ひとりのイラストレーターが、なぜ文章を本気で書こうと思ったのか

はじめまして!sentenceオンラインコミュニティメンバーの、ますぶちみなこです。

わたしは普段、hapticという屋号でフリーランスのイラストレーターをしています。元々Webデザイナーだったので、ビジュアルの表現に対しては垣根をそんなに感じることなく、デザインやイラストを自由に使って表現をしていました。でも、文章に関しては、すごくハードルの高さを感じていました。

文章はとても特別なスキルが必要で、簡単には上手くなれないものなんだろうと思っていたし、文章を書いて生活してる人なんて、もう神様みたいで、「ヒエ〜」という感じでした。

なので、わたしにとって「デザインやイラストをつくること」と「文章を書くこと」は、とてもかけ離れていました。そして、わたしが書いた文章は「何かの形」になることなんてないだろうと思っていました。そんな中、今こうしてライティングコミュニティsentenceのメンバーになり、sentenceのブログに記事を書かせてもらったのには、理由があります。

そこまで文章を書くことにハードルの高さを感じていた、ひとりのイラストレーターであるわたしが、なぜ、”ライティングコミュニティ”に入ってまで文章を書くのか。そこを掘り下げてみることで、「こんな人もsentenceで学んでいるよ」と、ひとつの参考にしていただけたら嬉しいです。

「デザインを言葉で説明する」大切さに気づく

中学生でインターネットにハマったわたしは、ずっと何かを作り発信し続けるのがライフワークになっていました。小さい頃から好きで描いていたイラストをWebサイトに載せる中で、デザイン技術もどんどん上がっていったと思います。

美術を学ぼうと進んだ専門学校で縁があり、Webデザイナーのアルバイトに誘われ、そのままデザイナーの道へ進みました。デザイナーは情報や思いを整理整頓して伝わりやすくする役割があり、とても重要な部分を担当します。わたしはまずデザインをやらせてもらい、最終的にはフリーのイラストレーターになりたいと思っていました。イラストレーターはデザインの中で読者の目を引いたり、情報の伝わり方をよりスムーズに変えることができる仕事です。

イラストレーターになりたかったわたしが、なぜまずデザインに取り組んだかというと、デザインは「イラストやコンテンツを包む器」だとわたしは考えているからです。器を作るデザイナーの考え方や気持ちがわかったら、中身を作るイラストレーターになったとき、素敵な器に合った中身を作れるんじゃないか、と野望に燃えていました。

そんな経緯で、ステップのひとつとして考えてしまっていたデザイナーの仕事は、思っていたほど簡単なものではありませんでした。技術を磨くことの難しさにはもちろん苦労しました。でも、繰り返し言われて特に難しかったのは、「デザインを言葉にする」ということです。相手は上司であることも、お客さまであることもありました。それまで感覚で作っていたものを、言葉にすることはとても難しい作業でした。

なぜこの構成にしたのか。
なぜこの色にしたのか。
ここの余白はなぜこの量なのか。

「説明できなければ考えてないことと同じ」と何度も言われました。

センスを活かす、デザインの世界なのに!と未熟なわたしは思いましたが、デザインという「センスだけで作られていると思われがちなもの」だからこそ、言葉はとても重要なものだったんです。

デザインの専門技術はすべての人にあるわけではありません。だからこそ言葉が必要です。デザインについて「あなたの要望をわたしはこう考えてこう作りました」と伝えること。わたしはデザイナー生活の中で、それをすごく意識させられる環境にありました。

のちに、あれこれ駆けずり回りながらも、デザイナーから、念願叶ってフリーのイラストレーターになりました。

「想い」を伝えるための言葉に、イラストを添える

デザイナーのときも、イラストレーターになってからも、わたしの作るものは「添え物」だと思っています。誰かの伝えたい想いに関して、ビジュアルで伝えるほうがスムーズなことを心を砕いて作っていますが、メインディッシュは「想い」です。

