新・観光立国論

イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」

先日の「本棚は人を表す」の一言に端を発した私の公開本棚。今回はデービッド・アトキンソンの「新・観光立国論」。仕事でホテルやレストランなど、海外旅行者がターゲットになる案件が続いたので勉強として読んでみたのだけど、めちゃくちゃ面白かった。

正直なところ、統計&リサーチ多めな書籍は苦手なのだけど、この本は、データに交えて、デービド・アトキンソンさんの率直でユーモアのある見解がもり込まれていて比較的読みやすい。


観光立国としての日本

主なトピックスは「GDPと人口が頭打ちになりつつある日本はこれからどう成長するべきか」というもの。打開策として「観光」を軸に短期移民(=海外旅行者) を増やして観光立国として施策を整えるにはどうすれば良いかという視点から展開される。特に関心のあった章は、

  • なぜ短期移民が必要なのか
  • 「観光資源」として内を発信するか
  • 観光立国のためのマーケティングとロジスティクス
  • 観光立国のためのコンテンツ

の4つ。このあたりに「国外の旅行者が本当に求めているものはなにか」という内容が端的にまとまっているので、これから日本の観光や文化を仕事にしていきたい人 (もちろんすでに関わっている人) にもおすすめ。ざっと目を通しておくだけでも学びが多そう。


印象に残った一節

客を「おもてなし」するのであれば、まずは相手が何を考えて、どういうことを求めているのかを考えなくてはいけません。直接彼らの声に耳を傾けた上で「おもてなし」をすればいいのに、「聞く」というプロセスを飛ばして、「相手はこうだろう」と思い込み、自分の都合のいいように解釈した「おもてなし」をおしつけているのではないでしょうか。

そもそも「何が良いもてなしか」は議論があるところだと思いつつ、根本を突き詰めていくと、個人的には「自分の欲求」を「的確に満たす」対応をすることだと思う。日本人同士ならさほど難しくないことだけど、国外の人々を「おもてなし」するというのはうまく行かないケースも多そう。当然アメリカ、ヨーロッパ、中近東、アジア・・それぞれ地域に根付いた文化や生活様式があるし、その中でも国や地方によって細かく違ってくるものだ。実際「海外の旅行者向けの対応を・・」というケースは結構多いと思うのだけど、どこからくる人がいて・どのような文化を持っていて・どのような欲求があって・何が的確なのか。もう一段細かくセグメントを分ける必要があるのだなぁと考えさせられる。

繰り返しになりますが、どんなに外国人観光客から熱烈に支持され、愛されても、それだけでは観光大国にはなれません。その国が有する観光資源を最大限評価してくれる外国人観光客がいて、初めて観光大国になることができるのです。

上の一節にも通じる顧客策定とコンテンツに関するトピックス。少しドライな言い方だけど、漠然と楽しんでもらうだけでは収益化は難しい。どんな層を良い顧客として迎え、何を/どうやって/どのくらいの期間楽しんでもらうかというゴール設定はものすごく大事。本書では各国の人口とGDPと旅行期間をベースにヨーロッパ諸国について言及していたけど、近隣アジアにも優良顧客はいると思う。文化と目的の異なる人々を多様性として理解して、どのようにコンテンツとインフラを整えていくかというのは、デザイン的な視点からもアプローチできそう。


文章が長くなたのでここで書き止めるのだけど、中盤にある観光立国の4条件(気候・自然・文化・食事)の周辺や、後半の文化財とそのガイディングについても面白い。興味のある人はぜひ読んでみてください。

One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.