《前編》MaaSってどういう意味?MaaSで変わる世界、生まれるサービス

はじめに

こんにちは、サムライインキュベートInvestment Groupの坪田と申します!

前回第2回Batch Programの紹介記事を発信させていただきましたが、今回は弊社6号ファンドの注目テーマである「MaaS」について前後編2回に分けて紹介させていただきます。

前編の当記事では、MaaSについて書籍や仕事で学んだことがないという方に向けて、「そもそもMaaSとはなんだ?」という基礎的な内容を事例も交えながら紹介させていただきます。その上で、MaaS社会が実現した時にどういう社会変革が起こるのか、という仮説も記載しています。

一方で、MaaSはまさに今注目を集めている領域であり、とても参考になる書籍やWeb記事も既に存在するため、技術的なことや専門的な内容はそれらにお譲りしようと考えています。

当社のコア・コンピタンスである”First Mover”であり続けるために、後編の次回記事では少し先の未来ですが、「MaaS社会が実現された時、世の中にどんなサービスが生まれるのか?」という予想を具体的に紹介しようと思います!

インターネットの中心がPCからスマートフォンに移行したことで各業界で既存とは異なる様々なサービスが生まれたように、MaaSが普及することで各業界において新たなサービスがきっと生まれるはずです。プレシード〜シード期に特化した投資支援活動を行う当社に所属する僕の予想が、これからの未来を作ろうとしている起業家・起業家の卵の方々にとって参考になれば幸いです。それでは、どうぞ!

<この記事で得られる情報>
・MaaSとはそもそも何なのか
・MaaSはどのように分類されるのか
・MaaS社会になればどんな世の中になるのか


そもそもMaaSとは

MaaS(マース)とは、以前の記事でも紹介しましたが「Mobility as a Service」の略で、国土交通研究政策所の資料によると”マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を 1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな『移動』の概念”というものです。
※フィンランドのWhim(ウィム)が事例として有名です!
※MaaS社会で生まれる周辺領域にも、個人的にとても興味を持っています。

ちなみに筆者は過度の方向音痴なので、個人的にもMaaSに期待しています

簡単にいうと、マイカーや自転車を所有しなくても、スマホ+1つのアプリから、目的地までの「最適なルート探索」「予約」「決済」まで全て完結し、自由で快適な移動がサービスとして受けられるというものです。

余談ですが、SaaS(Software as a Service)という言葉はMaaSよりも(特にスタートアップ業界では)普及していると思います。SaaSとはざっくりいうと、かつては利用者側に導入されていたようなソフトを、インターネットを介してサービスとして提供しているものです。(従来買い切り型で利用できたソフトを、必要な機能を必要な時だけ契約してインターネット上で使える、みたいなイメージです。)

MaaSに関しても(大枠は)同様なイメージで、今まで自動車を購入したり近場用には自転車を購入したり、電車は電車で/バスはバスで予約・支払いしていたところを、それらを統合することで、移動自体をサービス化して提供するといったものです。

まだ日本では消費者が受けられるサービスとしてMaaSが浸透しているわけではないと思うのでイメージしづらいかもしれません。しかし、実際には日本でも既に少しずつMaaS社会に向けて進んでいます。下の図をご覧ください。

これは、チャルマース大学(スウェーデン)の研究チームが提唱した、MaaSを統合度や機能面によって5段階に分類した図です。

レベル0は、ずばり「統合なし」です。

それぞれの事業者が、独立してモビリティサービスを提供しているような状態です。従って、この段階ではまだMaaSとは呼べないのかな、と思います。

レベル1は、「情報の統合」です。

さまざまな移動手段のルートや時刻表、所要時間といった情報が集約されていて、1箇所で探索できるような状態です。
こちらに関しては、Google MapやNAVITIME、Yahoo!乗換案内などを普段から利用している人も多いのではないでしょうか?
厳密にいうと、この段階では情報提供はできていますが、まだ移動自体をサービスとして提供できていないので、まだこの段階でもMaaSとは呼べないでしょう。
※上記サービス上で予約・手配や決済まで行えるようになれば別です!

レベル2は、「予約・支払いの統合」です。

この段階で様々な移動手段の予約・手配・支払いなどが1つのアプリ上で一括で行うことができるため、この段階からいよいよ移動をサービスとして提供してるといえるのではないでしょうか!
具体例としては、自動車メーカーであるダイムラー(ドイツ)の子会社の「moovel(ムーベル)」や、西日本鉄道とトヨタ自動車で運営している「my route(マイルート)」が該当するかと思います。
※my routeは、2018年11月から福岡市で実証実験を実施していて、akippaやメルチャリ、JapanTaxiなどと連携しています。

レベル3は、「サービス提供の統合」です。

この段階では、予約や決済だけでなく、料金体系など含めて顧客ニーズに合わせて最適化された、よりユーザー利便性の高いサービスの状態となります。
MaaSグローバル社(フィンランド)の「Whim(ウィム)」がこの段階に該当します。

都度払いももちろんありますが、月額制のいわゆるサブスクリプションで各種交通機関が乗り放題になり、レンタカーやシェアサイクル、タクシーも月額制で乗り放題になります!(タクシーは一定距離以内)

僕も昔はレンタルショップでDVDやCDを個別に借りていたのですが、今ではすっかりSpotifyやNetflixといったサブスクリプションサービスで、視聴したいものを好きな時に好きなだけ楽しむようになりました。感覚的には、移動も同じように個人が自由に料金を気にせず利用できるような形に近いのかな、と思います。

参照:Whim公式HP(https://whimapp.com/

レベル4は、「政策の統合」です。

レベル3までで個人の移動最適化が実現されたあと、統合された移動データや交通制御から都市全体を最適化するという、もはや移動だけでなく生活自体が最適化された状態だと言われています。

