Scalar DBを基盤に据えたシステムで、30分間電力使用量データの取得・集計・分析作業効率化および高度化を実現

Scalar, Inc.
Feb 18 · 9 min read

電力の小売全面自由化に伴い、電気を新たに自社商品として販売したい事業者に「電力小売プラットフォーム」を構築・提供している株式会社イーネットワークシステムズ。ビジネスの急激な成長に伴い運用のシステム化が求められるなか、データ量の膨大さや業界特有の仕様が障壁となっていました。そのソリューションとしてイーネットワークシステムズが選定したのは、株式会社Scalarが提供する分散データベース、Scalar DBです。

当記事では、Scalar DB導入に至る背景と実運用の変化、そして展望について、イーネットワークシステムズ取締役である大澤哲也氏、ICT推進室長 沼田大介氏、CSグループ 鶴岡裕樹氏にお話を伺いました(聞き手:深津航 株式会社Scalar代表取締役CEO兼COO)。

2020年度中には10万件へ。急速に成長する電力小売プラットフォーム

イーネットワークシステムズが電力小売事業者等、電気事業参入事業者(以下、「電力小売事業者等」)を対象とした「電力小売プラットフォーム」の提供を開始したのは2016年4月。電力小売の全面自由化がスタートしたタイミングだ。そのビジネスモデルはB2B2Cと表現できる。イーネットワークシステムズ自体は消費者へ直接電力販売を行わず、電力小売事業者等が小売を行うためのプラットフォームをOEMで提供する。その特長は、それぞれの電力小売事業者等が自社のサービスに「電力小売」を組み込むためのコストが不要であること。イニシャル、ランニングともにゼロコストのレベニューシェアモデルにより、「消費者が低廉で多様な電気サービスを選択できるようにする」という電力小売自由化の目的を社会に実装するプラットフォームといえる。

「模索とともに進んできた」と語るのは、ビジネスの企画推進を行ってきた大澤氏だ。「私たちのビジネスは、電力小売事業者等との提携及び協業によって拡大していきます。創業当初は需要家の伸びが限定的でしたが、現在では約5万件にスケールし、2020年度中には10万件が見えている。急速なスケールの拡大が予想されています」(大澤氏)。

(株)イーネットワークシステムズ大澤取締役

電力小売事業を行うためには、法制度から、規定、義務や仕様にいたる理解と実運用のノウハウ、そしてスキルが必要となる。一例として、電気小売事業者には電力の需要と供給を30分単位で一致させる同時同量の責任がある。需要側のベースとなるのが需要家のスマートメーター指示数から算出される30分間の使用電力量(30分間電力使用量データ、いわゆる「30分値」)だ。電力会社は、そのデータに基づき法定帳票の作成業務を行わなければならない。

約件数の急激な増加は、それまで人の手で行っていた30分値データの取得、集計及びレポーティング作業の運用業務に大きな負荷をかけようとしていた。スマートメーターから30分刻みで収集されるデータは、需要家1世帯あたり1日48レコード、月にして1,440(30日計算)、そして1年では17,520レコードにもなる。月次のレポーティングについて、需要家1万件程度までは手作業で集計してExcelで対応していたが、限界は目前だった。「将来的に数十万件という数字が視界に入った状況では、RDBMSに収めることも困難と判断しました」(大澤氏)。そのソリューションとして採用されたのがScalar DBだった。

膨大かつ複雑な法定帳票の作成に必要となる月間使用電力量の確定値を算出するために、電力小売事業者は東京電力パワーグリッドや東北電力といった一般送配電事業者が保有する託送関連データ提供システムのサーバにアクセスし、該当するファイルをダウンロードする。現在日本には10の電力供給区域があるが、イーネットワークシステムズでは沖縄を除いた9つの供給区域にてサービスを提供しているため、それぞれのシステムからファイルを見つけてダウンロードする必要がある。

また、ダウンロードするファイルはXML(Extensible Markup Language)の形式で作成されており、データが冗長で、レコード数が多いためExcelで扱うには分割して展開する必要があったと、実運用に携わる鶴岡氏は説明する。そのデータを、イーネットワークシステムズが保持する顧客マスターに紐付けて行くのだが、鶴岡氏によれば問題点が更に発生する。ひとつは託送関連データ提供システムから提供されるデータが各社ごとに若干仕様が異なっているため、その取りまとめの部分。もうひとつは補正データの存在だ。数字の読み違いや需要家の入居日の変更などで生じた補正をマスターに上書き更新する必要がある。また、ファイル名が異なっていながら内容が重複しているケースもあり、それらの精査も行わなければならないことがあるという。託送関連データ提供システム自体が突貫で構築され、アドホックに追加設計が行われたことに起因しているといわれる。

