「教えあう」という学び方

Kenji Nakamura
SD-LAB
Published in
5 min readMar 13, 2017

カンボジア企業の人材育成で実践してみた

僕がカンボジアで、人材育成について相談を受けたり、研修をする時に大切にしていることがあります。それは、人々に学ぶ楽しさを知ってもらい、自らの学ぶ力に気づいてもらい、そして、学ぶ力を伸ばしてもらうことです。

ノウハウを学ぶことは即効性がある(ような気がする)ので、とても人気があります。でも、それを自社に応用するには、ベースとして、考える力、学ぶ力が必要です。また、学ぶ力がないと常に誰かが考えたノウハウに頼らなければいけませんが、学ぶ力があると自分でノウハウそのものを作ることができます。

では、どうやって学ぶ力を伸ばすことができるのか?

まず下の図をご覧ください。

ラーニングピラミッド

これはラーニングピラミッドといって、どんな学び方が人の学習定着率に影響するのかを示したものです。ここでは、一方通行の講義(レクチャー)がもっとも学習定着率が低いですね。学校教育の多くがここですが・・・。

逆に、グループでの議論や、実践を通して学ぶ、人に教えることで学ぶ、といった参加型の学び方は、学習定着率がとても高いです。僕のワークショップの時間の90%以上はこうしたワークを通して、学んでもらいます。(僕がいつもこうした理論や実践を学ばせてもらっている研究機関はコチラ

そこで、先日、シェムリアップの若手起業家協会で、ワークショップをさせてもらった時に、特に学習定着率が最も高い「人に教える」というワークをテストしてみました。

グループワークの後はいつも誰かに発表してもらうので、それだけでも「人に教える」になるわけですが、もっとわかりやすく、直接グループ間で教えあってもらいました。

カンボジア人は話をするのが大好きだし、優しい人が多いので機能するんじゃないかと思って。(まあ、どの国の人も優しいですけどね)

その結果・・・

大大大成功でした。

ここから場の空気が変わり、みんなが学ぶことを楽しみだしました。チームで学ぶ意識がめばえ、それぞれが助け合いだしました。発展途上国ではチームで働くことが苦手な人が多いので、この体験そのものがとても貴重です。アンケートを見ても、あのワークが一番学びになったと書かれていました。

僕が思うに、人に教えるという学び方は、下記の効果があったのかなと。

  1. 人に教えるつもりで学ぶことで、より深く学ぶことができる。
  2. 人に教える瞬間に、自分の理解を確認できる(分からないことが、わかる)
  3. 学ぶ喜びが得られる

もちろん、これを実践するためには、リラックスしてなんでも言える雰囲気づくりや、事前の講座設計、当日のファシリテーターのあり方など、作るべきことはたくさんあります。

この手法は、まだまだ始めたばかりなので、もっと学んで、実践して、改善していかないといけません。そこで、スタッフ教育の相談にのっているクライアントとの打ち合わせでこれをやってみました。

まず、クライアントである経営者の悩みはこうです。

「業務を拡大するこの時期にこそ、きちんと業務がスムーズに流れる仕組みを作らないといけない。だけど、それをみんながやりたがらない。何度も説明してるんだけど・・・」

そこで、クライアントだけでなく、マネージャーやその他の責任者も打ち合わせに参加してもらいました。そして、いつもやっているような経営者からの一方通行の説明はやめてもらった上で、相談内容を即席でワークにして、チーム内で教えあってもらいました

これまでも、その相談内容について、経営者が重要性とやり方をマネージャーたちに説明してきたのですが、一向に状況は変わりませんでした。しかし、今日のワークの後は、参加していた人全員が、相談内容の重要性とやり方を理解していました。

自分で考えて、教えあって、導き出した内容なので、みんながそのアイデアにオーナーシップを持ってくれました。すごく荒削りな即席ワークでもこんなに効果があるんだと、正直僕は驚きました。

僕と同じようにその結果に驚いた、クライアントの経営者が僕にこう言いました。

「自分も、将来、けんじのようにみんなの力を引き出す仕事をしてみたい。」

はい、正直、めちゃくちゃ嬉しかったです。同時に、そう思ってくれた彼の想いを無駄にしないよう、もっともっと改善して、この国の人たちに役立ちたいと思います。

以上、思い切り手応えを感じた実践報告でした。

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