IP電話とv6プラス(IPoE接続)を共存させてみた

たこ
Salad
Published in
Jul 14, 2020
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最近は、もはや夜間にインターネットが遅くなるのは当たり前みたいな感じになっていますね。

その主な原因に、NTT NGN網とISP(プロバイダー)を結ぶNTE(網終端装置)の輻輳があります。詳しくは下のNTTの記事が参考になります。

(https://www.jpne.co.jp/service/v6plus/)

簡単に言うと、NTTの回線の場合、IPv4(PPPoE方式)では大量の家庭の回線が一度網終端装置という装置で束ねられ、そこで処理がなされた後にインターネットに接続できるようになっています(上図左)。これだと沢山の家庭が同時に回線で多く通信を行うとそれらが束ねられた網終端装置で詰まってしまい、回線速度が低下してしまうのです。これがよく起こるのが夕方から夜間の時間帯で、多くの家庭が帰宅してたくさん通信を行う時間帯のため、この時間は回線速度が著しく低下する傾向にあります。

そこで、通信方式をIPv6(IPoE)という方式に変えると網終端装置を通すことなく直接インターネットに接続でき、混雑を回避することができるのです。

しかし、そうはいっても中にはIPoEに設定したくてもできないというケースがあります。Niftyなどで使われているIPoE接続(IPv4 over IPv6)サービスである「v6プラス」の例をあげると、

・固定IPサービス

・IP電話(050電話)

がIPoE接続利用時には利用できないと明記されています。そのため、これらを使っている方はv6プラスは利用できず、原則PPPoE接続かv6接続オプション(IPoE IPv6 + PPPoE IPv4)を利用する必要があります。

我が家では絶賛IP電話を使っているため、上記の通りv6プラスが利用できません。v6プラスを使えるようにするためにIP電話をやめて光電話に乗り換えるという方法もあるのですが、各所への電話番号の変更通達が面倒だということで家族により却下されました。だからと言ってこのとてつもなく遅いインターネットで我慢できるわけもありません。

そこでいろんなことを調べたり試行錯誤したりしてなんとか解決策を見出せたのでご紹介します。

方法

「IP電話(IPv4 PPPoE)とv6プラス(IPoE接続)の共存ができない」という問題は「マルチセッション」を利用することによって解決できます。

マルチセッションとは、複数のプロバイダを一つのNTT回線に同時に引き込むことを言います(NTTは標準で2セッション、別途手続きをすれば最大5セッションまで利用できるらしい)。つまり、一つのNTT光回線のHGW(ホームゲートウェイ)で二つのプロバイダを同時に利用することができるということです。

例えば、今フレッツ光の回線をNiftyと契約しているとしたら、回線は一つのままでプロバイダ契約のみをもう一つ追加で契約する、ですから例えばSo-net光のプロバイダ契約だけを追加することによって、もとのniftyの時に契約していたフレッツ光回線でso-netにも接続できるようになると言うことなのです。普通はまず使う機会のない機能だと思うのでそもそもそんなことできんの?!みたいな感じですができます。

そこで、今回は元から使っていたNiftyに加えてSo-netを追加で契約し、前者をIP電話(niftyフォン-C) のための回線としてPPPoE接続で利用し、後者をv6プラス(IPoE IPv4 over IPv6)で利用することにしました。利用するプロバイダによってはこれができないものもあるかもしれない(IPoE接続サービスを利用するときにPPPoE接続が残ったままになるプロバイダなどはできないかもしれない)ので、プロバイダに確認してみるのがいいと思います。

なお、自分の場合、この件についてプロバイダに聞いてみたところ、Niftyさんには「できなくはないと思うが、自己責任でお願いします。できるかどうかは答えられない」と言われ、So-netさんには「可能です」と言われたので聞いてもズバッと答えてくれないかもしれないです。(出来なかった時に文句言われたら困るからかもしれません)

ここからが割と重要で、新しい回線は、接続サービスのみ(プロバイダサービスのみ)を申し込んでください。料金は大体月額900円くらいです。先述のとおりNTT回線は今使っている物を使いますので。月額3400円くらいのプランはNTT回線利用料込みのものなので気をつけてください。こっちのプランにしてしまうとNTTの工事のおじさんにもう一本新たにNTT回線を引かれてしまいますw

