猿神退治

むかし、旅の僧がある村にさしかかりました。しかし村には活気がありません。そこで僧は、ピタリと閉じられた戸板を叩き、顔を見せた村人に訳を聞きました。

話によると、毎月、娘がいる家に文がくくられた白羽の矢が立ち、指定のガジェットを人柱に購入して娘と共に神様に差し出さないと、田畑が荒らされてしまうというのです。しかも今夜、その人柱が送られるというではありませんか。

「そんな馬鹿な神様があるものか…」

そう考えた僧は、夕方、教えられた社の床下にもぐり、
真相を見極めようとしました。

夜更け、暗闇にじっと目を凝らしながら僧が待っていると、ビデオ用マイクの包みを抱えた、若い娘が社にやってきました。しばらくすると

「今宵今晩この事は、散財太郎に知らせるな」
「北米、SF、YouTuber、散財太郎に知らせるな」

と歌いながら、大きな狒々のような怪物が三匹、現れました。

怪物は、震える娘の手からマイクを奪うと、動作テストを始めます。

「うーん、このカメラだとノイズが出るな」
「GoPro向けらしいけど?」
「サイズは良さげだけどね」

動作テストが終わると、怪物達は娘の撮影会を始めました。
厳しいポージング要求と気持ち悪さで、娘は失神してしまいます。

一部始終を見た僧は「あれは神様などでは無い」
と村人に告げ、怪物達が恐れる ”散財太郎”とやらを
探すことにしました。

散財太郎はネット検索であっさり見つかりました。
SF在住で、毎日投稿される散歩のPOV動画チャンネルが
人気のYouTuberでした。

さっそく僧は自分のTwitterアカウントからDMで連絡を取ると、
「来月出張もあるし、困っているなら」
と快い返事を散財太郎からもらいました。

約束の日、僧が空港に散財太郎を迎え行くと、現れたのは、首輪にジンバルとGoProをマウントした小型犬でした。

確かに(妙にローアングルのPOV映像だな…)とは思っていましたが、僧は、まさか犬が来るとは考えていなかったので、多少動揺しつつも散財太郎を村へと案内しました。そして、村人達に散財太郎を紹介し、今月人柱として送られる娘と一緒に、怪物の現れる社へ向うことになりました。

夜更け、再び怪物達が現れました。しかし散財太郎は落ち着いて、
怪物達に向かって話し始めます。

「君たちGH4使ってるの?良いカメラだよね(中略)最近、GH5がしくっり来なくてT-X2買ってさ〜(中略)編集?ゲーミングPC3台は必要(中略)それで、結局ジンバル3台買うことになって(中略)あ!Win MRは予約したよ、紐付きとはいえ$300は格安だよね 」

散財太郎がドヤる度、怪物達の顔が引きつります。
そして「こ、こいつ!散財太郎だ!」
と一匹が叫んだかと思うと、一斉に散財太郎に襲いかかりました。
しかし次の瞬間、秘めた野生を解放した散財太郎は、たちまち
怪物達を噛み殺してしまいました。

夜明け、様子を見に来た村人達が目にしたのは、
年老いた三匹の猿の死骸でした。
散財太郎の姿は既になく、僧の話によれば
「動画の編集があるから」と宿に引き上げた後でした。

この夜の出来事は、散財太郎により、その日の内に編集・投稿され、
長期間に渡り相当数のviewを稼いだそうです。

(2017.05.16)

#散財力の高い童話

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