season1の状況を見るに、獲得したデジタルコレクションをチェーン上に保管したりP2P取引したい時に、ウォレットの利用やMintの実施をオプションで選択する形になるのではないかと予想しています。

2.Play to Mintの懸念点と考慮事項の考察

ここからは、いくつかの懸念点とそれに伴って考慮すべきと思う事項を、順に整理していきます。

❓NFTによるユーザーの真の所有に対しての疑問

懸念点

Play to Earnが流行する以前から、NFTでゲームアイテムを所有するという試みは沢山あり、そこで投げかけられている疑問は依然として残っています。

例えば、アイテムやキャラに対してゲームを通してユーザーが感情移入する部分、つまり所有していると感じたい部分は、中央集権サーバを外部参照しているMetaDataであることが多いです。デザイン画像ファイルなどです。

ですので、運営による修正が容易であったり、運営が活動を終了した場合にキャラクターの画像等が消えて見られなくなる可能性があったりします。

その他にも、ゲームがサービス終了を迎えた場合には、NFTで保有していても、そうでなくても、ゲームでデジタルアセットが使えない状態は等しく起きます。

これらの状況下で、ユーザーが保有していると言えるのか?ユーザーに深い所有感は生まれるのか?という疑問が投げかけられることがあります。

考慮事項

以下のようなことを考慮する必要があると思います。

・所有以外のNFTの可能性

- 相互運用性

- オープン且つ透明なP2P取引

etc

・分散型ストレージやフルオンチェーンNFTの利用及び関連する技術発展への期待

・Unique Token Contract Addressなど外部参照をしていない部分を保有している、ということについての、ユーザーの論理的または感覚的な理解とそれによる可能性

❓ゲーム環境の調整とNFTの価値

懸念点

ゲーム環境の調整は、ゲームを長期継続していく上では基本的に避けられないと思います。

NFTの活用により、ユーザーがアイテム所有の権利を主張し、さらには価格が付くので、環境調整(特にナーフ)はよりセンシティブなものになると予想されます。

例えば、ゲーム環境の調整、場合によってはMetadateの修正が発生して、所有しているアイテムがナーフされた場合、所有できると謳われていた自分の権利のようなものが侵害されるような感覚を覚えることもあるでしょうし、価格が下がれば(お金が全ての価値基準ではないにせよ)気分の良いものではないでしょう。

ユーザー主導で育んできたNFTの価値が、運営の安易な匙加減で大きく上がり下がりしたり、その可能性を心のどこかで感じながらユーザーがゲームをプレイしたりする状況は、P2Mが目指す経済にとって好ましくないと思います。

考慮事項

・ゲームを永続させることを共通の目標として、環境調整に関して、運営とユーザーでコミュニケーションをより良く取る

・ゲーム環境の調整に所有感や価格が影響され“にくい*”内容をNFT化の対象とする(例:完全に見た目だけのスキン)

*スキンであってもスキン対象のキャラや武器がナーフされると、感情や価格は影響を受けるとは思います(難しい、、、)。

・DAOやAutonomousWorldによる、完全にfixした環境、環境変化のルールが予め規定された世界、または現実世界の自然のように受け入れられる環境の実現可能性

❓NFTのインフレ対策

懸念点

NFTがプレイを通してのみ獲得できるようにしても、FTは使用しないことにしても、NFTのエコシステムがしっかり考慮されていなければ経済は崩壊します。特にNFTのインフレには注意するべきかと思います。ユーザーの自由経済により価格が決まれば良いとはいえ、例えば“伝説の剣”がプレイヤーの2人に1本分の量が供給されて価格が1ドル、ではさすがに風情がないですし、誰でも簡単に強くなれてゲームバランスが崩壊する恐れもあります。

考慮事項

・供給量を絞る

-予め排出上限を設ける

-シーズン毎にドロップするアイテムを変える

etc

・Burn要素を入れる

-ゲーム内での死亡やミッション失敗で所持品が消滅

-利用すると耐久値が減りやがて壊れる

-いわゆる回復ポーション等、そもそも消耗品がNFT化の対象

-強化・育成素材として消費できる

etc

❓そもそも、所有したいと思えるくらいゲームがおもしろい必要性

懸念点

これはP2Mの文脈ではなくても当然のことではありますが、ここでも敢えて触れておく必要があるように感じたので、最後にこちらを添えます。

結局、P2Mがうまくワークするためには、何かしら保有したくなるほどの“おもしろさ”“楽しさ”が必要ということになります。

ゲームである以上何かしらのおもしろさは欠かせません。従来のゲーム文脈的なアプローチにせよ、新しい体験やエンターテインメントを探求するアプローチにせよ、とても大変なことです。

考慮事項

・模索し続ける、開発し続ける

・挑戦する人々に目を向け、賞賛し応援する

3.まとめ

以上、全3編にわたりゲームプロジェクトをPlay to Mintの視点で考察しました。如何だったでしょうか?

ユーザーがプレイで獲得した、デジタルアセットの販売・流通・保有のパワーバランスや主導権を、運営側からユーザー側に寄せる。そうすることで生じる、ユーザーの活動や感情の変化に新しいエンターテインメントを見る。Web3ゲームの新たなおもしろさと経済の可能性は、Play to Earnだけではないのかなと筆者は思います。

SakabaはWeb3ゲームの発展に貢献すべく、多様なコンセプト・アプローチに目を向け応援していきます。

最後までお付き合いくださった方。本当にありがとうございました!

参考URL

📝Night Crow

Night Crows: Completing the Blockchain Economy / WEMIX

https://www.wemix.com/communication/79cb0a39-4400-4a9f-a16c-0df6dc792b57

1Q FY2023 Earnings Release / WEMADE

https://file.wemade.com/homepage/upload/20230509223505392_FY23%201Q%20Earnings%20Release%20PT(ENG)_20230510.pdf

📝The Machines Arena

The Machines Arena Website / The Machines Arena

https://www.themachinesarena.com/

The Machines Arena’ Adds In-Game Rewards That Can Be Minted as NFTs (Eventually) / Decrypt

https://decrypt.co/148008/machines-arena-adds-in-game-rewards-minted-nfts-eventually

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