So-netの場合、ホームページに申し込む場所が見つからなかったのですが、電話したらプロバイダの方にすぐ手配していただけで簡単に申し込みができました。申し込み方法がわからない場合は(というか絶対これだと言う確証がない限りは)とりあえずプロバイダに電話してみることを強くおすすめします。自分も間違えかけました。

申し込めたら、あとは開通するのを数日待てば開通したよメールが来きます。メールが届いた頃にはもうすでに勝手に回線が家まで届いていました。特にこちらでHGWを設定したりする必要はありませんでした。こういう手間が一切ないところもIPoE接続はいいですね。

ちなみにこれはRS-500KIの場合ですが、設定が勝手に完了するとPPPoEの設定項目が弄れなくなり、PPPoEランプが消えますが、その状態が正常です(この状態になると、PPPoE接続がHGWからできなくなり、IPoE接続のみが新しいプロバイダを介して利用できるようになります)。

接続した全体図はこんな感じです。

IP電話のみがPPPoE接続できるようにHGW(RS-500KI)のPPPoEブリッジ(PPPoEパススルー)をオンにします。これによってPPPoEはHGWをパスし、Web Caster V130にて接続できるようになります。

IPoEにはHGWから接続できます。上の図ではその先に無線LANを接続していますが、HGWからでも直接LAN接続が可能です(つまりWi-Fi内臓HGWならHGWのWi-FiでIPoE接続が利用可能)。

速度

最後に大事な回線速度について。

似た時間帯のものを並べてみました。結構いい感じになったんじゃないでしょうか。ちなみにこれらは全てWiFi経由のiPhoneXでの計測です。設定する前のPPPoE接続の際は0.x~30Mbpsくらいまでの間を彷徨ってましたが、IPoE接続にしてからは100Mbpsを下回ったことはありません。

(計測時刻は21:10、IPoE接続)

有線LANだとこんな感じ。PPPoEの時の計測結果がないので比較はできないのですが、この時間帯のこれだけ出てれば御の字です。

IPoE接続サービスを提供してくれるJPNEさんには頭が上がりませんね。インターネット回線が遅い方は可能な環境ならばとりあえずIPoEすることを強くお勧めします。

余談

ここからはどれくらい合ってるかわかりませんが、混雑について見聞きしたことを雑に書いております。参考程度にどうぞ。

https://www.jaipa.or.jp/information/docs/180411_2.pdfより引用

NTTのNTE(網終端装置)が混雑する理由は、NTTが網終端装置の増強をセッション数を基準に行なっているからのようです。要は利用者の数で増強の可否を決めているらしい。その基準値として1セッション当たり500Kbpsの帯域が割り当てられており、それが2000セッション増えるごとに1Gbps増強するという感じになっています。そしてどんなに一人当たりの通信に必要な帯域が増えたとしても利用者数が増加しない限りこの帯域は増やしてもらえないそう。

つまり、1Gbpsを2000人で分け合っているわけです。例えば、昼間は利用者5人だけなら1人400Mbpsまで使えるわけですが、夜間に利用者が2000人いると1人500Kbpsまでしか使えないということです。ちなみにYouTubeを快適にみるには10Mbpsくらい必要とされています。これが、ネットが遅いからと言っていくら光にしたり機器を高性能にしても速くならない理由かと思います。どんなに新東名高速道路が速く走れたりスポーツカーで飛ばしたりしたとしても最後の料金所が激混みだったら結局早く到着できない、みたいな感じでしょうか。

これじゃあ回線が混雑するに決まっているのですが、IPSがどんなに頼んでもNTT様はこの基準を一向に変える気はないようです。

これに対して、JPNEなどのVNE事業者は需要に先を越して設備を増強することができるため、IPoE接続によってNTTの二の舞のようなことは起こらないと考えて良さそうです。つまりこうやってIPoE接続はいいぞと布教し続けて利用者が増えたからと言ってPPPoEのように回線が混雑することはない、はずです。

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