誰かが抱いている大切な想いを伝えるお手伝いをしたい、それがわたしの基本姿勢です。ビジュアルは「想い」が速いスピードで伝わるので、とても重要な役割をやらせていただいていると思っています。いつもそのことを心がけて、一つひとつお仕事に取り組んでいます。

soar

そして今、わたしの中で大きな比重を占めるお仕事が、Webメディア「soar」のイラスト制作です。soarは、誰もが自分の持つ可能性を活かして生きていける未来を目指して、一つひとつの記事を大切に作っていることが、外部のわたしにも伝わってくる大好きなメディアです。

soarの中にはインタビューやニュースの他に、「コラム」というコンテンツがあります。当事者が自身の体験を語るこのコンテンツは、難病や社会問題などを扱うことが多いため、文章だけでは、苦しんだ経験が生々しく重く伝わりすぎてしまうことがあります。でも苦しんだ経験はとても重要な内容でもあり、伝え方が難しい部分です。そこで、イラストを入れて少しでも当事者の思いが優しくふわっと伝わるように、ということでご依頼をいただくようになりました。

わたしは見せていただいた原稿を何度も繰り返し読んで、1枚1枚イラストを描いています。当事者がたくさんの困難を経て生まれてきた言葉の力にはとても重みがあって、毎回胸がつまりそうになります。当事者の大切な言葉たち、それを最大限に生かしたいと思って描かせてもらっています。

soarで大切に書いた、ひとつのコラム

そして、わたし自身もまた、精神疾患の当事者のひとりでもあります。

仕事をいつも頑張ってはいましたが、うまくいかず転職を繰り返していました。仕事が続かず途方にくれた時期もとても長く、27歳のときになぜか花屋でアルバイトをしていたこともあります。

生活がなかなかうまくいかないのは、双極性障害Ⅱ型が原因のひとつだったと、診断がおりてはじめてわかりました。頑張りたいのにどうしても周囲の人たちのように頑張ることができず、心身の調子を崩してはどうしたらいいのか途方に暮れていました。

その経験を、soarでコラムとして書かせてもらうことになったのが2016年の夏のこと。今まで生きてきて、楽しかったことや苦しかったこと、疾患の特徴を綴り、編集して読みやすくしてもらい、イラストも添えて無事、コラムはリリースされました。

わたしの書かせていただいたコラム

記事のURLをTwitterで検索すると、たくさんの反響がありました。関わったことのない人から嬉しい言葉を言われてビックリもしました。わたしはただ、今までのこと、そのときの気持ちを綴っただけのつもりでいました。でももしかしたらわたしも、今までイラストを描くときに感じてきた、「当事者本人だからこその言葉の重み」を持ち始めたのかもしれません。

noteというプラットフォームとの出会い

10年くらい、毎日ほぼ欠かさずTwitterで日々のあったこと、その中で思ったことを書き続けているわたしにとって、Twitterは気楽で楽しいものでした。仕事のことや精神疾患のことを書くこともあり、そんなときには140文字ギリギリまで使い切ることもあります。

「文字量が足りないなぁ」と思い、WordPressを使ってブログを作ってみたり、はてなブログを使ってみたり、あれこれ試してみました。

その中で、一番面白さを感じたのがnoteでした。ハッシュタグやフォロー機能など、noteの中でもつながる機能があり、「少し自由度が高くなったTwitterみたいだな」と思いました。

文章の途中から有料化する記事でビジネスをしている人たちもいて、わたしは「なるほど」と思いました。でもいざ自分が記事を書くとき、途中から有料にする勇気が出なかったので、全文表示する形にしました。そして、「読んでみてよかったらお金を入れてください」という投げ銭スタイルで少しずつ記事を書いていきました。

それでも時々、記事を買ってくれる人が現れ始めました。「ストリートミュージシャンって、ギターケースにお金を入れてもらうとき、こんな気持ちなのかな?」などと妄想しつつ、だんだん「あ、この人いつもスキしてくれるな」「この人またお金入れてくれたな」という人も何人か見かけるようになっていきます。

