日本郵便初のオープンイノベーションプログラムを終えて

Demo Dayでの集合写真

はじめまして、株式会社サムライインキュベート Enterprise Groupの富樫です。

先日、代表の榊原が10周年の思いを書き綴っていましたが、今後Enterprise Groupからも様々な情報をお伝えしていこうと思っています。
ぜひお付き合いください!

Enterprise Groupとは簡単に言うと「事業会社とスタートアップをつなぎ、事業を加速させたり新しい事業を生み出すこと」を目的としたオープンイノベーションの企画・運営・実施や、新規事業創出のコンサルティングを行っています。

今回は日本郵便株式会社様(以下、日本郵便)と実施したオープンイノベーションプログラムについてお伝えしながら、企画・運営側であるサムライインキュベートの視点から、何をどう考え、プログラムを構築し、進めているのか、以下4つの観点からお伝えしたいと思っています。

1.プログラム概要と背景
2.取り組みのポイント
3.Demo Day当日、そして結果
4.Demo Day後の動きと今後

1.プログラム概要と背景

「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」と題し、日本郵便様にとって初となるオープンイノベーションプログラムは、2017年9月4日からスタートアップ企業の募集を開始し、2018年2月1日にDemo Dayを行いました。

9月から2月にかけての約半年間は、関わる全ての人がオープンイノベーションに真剣に取り組んだ期間だったと思います。

日本郵便 福田副社長と弊社代表 榊原の記者会見

このプログラムは、日本郵便様が保有する郵便・物流アセットやデータを提供し、日本郵便様とサムライインキュベートで設定したテーマに向け、独自の技術やサービスを持つスタートアップ企業と共に事業化を目指すものです。

物流業界ではECの進化による物流量増大や、人口減少による働き手減少、生活スタイル変容による配送・受け取りのニーズ多様化など、様々な課題が存在しています。

今回は日本郵便様が、スタートアップと組むことで既存事業における課題解決や新たな市場を生む取り組みを目指し、プログラムを実施しました。

課題解決のためにスタートアップと組む理由については、Demo Day冒頭に日本郵便 横山社長が語られた「自前主義だけでは、もう対応できない世の中になってきている」という言葉に集約されていました。

Demo Dayでの日本郵便 横山社長

2.取り組みのポイント

今回プログラムを構築するにあたり、日本郵便様サイドでは下記の前提がありました。

1.採択企業との事業化を目指す担当者は、複数事業部から招集
2.その担当者は必ずしも新規事業立ち上げ経験があるわけではない
3.スタートアップとの協業経験はない担当者がほとんど

これらはオープンイノベーションを検討する多くの企業とほぼ同じ状況かと思います。プログラムを成功させる為に、サムライインキュベートが大切にしていることとして「スタートアップと目線を合わせ、共にコミットして取り組めるか」があります。

今回のプログラムでは、ここを補完・強化する内容をプログラムに組み込みました。具体的には
・互いの方向性をすり合わせ、関係値構築を含んだキックオフ+α
・スタートアップとの協業におけるポイントのレクチャー
・事業立ち上げノウハウの共有レクチャー
等を行いました。

キックオフ当日の様子

また担当者自身にもスポットライトを当て自分事化してもらうことを意識し、随所に織り込んでいくことも日本郵便担当者と共に取り組みました。

プログラムをメインで進めている担当者が、社内の人たちを巻き込み、彼らが真剣に取り組んだ結果「どう社内で見えるか(評価されるか)」は、プログラムの雰囲気を良いものにして、高いモチベーションで担当者たちに取り組み続けてもらうためにも大事なポイントだと考えたからです。

プログラムの中でも特に印象的だったのがMAMORIO社の取り組みでした。

彼らが取り組もうとした、落とし物を持ち主に返すための新しい事業アイディアは、現在は法において想定されていないケースだったため、「実現が難しいのではないか」というところからプログラムが始まりました。

法律という簡単には乗り越えられない壁に対してMAMORIOの社員達は「こうすれば進められるのではないか」と何度となく試行錯誤を繰り返し、ときには省庁に相談に行きながら、とにかく“実現させるために”模索し、挑戦を続けていました。

