Sakaba Game Report:Web3ゲームのコミュニティづくり-2-

初期段階におけるゲーマー中心のコミュニティの最適な立ち上げ方を考察する-後編-

Nodra
[日本公式]SAKABA_JP
Jul 18, 2023

--

前編では、Web3ゲームコミュニティとは何か?を改めて整理した後、現状において初期段階のコミュニティづくりで起きている問題について書きました。今回後半では、コミュニティの立ち上げがうまくいっているゲームプロジェクトの事例を見ると共に、それらも踏まえてゲーマー中心のコミュニティの最適な立ち上げ方を考えたいと思います。

以下の流れでお話します。

-前編(前回記事)-

1.Web3ゲームコミュニティってなんだっけ?

2.コミュニティで起きている問題(特に初期段階)

-後編(今回記事)-

3.うまく立ち上がっているコミュニティの事例

4.Web3ゲームコミュニティづくりに大事なこと(特に初期段階)

5.まとめ

どうぞ最後までお付き合いください!

3.うまく立ち上がっているコミュニティの事例

ここからは、初期段階のコミュニティがうまく醸成されたゲームプロジェクトたちを見てみましょう。彼らはどんな行動を取っているのでしょうか?

WILDCARD

WILDCARDは、TCGやRTS、MOBAの要素が重なり合ったユニークなゲームです。観戦の楽しみも強く意識されている作品で、“観ることがプレイと同じくらい楽しい”というふれこみにも注目です。

確かに観ているだけでもわくわくする

長期的な目線で、誇大広告よりも時間をかけてコミュニティを育てることを優先した活動をされているようです。リワードが絡むような派手な情報はTwitterでの露出を控えめにして、ゲームに興味を持ってDiscord等コミュニティに積極的に入ってきた人と密なコミュニケーションを取っている印象を受けます。

例えば、アルファテストはコミュニティに貢献している人を中心に少数の非公開/招待制に​​よって実施され、ゲームプレイを磨いていました。また、ALやNFTの入手チャンスを得るためのクエストも、Discordでは案内されていますが、Twitter上ではあまり促されていません。例えば、あるイベントに対して、案内Tweetへのリアクションやイベント参加を求めるクエストがあっても、イベント案内のTweet自体にはクエストの情報が出ていなかったりします。

用意されているクエストも簡単なものから楽しくてやりごたえのあるものまであります。

・TwitterのフォローやDiscordへの参加

・Discord内でのユーザーとのコミュニケーション

・あなたのWILDを表現する!というアクティビティ

・ミームやファンアートコンテスト

・コミュニティ活動のアイデアを提案

など

そして最近のイベント、4月20日に行われたThe Genesis WildPass(供給数:4,444、価格:44Matic)のMintは、即完売となり成功を収めました。しかも、Co-FounderのWildPaul氏のTweetによると、ホルダーはゲーマーの割合が多い可能性があります。Mint後から 24 時間も経たないうちに、NFT所有者向けのプレイテストプログラムへの参加を開始した所、初期のエンゲージメント率が予想よりかなり高かったとのことです。

ミント後のプレーヤーへのコンバートに関する指標に興味があるというユーザーのTweetに、WildPaul氏が返したコメント

では、WILDCARDは注目を沢山は集めていないのか?というと、そうではありません。そちらはそちらで手を打っています。例えば、クローズドで練り上げたゲームプレイで、コミュニティメンバーとWeb3ストリーマーによるエキシビジョンマッチを実施しています。

とても高いクオリティのコンテンツでゲーマーの方にも響くのではないでしょうか?

また先述のMintはMagicEdenと協業、Mintが近い時期にはトップクラスのコミュニティと協力してGiveawayを実施しています。これでMintの数日前には、Twitterのフォロワー数が30,000人程急上昇しました。(7月11日時点のフォロワーは約53,300人です。)エンゲージメントの高い人は既にALを獲得する機会が十分にあったと思いますので、Hypeを上手く使い分けできている例と言えるのではないでしょうか?

