Courseraで言語学を勉強する

ライデン大学の言語学の講義の受講をすすめるメールをCourseraから受け取った。

学問としての言語学に関心をもったのは高校英語の基礎文法の学習が終わろうかという頃だった。初めて読んだ本は風間喜代三氏の『印欧語の故郷を探る』で、大学に入った直後にはいくつか講義を受講した。理工系だった自分は教養課程への興味が継続せず、結果的に理工系以外の単位の全てが言語か言語学に関するものになった。その後は長らくご無沙汰だった。

スタンフォードの機械学習のコースは一度挫折してしまったが、こちらはおそらく数学やプログラミングで消耗することはない。あるとしたら英語の壁くらいだ。この講義は毎週期限つきの課題があり、怠惰な性格にはちょうどよい。(後から分かったことだが、学期は頻繁にあっていつでも切り替えることができるようなので、この期限を守るかどうかは結局自分しだいだ)

ということで気軽に始めることにした。このコースは始めるだけなら無料だ。Certificateは有料だが、受講前に払わないといけないコースに比べれば敷居は低い。

ライデン大学とオランダ

ライデン大学はオランダにある。先日は鳥の文法認識に関する研究が少し話題になった。実はヨーロッパを旅行した時に、勤務されていた日本人の方を一度訪れたことがある。そうでなければ最初のメールは目にとまらなかったかもしれない。訪ねた方は日本語教育に関するお仕事だったと思う。 ひょっとしたらそんな親近感も継続を助けたかもしれない。

余談だがオランダといえば日本国籍者への最恵国待遇が消滅するという残念なお知らせがあった。おいしい話というのはそうそうないが、また行ってみたいものだ。オランダ語もできるとなお楽しいだろうが、面白いことにIntegral Dutch Courseという出所不明の教材が古くからインターネットに散在していて、元祖怪文書という感がある。

内容

肝心の内容は以下のようになっている。

  • 第1週: 言語の多様性、言語学的に見た動物と人間の対比、世界の言語に関するオンライン百科であるEthnologueの使い方、いくつかの言語のインフォーマントの紹介。
  • 第2週: 音の単位を扱う分野である音韻論と音声学、言語の原子としての素性、音の歴史的変化、音素数の世界的な分布などについて。
  • 第3週: 語と文を扱う分野である形態論と統辞論について、とくに統辞論の権威であるチョムスキーへのインタビューなど。
  • 第4週: 意味の世界を扱う分野である語用論と意味論、言語行為論、グライスの公理、子供の言語学習過程、比較的近い言語である英語とオランダ語の前置詞の比較など。
  • 第5週: 言語を扱う脳機能や文字の認識、失語、言い間違い、外国語アクセント症候群などの現象について。
  • 第6週: 社会における言語の位置づけについて。とくに日本語の敬語のような敬意を表現するシステム、face theoryについて。

教授や学生たちの会話を聞いたあと、選択式の試験を受ける。Coursera外の指定の資料も読むことになる。

インフォーマント

具体的な言語の例は当然いろいろでてくるが、実際の話者が話してくれるのは以下の言語である。

  • Mandarin: 中国の公用語。
  • Abruzzese: Ethnologueにおいてはイタリア語の方言とされるが、独立の言語とみなす立場もある。
  • Tarifit Berber: モロッコで話される言語の一つ。
  • Basque: バスク語。スペインやフランスで話されるが他の言語と系統的関係にない言語。
  • Turkish: トルコ語。
  • Gungbe: アフリカのベニンで話される言語の一つ。

未知の言語のインフォーマントの発話を聞きながら音素のセットや文法的特徴(文型、語順、接辞など)を確認する課題はパズル的な楽しさがある。

おわりに

全体として様々なトピックへの関心を体系的に刺激してくれる入門コースだった。最終試験はそれほど難しくなかったが、実際に最後までやってみると達成感があった。Certificateは結局購入したが、これはLinedInプロフィールに埋め込むことができる。気が向いたらコンピュータサイエンス系の他のコースもやってみようかと思っている。