NGOがソーシャルビジネスとして運営するカンボジア地鶏の養鶏場が、将来のカンボジアの農村の人々に与えるインパクト

Kenji Nakamura
SD-LAB
Published in
8 min readJul 30, 2016

シェムリアップ郊外のゴミ山で働く人たち

カンボジア、アンコールワットがある街、シェムリアップの郊外にゴミ山があります。街で出た、分別されていない膨大なゴミがここにやってきます。灼熱の気候にあって、ゴミ山はいつも異臭を放っています。このゴミ山には、ビンやアルミ缶など、お金になるものを拾って生計を立てる人たちがいます。

ここに住む人もいれば、近くの家からゴミを拾いに来る人、遠くから現金収入を求めてやってくる人もいるとのことです。

もちろん、劣悪な衛生状況のため、人間が健康的に生活したり働いたりできる環境とは言えません。ただ、ここでは、ゴミ山の是非を問うことはしません。というか、できません。

「こんな環境、かわいそう。どうにかしてあげなくちゃ」

という気持ちになるのは人間として自然な感情かもしれません。ただ、ここの人たちは、ゴミ(再利用できる資源)を拾い、現金収入を得て、必死で生きています。人の人生、外から見てとやかく言えるほどシンプルじゃない、それぞれの事情を抱えて生きている、といつも思っています。

この状況で、外部の人間としての僕たちができることの1つは、仕事の選択肢を作ることです。他にも選べる仕事がある、その上でどちらを選択するかはその人次第というスタンスです。

僕は今、ラーニングファシリテーターとして、国際協力につながるビジネスや学習を創出、サポートさせてもらっています。その中の1つとして、ゴミ山周辺に住む人たちへの雇用の創出を行っているNGOでお仕事させてもらっています。

では、どうやって雇用を創出するのか?

それが、カンボジア地鶏の養鶏場です。

カンボジア地鶏の養鶏場なのか?

この養鶏場は、DANA AsiaというNGOが、ソーシャルビジネスの手法によって運営しています。

ソーシャルビジネスの定義はいろいろありますが、ここでは、マイクロファイナンスでノーベル平和賞を受賞したモハメド・ユヌス博士が提唱するソーシャルビジネスのコンセプトが用いられています。参考までに記載しておきます。

1. グラミン・ソーシャル・ビジネスの目的は、利益の最大化ではなく、人々や社会を脅かす貧困、教育、健康、技術、環境といった問題を解決することです。2. 財務的、経済的な持続可能性を実現します。3. 投資家は、投資額を回収します。しかし、それを上回る配当は還元されません。4. 投資の元本の回収以降に生じた利益は、グラミン・ソーシャル・ビジネスの普及とよりよい実施のために使われます。5. 環境へ配慮します。6. 雇用者は良い労働条件で給料を得ることができます。7. ・・・楽しみながら。ユヌス&ユース ソーシャルビジネス デザインコンテストより引用

このコンセプトに加え、僕がこのプロジェクトに希望を感じたのは以下の3つです。(お仕事を受けさせてもらった理由でもあります)

1、カンボジア人が大好きなものを生産する

2、スキルを覚えたスタッフが自宅でもできる

3、将来的に全国にインパクトを与えることができる

それぞれについて簡単に説明します。

1、カンボジア人が大好きなものを生産する

カンボジア人は、モアンクマエという地鶏が大好きです。現在、カンボジアではタイのCPという会社が作るブロイラーが広く出回っています。効率良く生産されたこの鶏は価格が安いため、通常はこの鶏を買う人が多いです。一方、モアンクマエは育てるのが難しく、価格が2倍ぐらいします。

でも、多くのカンボジア人が、もしお金があるならモアンクマエを買いたいと言います。実際、結婚式やお正月などのお祝いの時は、モアンクマエを買うそうです。

カンボジア人が大好きなものを、カンボジア人が生産、販売する。これによって、過度に外国に依存しなくても良いビジネスになります。地域で安定的に経済がまわるようになります。作り手は、消費者の喜びをより身近に感じて誇りをもちやすくなると考えています。

