イベントレポート:「アフリカ投資は日本企業が世界と闘える最後のチャンス」アフリカスタートアップ投資の先駆者が語るアフリカ投資の可能性【後編】
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近年、世界から注目を集めるアフリカのスタートアップ。前編ではアフリカ現地でビジネスコンサルティングを行うアフリカビジネスパートナーズ、アフリカスタートアップへの投資を行うサムライインキュベート、アフリカスタートアップ協業を行うダイキン工業の3社がアフリカスタートアップ投資の可能性について解説してきた。
後編では、JICAが行うアフリカ支援について、パネルディスカッションにてアフリカが抱える課題とアフリカスタートアップ投資の可能性について紹介する。
【目次】
前編(前編はコチラ)
・「フィンテック」と「太陽光」ーーアフリカスタートアップ投資の注目すべきトレンド
・「アフリカへの投資のチャンスは”今”だ」サムライがアフリカにベンチャー投資をする理由
・アフリカスタートアップとの協業による日本企業の新たな可能性
後編(本記事)
・JICAがアフリカ起業家支援を行う意義
・アフリカスタートアップへの投資の可能性
JICAがアフリカ起業家支援を行う意義
発展途上国への技術協力や資金協力を行う独立行政法人国際協力機構(JICA)。現在ルワンダやエチオピアをはじめとするアフリカ諸国のスタートアップ支援を実施している。
JICAでアフリカの起業家やスタートアップ支援を行う不破氏が、なぜJICAがアフリカのスタートアップを支援するのか、JICAが支援する意義について語る。
JICAがアフリカスタートアップを支援する意義
これからアフリカ全体で人口が増える中、失業率の増加に伴う難民や犯罪の増加が課題になる。特にナイジェリア・エチオピア・コンゴ・タンザニアの人口大国では大きな問題になる見込みだ。
そこでJICAはICTでITスタートアップ育成を始めた。人口増加に伴う課題の解決に向けて、イノベーティブな起業家やトップ企業を支援しつつ、雇用を創出するのがJICAのスタートアップ支援をする意義である。
JICAは起業家支援のプラットフォーム『プロジェクトNINJA』を発足。JICAの資金を活用しながら、アフリカの起業家と一緒にビジネスを創出することが目的だ。
プロジェクトNINJAの活動
プロジェクトNINJAは2010年からルワンダ、2018年からエチオピアで活動を開始。すでに日経新聞とのピッチイベントをエチオピア・ウガンダで開催している。
今後はガーナ、ケニア、ナイジェリアへの支援を予定している。アフリカ現地・日本でのビジネスコンテストやアクセラレータプログラム、日本とアフリカ企業の交流イベントを開催予定だ。
またサムライのアフリカ投資ファンドと連携した起業家支援の調査を開始。アフリカスタートアップへのさらなる支援に向けて活動している。
JICAはテクノロジーでの問題解決だけではなく、地道な産業の底上げをしながらアフリカ全体の発展を目指す。
不破氏は「日本の本質を変えるようなリバースイノベーションの起こす、アフリカにはその可能性を感じている」と語った。JICAは日本とアフリカの産業の発展に貢献し続けている。
アフリカスタートアップ投資の可能性
コモンズ投信株式会社の渋澤氏がモデレーターを務め、渋澤氏と4人の講演者とがアフリカスタートアップへの投資の可能性についてパネルディスカッションを行なった。
渋澤氏は国内のESG投資促進における第一人者であると共に、 近年はアフリカへの投資にも注目し、2019年には現地視察を行なっている。
アフリカスタートアップのチャンスと課題
渋澤(MC):
日本がアフリカに投資をしていく中でアドバンテージとディスアドバンテージについて教えてください。
梅本:
アフリカの企業が日本の企業をどうみているのか、という観点から見ると日本の持つ製造業の集積は大きなアドバンテージですね。
特に配送や物流のスタートアップの場合、車両や物流を持っている日本企業は強みを持っています。また、アジアの現状をよく知っているところは将来的にアジアに展開したい企業にに対して強みになりますね。
榊原:
アドバンテージはアフリカでタイムマシンモデルのビジネスができる点です。
先進国で現存するビジネスをアフリカで同じモデルでやってみて、成功しているモデルがあります。IT系の会社は日本で強みを持っていれば、アフリカへの海外展開をして成功する可能性がありますね。
三谷:
日本は他国に比べて、据付けの品質を担保できる人材の教育がアドバンテージになります。高い品質を担保しながら現地の雇用を創出することが、日本企業が介在する意義だと思います。
渋澤(MC):
アフリカ・イスラエルに投資しているサムライインキュベートですが、アフリカとイスラエルの違いはなんでしょうか?
榊原:
イスラエルはすでに世界の企業が注目しています。一方アフリカはここ2–3年で盛り上がってきてはいるものの、市場規模やポテンシャルに鑑みて日本も世界の投資家もまだ他地域ほど多くはいません。はじめにルワンダにいった時もVCは殆ど来てないと感じました。
今ならアフリカで世界と闘えるという実感がありますね。
また、ギークなテクノロジーが発展しているイスラエルと違い、アフリカはテクノロジーではなくアイデアで勝負しているところもポイントです。アフリカはインフラの住所がない、銀行口座がないといいった課題があり、既存のテクノロジーを活かしながら入れる隙もあると思っています。
最近は中国企業も目立ってきており、大手のVCが入ってきています。
渋澤(MC):
ここで会場からの質問を受け付けましょう。
会場:
海外から中古のものが入ってくることにより、交通の課題や環境汚染の問題が大きいと考えています。お金ではなく、物が入ってくることについてはどう考えていますか?
梅本:
輸入をした方が安いので輸入が増えてしまう、これがアフリカの製造業が伸びない大きな懸念になっています。この問題は政府が輸入規制などに取り組むほか、輸入よりも海外の企業が現地で製造を行うなども求められています。
しかし輸入規制は外交問題に発展しやすく、国一存だけでは進められないことが懸念されます。
会場:
投資家という視点で、アフリカマーケットのリスクや懸念点について教えてください。
榊原:
一番のリスクは「日本企業がアフリカに行かないこと」です。今アフリカは日本から世界をとれる最後のチャンスなので、どう日本の企業にアフリカの良さをわかってもらえるかが今の私たちの課題です。
今がアフリカスタートアップを考えるべき時
人口増加やテクノロジー発展とアフリカに投資すべき要因はたくさんある。サムライインキュベートの榊原はアフリカスタートアップ市場こそ、日本企業が世界で闘える最後のチャンスだと語る。
榊原:
過去産業を発展させてきた方々がいて今の日本があるんです。そんな経験を持つ「サムライ」達が新興国を支援していく仕組みを作りたい、それが僕がサムライを作った理由でもあります。
融資や助成金よりも、投資。お金を活用して、日本の発展を支えてきたような事業をアフリカにたくさん作ることに意義がある。今日会場に来てくれている皆さんがアフリカでビジネスをやらないと広がりません。
30年後の未来、次の世代に良い地球を一緒に作っていきましょう。