マイカーが普及し、各交通機関がそれぞれサービスを提供している状態を前提とした既存の街づくりから、情報革命・移動革命だからこそできる新たな街・空間づくりを行うのがこの段階ではないかと考えています。

実は、まだレベル4の段階にあるサービスは存在しないと考えられています。

しかし、ロサンゼルスでは2019年末〜2020年初めにかけて、前述のレベル3に該当するサービスを提供し、レベル4への取り組みを開始すると言われています。

LAメトロで利用されている交通ICカード「TAP」には既に25の公共交通機関が連携していて、さらにシェアバイクや乗り合いなど民間の移動サービスとも連携し、その上ユーザーにとって利便性の高いレベル3のアプリを提供することで、都市交通に関する膨大で詳細なデータが蓄積されることになります。

そのデータをもとにヒト・モノの流れをコントロールし、渋滞を緩和するための効果的なインフラ投資/整備などに役立てる考えです。

移動手段が多様化し、効率化されれば、街中を走る車は減少するため渋滞は今より緩和され、また環境や安心・安全にも貢献できるのではないでしょうか。

また、例えば今まで駐車スペースとして使われていた空間も、その必要性が薄まることで別サービスを提供する場所に生まれ変わったり、あるいはそこに住む人々の居住空間として使われることで、より豊かなライフスタイルの実現に近付くのではないかと考えています。

長くなりましたが、以上がMaaSの大枠の説明です。

※MaaSという概念自体が使われ始めたのは2014年頃の論文がきっかけだと言われていますが、この辺りの歴史はまた別の機会で紹介させていただければと思います!


MaaS社会になればどんな世の中になるのか

前述した通り、MaaS社会が(特にレベル4まで)実現すれば、移動はさらに便利で自由なものとなり、また自動運転の普及も伴って、移動中に出来ることはかなり拡がると思います。

これは将来の話なので仮説ですが、具体的には下記のような3つの変化が生まれると考えています。

①(これまで)交通機関は全体最適化されているため、利便性の高い地域に人口が集まり、さらに人口集中が加速する

→(これから)移動が個人に最適化されるため、これまで利便性が高くないとされていた地域の生活利便性が向上する。そのため、一極集中が緩和され地方が活性化する

②(これまで)マイカー所有が多く、自宅にも移動先にも駐車スペースが必要だった

→(これから)移動手段はサービスとして提供されるため、マイカー保有は減り、元来駐車スペースとして利用されていた場所で別サービスが提供される

③(これまで)マイカーでは運転に集中する必要があり、また交通機関も公共性が高く全体最適化されているため、基本的には移動自体がシンプルに提供されている

→(これから)移動中に新たな可処分時間が生まれ、また共通目的やニーズを持った人を集めたり個人に最適化した移動手段が提供できるため、「移動+○○○」という新たなサービス体験が生まれる


僕がなぜMaaSに注目しているのか

僕は学生の頃から利用者としてインターネットが好き(特にモバイル)で、働いてからはずっとインターネットに関わる仕事をしています。

なぜ好きかというと、インターネットを中心とした情報革命により、様々な産業のあり方にも影響を与えたと思っているからです。インターネットでいつでも簡単に情報を取得できるから、味の安定しているチェーン店よりもレビュー評価の高い地元のお店に行ったり、旅行者はただ享受する存在から発信者にもなったため、いかに他者から「いいね!」をもらえるかが行き先の選択軸になっている人もいます。動画サイトへの投稿がキッカケでプロデビューしたアーティストもいます。

情報革命にもMaaSによる移動革命にも使われているこの「革命」という言葉がふと気になり調べてみると、「被支配階級が時の支配階級を倒して政治権力を握り、政治・経済・社会体制を根本的に変革すること。」と記載されています。(出典:デジタル大辞泉)

専門家には(もしかしたら)怒られるかもしれませんが、僕はこれをまとめると「民主化」だと捉えています。

地元の人しか知らなかった口コミを誰でも入手することができたり、今までは知名度や発信手段を持っている人しかできなかった発信という行為も民主化された結果、新たなサービスやニーズが生まれました。

移動が民主化すれば、つまり今まで都心部でしか受けられなかった体験や利便性がどこでも受け取ることができれば、様々な理由により移動が困難な方々に対しても最適なサービスを提供できれば、きっとインターネットが与えた影響のように大きく世界を変えることができるのではないでしょうか。

そんな、MaaSだったりMaaS社会に生まれる新たなサービスを、僕はサムライインキュベートの活動を通して応援したいと思っています。


さいごに

最後にですが、MaaSについてインプットしたい方に向けて僕が実際に参考にさせていただいたオススメの書籍・雑誌を紹介いたします。(今回の記事を書く上でも、非常に勉強させていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。)

・MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ
(日高 洋祐 (著), 牧村 和彦 (著), 井上 岳一 (著), 井上 佳三 (著))
https://www.amazon.co.jp/dp/4296100076/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_hKr5CbYRV4RCS

・日経ビジネス 移動革命MaaS 2019年4月29日・5月6日号
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/mokuji/00016/

また、その他オススメの書籍などご存知の方がいましたら、ぜひ教えていただけると幸いです!
今回の記事は以上です!最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

後編では具体的な事業案を記載しますが、正直にいうとそれが必ず正解になるとは考えていません。「それよりこんな事業の方が良い」「その事業と同じ仕組みで、この業界にも適用できるのでは?」という具合に、議論が活性化するタネになって欲しいと思っています。

そうする事で市場自体が盛り上がり、より多くの事業が生まれ、生活が豊かになる。そんなサイクルに少しでも貢献出来れば幸いです!


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