GranSaga:Unlimited

GranSaga:Unlimitedは、グラフィックの美しいクラシックスタイルのMMO RPGです。MMO RPGに、よりオープンで自由で透明な、外部と結び付いた経済体験をもたらすことに挑戦しています。

プレイ動画

昨年11月の情報公開から今年3月に行われたユーザー参加型の第一回テストプレイまでの、コミュニティの一連の動きは素晴らしかったと思います。私自身もコミュニティに入ってテストにも参加しましたが、とても良い雰囲気でした。いくつか印象に残ったことをお話します。

まず一つが、テストプレイ終了まで金銭的な情報がほとんど出なかったことです。クエストが当初から展開されていたのですが、リワードとして明示されていたのはテストプレイへの参加権だけでした。なので、ユーザーがクエストに熱心に取り組む理由は基本的にテストプレイに参加するためだけでした。

クエストの1つだった”D”、自身が熱心なゲーマーであることを証明します。みんな自分のプライドを懸けてテスト参加を試みました。

いわゆるセール情報もほぼありませんでした。トークンのリリースはそもそも予定が無く、NFTのセールについても情報はほとんど出ませんでした。(プレセールはそもそも行わないようですが。)一方で、どういうゲームになるのか、ブロックチェーンで何を実現したいのか、そしてプレイ動画に関する情報はSNSやAMAなどでふんだんに提示されました。

そのような中、日本語のチャット部屋では自然とゲームプレイやシステムの話が出てくるのが印象的でした。何なら稼ぐではなく消費の話、グラフィックの良いゲームなのでより楽しむために正式リリースに合わせてゲーミングPCを購入するような話さえ出ていました。稼ぐ話をするための情報がないのですから、当たり前ですよね。しかし、すごくシンプルな話ながら、なかなかこういう形に持っていけていないプロジェクトは多いと思います。

もう一点が、運営メンバーがユーザーと積極的にコミュニケーションを取っていたことです。クエストに運営メンバーたちのTwitterフォローがありました。私は少し不思議に思いながら、そしてこのタスクは少し単調ではないかな?と疑問に思いながら、フォローをしました。すると、メンバーからのフォローバックがありました。さらには、GranSaga : UnlimitedのことをTweetをすると、リアクションを頻繁にくれました。これは一ユーザーにとってはとても嬉しかったです。各メンバーの発信内容に興味を持つようになり見てみると、それぞれの視点でゲーム開発の模様が垣間見えたり、人となりが分かって面白かったりしました。さらにテストプレイでは、プレイヤーとして参加されていました。ゲーム内でユーザーに“ようこそ楽しんでね”と声をかけたり、イベント発生場所で進行役を務めたりされていました。これは、なかなかゲーム好きには楽しい体験だったのではないでしょうか?

テスト終了時にはユーザーと運営メンバーが集合して記念撮影

コミュニティづくりの結果、テストプレイは大盛り上がりでした。テストに参加できなかった方がとても羨ましくなるほどに、SNSにゲームの楽しさが溢れていました。テスターが決まってからリワードの発表があり、Lv15達成で第二回のテスター権とリリース時の称号”パイオニア”の獲得というものでしたが、それだけでも多くの人が喜んで熱心にプレイをしました。(最終的にNodraは気が付いたらLvが22になっていました。)

3日間行われたプレイテストの結果

・約500名が参加

・約300名がLv15達成

・平均プレイ時間は11時間18分

・上位 200人のテスターの平均プレイ時間は 21時間

CyberStella

CyberStellaはユーザーと共にIPを創出するプロジェクトです。マンガ、ウェブトゥーン、アニメ、映画などに取り組んでおり、もちろん経済性を持ったゲームは主力の一つです。

プレイ動画

FounderのShinnosukeMurata氏は、同業のファウンダー向けに、Web3ゲーム運営で得た素晴らしいノウハウを自身のnoteで共有されています。その中でコミュニティに関する記載もあります。コミュニティづくりの姿勢をHypeを避け量より質にまず拘ることに変えたことで、確かな効果を感じてらっしゃいます。

例えば、やみくもにKOLやエージェントにコストをかけずに、小規模でもファンに語りかけるように心がけた活動をされています。

国ごとの状況に合わせて活動を展開
少人数にしっかりと語りかける

週次ベースのイベントも実施。例えば、キャラクターの画像を見て、名前と設定を考えてもらうアクティビティをノーリワードで行うなどされたようです。当時Discordにいた700人のうち400人が参加するイベントになり、1時間程の作業を純粋に楽しんでもらえたそうです。(6月21日時点のDiscordメンバーの数は約16,900人になっています。)

Shinnnosuke氏は自身のnoteでこう述べられています。

“その後も週次ベースでイベントを行い、徐々に内部から総数としては少ないものの「質の良い熱狂」を生み出すことに成功しました。

毎週Cyberstellaのコミュニティメンバーにインタビューを行っているのですが、参画を決めた理由によく「古参メンバーが過度に煽ってこない」「空虚なhypeがない」ことが挙げられます。社内でもクリプト事業経験があるメンバーがいたので、「Shinはなぜクリプトマーケティングをしないのか」と責められたりもしましたが、現在の状況を見るとこのアプローチで良かったと思っています。