カンボジア名物、地鶏の焼き鳥&丸焼き

2、スキルを覚えたスタッフが自宅でもできる

カンボジアの農村部では、収入や食事の足しになるよう、鶏を放し飼いにしていることがよくあります。ここの仕事を通じて、養鶏の基本的な知識やスキルを身につけたスタッフは、自宅でも小規模の養鶏をすることができるようになります。これによって、スタッフは自らの力で副収入を得ることができるようになります。

3、将来的に全国にインパクトを与えることができる

上でお話ししたように、カンボジアの農村部では自宅で鶏を放し飼いで育てている家庭がたくさんあります。カンボジアの郊外を訪れたことがある人なら一度はその光景を見たことがあるのではないでしょうか?

でも、僕もこの仕事をして初めて知ったのですが、鶏を育てるのってなかなか難しいんですよね。卵や鶏の温度管理、えさの内容、きれいな水や衛生管理など、ただ放し飼いにしてたら勝手にみんながすくすく育ってくれるわけではないようです。

そこでこの養鶏場では、ビジネスが安定してきたら本格的に養鶏のトレーニングプログラムを開始します。主にカンボジアで活動をするNGO向けにトレーニングプログラムを提供することで、その先にいるカンボジアの人たちが養鶏で追加の収入を得ることができます。しかもその鶏はカンボジアの人たちが大好きなもの・・・

これをイメージすると僕はとてもワクワクします。

試行錯誤の連続を経て

2015年8月から、僕はこの養鶏場で、マーケティングやマネジメント、ファンドレイジングなどいろいろやらせてもらっています。僕が関わりだしてからも課題や困難はたくさんありますが、その前にもたくさんの試練を乗り越えてきました。

生き物なので病気が広がることもありますし、設備投資にも多額のお金が必要でした。カンボジアの郊外では電気が安定しないため、インキュベーター(孵化器)も頻繁に故障してきました。エサやワクチンも試行錯誤を重ねてきました。

しかし、多くの試練を乗り越えて、もうすぐ安定供給できるようになりそうです(2016年10月現在)。ありがたいことに、すでに購入を希望してくれているレストランがたくさんあり、安定供給をお待ちいただいています。

何より、ここで働くスタッフ(ゴミ山で働いていた人や、周辺住民)が養鶏のスキルを身につけ、責任と誇りを持って仕事に取り組んでいるのがとても嬉しいです。生き物を扱っているので、一切気は抜けませんが、これからも、スタッフとともに前進していこうと思います。

こうやって責任、誇り、やりがいをもって働く人が増える。その人たちが提供する価値が顧客を幸せにする。こうした積み重ねが自立した発展につながるんだと思います。

ビジネスはもっと世の中を面白くできる
Business make the world better.

◉私がシェムリアップにいる期間のみ、この養鶏場への訪問ができます。カンボジア地鶏のランチもお召し上がりいただけます。ご希望の場合はこちらからお問い合わせください

◉ この養鶏場にも行ける!すごいスタディツアー Social Learning Tour in Cambodia

いろんな団体や活動を訪問するだけのスタディツアーではありません。出会い、挑戦、体験、振り返り、仲間、楽しい修行・・・いろんな要素がつまった、超濃厚なツアーです。すべてのプログラムにラーニングファシリテーターとして私が同行します。

◉国際協力に関心がある大学生、社会人、経営者へ。

あなたと途上国の人がともに成長し、幸せになるための方法を学びませんか?

国際協力 オンライン寺子屋(無料)はコチラ

◉フォローしておいてください。

活動を通して得た学び、カンボジアでのソーシャルラーニングツアー、日本での講座・ワークショップなどのご案内をしますので、下の方法で、ぜひ私をフォロー(Follow)しておいてくださいね。Mediumのアプリをスマートフォンにダウンロードしておけば、新しい記事がアップされると通知がくるので便利です。
iphone アプリ
Android アプリ

※実際のフォロー(Follow)ボタンは、このすぐ下にあります。

◉サービスはコチラ

◉お問い合わせはコチラ

--

--