結果的には実現に向けた落としどころを見事見つけることが出来ました。

その姿に日本郵便の担当者からも「諦めない姿勢に感心すると同時に学ばせてもらった」とおっしゃって頂きました。

3.Demo Day当日、そして結果

Demo Day当日は300人以上の観客・メディアが集まり、熱気ある最高のイベントになりました。

登壇したスタートアップは、105社という多くの応募の中から採択された下記4社の企業です。

1.株式会社Drone Future Aviation
2.
合同会社オプティマインド 
 ※現在、株式会社オプティマインド
3.
ecbo株式会社
4.
MAMORIO株式会社

各社、強い思いを込めた白熱したプレゼンを行いました。

袖から見守っていた私自身もとてもワクワクし、そして親心にも似たドキドキする気持ちになったのは、彼らの真剣な姿に魅せられたからでしょう。

オプティマインド社の松下氏
ecbo社の工藤氏
MAMORIO社の泉水氏
Drone Future Aviation社の波多野氏

選考の結果、見事受賞したのは下記の2社でした。

「最優秀賞」はオプティマインド社。

「人工知能(AI)を活用した配送業務の効率化」をテーマに、プログラム期間はルートの効率化や新人のレベルをベテランに近づけることに注力。今後はベテラン技のデータ取得や不在予測・最適訪問時刻などをAIが学習させることで、より高精度な配送業務の効率アップを目指します。

「観客賞」はMAMORIO社。

「より落し物が見つかる世界の実現」を目指し、郵便配達用二輪車に新開発の移動型 Gate Wayを取り付け、落し物に付けられている「MAMORIO」とのすれ違い時の反応をテストをするなどの取り組みを実施。今まで以上に「落し物が戻ってくる世界」を目指して邁進中。

※「MAMORIO」とは
 世界最小クラスの紛失防止タグ「MAMORIO」は、「MAMORIO」のそばを通過した別の利用者のスマートフォンや、駅や商業施設に設置された専用のアンテナMAMORIO Spotが「MAMORIO」から発信する電波を受信することで反応し、持ち主に発見場所の通知がされるサービスです。

4.Demo Day後の動きと今後

Demo Day後、今回の取り組みに関して様々なメディアを通じて反響はとても大きいものがありました。

課題も多く、注目度が高い物流業界において、その課題に正面から切り込む日本郵便様の取り組みについて、TVやWEBでのニュース記事などで多数紹介して頂きました。

おかげで本プログラムが認知され、多方面から話題に触れていただけることが多かったようにも感じます。

日本郵便様にも強い手応えを感じていただき、現在ではプログラム第二弾の話を一緒に進めているところです。

また、Demo Dayまで走って、あとは終息してしまうこともありがちなオープンイノベーションプログラムですが、このプログラムではDemo Day後にもしっかりした動きがありました。

ecbo社と進める荷物預かりサービスは、2月21日から渋谷郵便局を始めとする5郵便局、3月1日から26郵便局を加えてスタートしました。
http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2018/00_honsha/0219_01.html

またMAMORIO社とは、3月6日からMAMORIO Spot を活用した「お忘れ物自動通知サービス」を東京中央郵便局で開始しました。
http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2018/00_honsha/0306_01.html

2月1日から紛失防止 IoT デバイス「MAMORIO」の販売を東京中央郵便局など2局で先行販売し、3月6日から新たに12の郵便局にも拡大しています。

このスピード感でスタートアップとの取り組みを実現するというのは、なかなかできることではないかと思います。そしてなお現在も取り組みを進めており、日本郵便様の本気度がここからも感じられます。

日本郵便 事業開発推進室の皆さんと 一回目のプログラム事務局メンバー

最後に、私自身がオープンイノベーションの未来にかける想いを。

私はこの取り組みを
「日本産業における事業創造の在り方を変革し続けるもの」
として考えています。

スタートアップと大企業では、個社ごとに企業文化や進め方も異なり、「最適な組み方」を見つけ出すこと自体が大変難しい状況です。ただ、その難題を乗り越えた先には、これまでの自前主義のみでは生まれなかったかもしれない新規事業の「バリエーション」「数」「スピード感」「成長性」などが存在します。

弊社もオープンイノベーションの取り組み自体を毎回検証し、都度改善してレベルの高いものを追い求めていきます。この取り組みを通じて生まれた事業が日本社会、さらには世界をより良く変革することを目指しています。

それを実現するため、本気でイノベーションを起こしたい人や組織、そして国に、私自身も本気で伴走していきたいと思います。