上記作業には、かなりの時間を費やさねばならなかったうえ、手作業で活用できるのは月間確定値のみ。30分値の速報値についてシステム導入前は取り扱うことができず、捨てざるを得なかった。なデータ処理が生じていた。

構築はわずか4ヶ月。Scalar DBがもたらした変化

Scalar DBを採用し、30分値データの格納システムを構築した結果について、「既存の運用方法から大きく変わらずに移行できている結果、作業にかかる時間は圧倒的に削減できている」(鶴岡氏)。体感では5分の1程度に負荷が軽減された作業もあるという。各地域の託送関連データ提供システムから個々のファイルごとにダウンロードせざるを得なかった状況も、抽出条件で絞って一度でダウンロードを行い、展開までが可能となった。人の手では困難だった30分の速報値に関してもシステム側で格納が実現している。

(株)イーネットワークシステムズ鶴岡主任

XML形式の変換や補正データの上書き、また顧客マスターの増加など、難易度の高いシステム要件ではあったが、電力業界に対する知見や業界固有データの質的理解をベースに、採用から実運用フェーズまで4ヶ月で構築、コストも従来の大手システム開発会社と比べれば非常に小さい数字で収めることができた。

懸念事項であったシステムのサイジングも、Scalar DBはクラウドの分散データベースゆえスケーラビリティは担保されており、また30分値の都度格納に対しても、システムが停止した場合リカバリに甚大な工数が発生するため、システム自体が堅牢で落ちないということも重要だった。その点でも、Scalar DBは要件を満たしている。なお、構築にあたってはScalar社と提携している、株式会社クロスキャットが行った。

データの蓄積から分析の基盤が整った

イーネットワークシステムズがScalar DBを導入し、システム化とデータの蓄積を図った理由は3つあった。まずは上述した業務負荷及びコストの軽減、2つ目は格納したデータに基づいた電力使用実態(ロードカーブ)の分析・検証、そして3つ目はデータを基にした新しいサービスの開発である。

システム化によってデータの蓄積と分析を行うことで需要側の顧客やチャネル属性が判別されると、これまでイーネットワークシステムズとして検証しきれていなかった昼夜のロードカーブを踏まえたプランニングが可能となる。現段階ですでに需給に基づくプランを持ち合わせている大手の各電力会社に対して、イーネットワークシステムズ独自の時間別プランを持つという、非常に重要な意味を持つと大澤氏は語る。

ICT推進室長である沼田氏は、「ようやくスタート地点に立てた」と息巻く。これまで月間確定値を使って法定帳票等を作成していただけだったものが、今後は速報値を含めてデータ分析に活用することが現実味を帯びてきた。例えば速報値に対して属性データや国勢調査データ、エリアごとのセグメントデータ等を当てることで、新しいサービスの萌芽が生まれるかもしれない。

(株)イーネットワークシステムズ沼田ICT推進室長

「ビッグデータを基に複数軸で分析を行える状況を整える。仮説検証から深いデータ分析、そして新サービス開発に展開する。分析チーム単体をつくるというよりは、ビジネスの理解のもとに高速でPDCAを回すチームをまずはつくりたいと考えています」(沼田氏)。

「今まさにテクノロジーが入る瞬間の岐路に立つ業界」。電力業界を大澤氏はそう表現して続ける。「発電から供給までのトレーサビリティをどう取るか、30分間電力使用量の速報値をどう格納するか、いわゆるエネルギーテックの文脈で戦略の絵を描くことができ、同時に現実に生じているファイルフォーマットを理解し、細やかなオペレーションまで落とし込むことができる。電力会社が組むパートナーとして、その知見と技術力を鑑みてScalarは唯一無二の存在と言えるかもしれませんね」。

左から沼田氏・鶴岡氏・大澤氏

本件に関するお問い合わせはこちら

株式会社イーネットワークシステムズについて
代表取締役:及川 浩
2015 年 4 月設立。小売電気事業者のイーネットワークシステムズ(ENS)は、「イニシャルコスト0(ゼロ)での電力事業参入」を可能とする電力小売の OEM プラットフォームを運営。提携事業者を経由して電力をお客様に販売しています。創業 80 年の老舗 LP ガス事業者の三ッ輪産業株式会社(関東地方に直売・卸合わせて約 20 万の 顧客基盤を保有)のグループ会社。
HP:http://www.enetsystems.co.jp/

株式会社Scalarについて
代表取締役CEO兼COO:深津航
代表取締役CEO兼CTO:山田浩之
設立:2017年12月
事業内容:分散型台帳ソフトウェアの研究開発及び提供
URL : https://scalar-labs.com/
Github: https://github.com/scalar-labs

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