ここで気づいたのですが、クリプトビジネスはコミュニティが大事だと言いながら国内外見てもきちんとコミュニティ作りをやっているところは少ないと思います。”

/ 引用: 「創業から1年でブロックチェーンゲームタイトルをリリースしてわかったこと」

以上3つのプロジェクトの初期のコミュニティづくりを見てきました。どのプロジェクトもゲームとコミュニティの今後の展開・成長がとても楽しみですね。

4.Web3ゲームのコミュニティづくり(特に初期)に大事なこと

ポイント

プロジェクトの事例含めこれまでの話から、コミュニティづくりにおいてポイントとなるのは以下のようなことかと思います。

・クエストやアクティビティは楽しいものにする

・クエストやアクティビティは意味のあるものにする

-プロジェクトの理解に繋がる

-プロジェクトの良さが広がるきっかけになる

-ユーザー同士やユーザーと運営メンバーが仲良くなれるきっかけになる

-ゲームに対して適切なフィードバックが得られる

・情報提供は量より質

-Hypeの利用は控える(使う際はほどほどに。使うタイミングが重要そう。)

-プロジェクトの内容、良さ、楽しさをしっかりと伝える

-少数でもコアなファンになってくれるように語りかける

・インセンティブ

-まずは楽しさを第一に

-ゲーマーに働くがトレーダーに働かない設計にする

(ゲーマーは楽しい・できる、トレーダーは面倒くさい・できない)

-金銭的リワードの活用は程々にする

(貢献内容に相当する適度なもの、金銭ではないリワードも活用)

資産・収益の分散性より開発・ゲーム運用の分散性?

資産・収益の分散性というのは、Web3ゲームにおいて面白いテーマではあると思います。ただここまでの話から考えると、少なくともコミュニティの初期の段階においては、この点(特に金銭が伴うこと)は慎重に活用する必要があるように思います。

結局のところ、見返りは“楽しい”をベースにすると良さそうです。興味があるから知ってみる、知ってみて面白そうだからやってみる、やってみて面白かったから人に伝えたくなる、それらを通してプロジェクトが気に入ったから応援を続ける。その過程を通して感じる“楽しさ”が、まず見返りとしては最大のもの。

楽しむ中でユーザーの取ったアクションがプロジェクトの貢献に繋がれば、それに見合った形で報われること“も”ある。それはテストプレイ権であったり、Discord内の特にユーティリティのない誇示用のロールだったり、ゲーム内アイテムだったりです。そして金銭的に報われることも“時にはあるかもしれない”、20ドルの広告効果があったならば、20ドルのNFTと言った具合に。もらったNFTなどの金銭的価値は、今後ゲームを楽しむ時の中で副産物として上るかもしれないし、特段上がらないかもしれない。ただ、“本人にとっての価値”は、そのプロジェクトに参加し続けているのならば上がっているはず。初期の一般ユーザーに対するリワードについては、どうやらこれくらいのバランスに正解の一つがあるように思えます。

また、Web3ゲームに好意的で長くプレイしている(そしてお金を払ってくれている)ゲーマーの方には、開発・ゲーム運用の分散の点が面白いとおっしゃる方が案外いらっしゃいます。ですので、むしろこちらの面白さは、もっと前に出しても良いように今回改めて思いました。

5.まとめ

結局、Web3ゲームコミュニティづくりに魔法のようなものはなく、他の多くの分野のコミュニティと同じように、コミュニティを大事にした地道な活動が必要なのではないでしょうか?むしろ、クリプトフィールドの中からコアなファンを探す、Web3を知らない・抵抗があるゲーマーにWeb3の良さを知ってもらうなどの点においては、他分野よりも一層のひたむきさが必要なのかもしれません。

Sakabaはゲーマーと運営メンバーを繋ぐプラットフォームです。適切なインセンティブ設計やそれぞれの人にとって最適なゲームやゲーマーを探せるツールで、初期のコミュニティづくりの力になりたいと思います。

Sakabaは今後も、理想的なWeb3ゲームコミュニティの在り方やそのつくり方を探求していきます。

参考文献

Deep Dive #1: Wildcard Alliance / WolvesDao

2022最新版【Wildcard】とは?始め方、遊び方を解説 / GameWithNFT

創業から1年でブロックチェーンゲームタイトルをリリースしてわかったこと / Shinnosuke Murata

--

--

Nodra
[日本公式]SAKABA_JP

🎮Play&Search Web3 Gaming 📚Research member @NFTGamerJP