そして「お金をもらう」という体験を通じて、自分の中で、「文章」がイラストに続く表現手段のひとつになるかもしれない。そんな想いが強くなっていきました。

気にはなっていた「sentence」

soarを通じて、sentenceの存在は以前から知っていました。でも、「ライティングを学びたい人のためのコミュニティ」と書いてあり、「学びたい人」に自分が該当するのか、よくわからなかったんです。

わたしはイラストを描く人だから、イラストを学ぶのが難しい道であるように、文章を学ぶのもきっととてつもなく難しいんだろうと、想像することすらおこがましいことのように思っていました。

でも、「自分の文章って、どうなんだろう」ともっと知りたい気持ちがむくむく膨らんでいく自分に気づいてしまったんです。気づいてからは、猛スピード。入会まであっという間でした。

最初にどきどきしながらお問い合わせをしたのが、懐かしくすら思えます。コミュニティ内に震える手で自己紹介を書き込み、文章のフィードバックを何度もお願いしました。

自分の文章のかたち

soarのライターさんたちや、sentenceのメンバーの人たちと関わらせてもらう中で、改めて、わたしの文章は何なんだろう?ということを考えるようになっていきました。

わたしの書きたいことは、あくまで自分が体験して出てきた言葉や、試行錯誤しながら生きてきて伝えたいと思ったメッセージです。事実を正確に書いたり、人にインタビューして言葉を引き出して読みやすく表現することは、わたしのやりたいこととかなり違うと思いました。

そこで、改めて文章のジャンルについて調べてみました。すると、わたしの書いている文章は「エッセイ」や「コラム」に近いものだということが分かりました。

「添え物」だと思っているわたしのイラストは、どこにも使いどころがなく溜まっているものがたくさんあります。書いている文章にはいつもそういったイラストたちを添えているので、イラストのアピールにもなります。そして、文章を書くことを磨いていったら、自分自身の表現の幅も広がるのではないかと思えるようになりました。

「イラストレーター・エッセイスト」

さらに、不思議と名刺の数が切れそうなタイミングと重なりました。

今までの名刺には「イラストレーター・Webデザイナー ますぶちみなこ」と書いてあります。実は、名刺を交換するとき違和感を覚え始めていたのが「Webデザイナー」の部分でした。

そこでひとつ、決断をしました。わたしは長年愛したWebデザインを、自分の気力体力のことも考え、他のたくさんのデザイナーの方々に任せようと思ったのです。素敵なデザインを作れる人たちはたくさんいます。もうわたしがやれる仕事ではないと薄々気づいてはいたんです。デザインでたくさん奮闘したことを思い出して、少し泣きました。

悲しみの末に「Webデザイナー」を削って、新しい名刺を作ろうと考えたとき、肩書きは「イラストレーター」できっと全く問題ないと思います。実際、わたしのお仕事はほぼ100%イラスト制作です。

でも、磨きたいと思い始めた文章を何かにつなげたいと、またそわそわした気持ちになりました。sentenceに入っていいのか悩んでいたときの気持ちに似ていたかもしれません。

「イラストレーター」のあとに、何か「文章を書く人」と付け足してみたい…

今まで、お仕事で文章を書いたことはありません。そんなわたしが何か文章にまつわる職業を名乗っていいのかすごく不安だったので、まず家族に相談しました。そして勇気を出して、尊敬する書き手さんたちに相談させてもらいました。

誰もが「名乗ってもいいんじゃないか」と背中を押してくれて、心底ホッとしたのを覚えています。

そうして、新しい名刺をデザインしました。

「イラストレーター・エッセイスト」としての活動のスタートです。

引き寄せの法則のように、イラストレーターと名乗ることでわたしはイラストレーターになってきました。エッセイを書く機会も、書く場所も、ここから広がればいいと思っています。

「なりたいものは、名乗るもの。」というnoteを書き、インターネットの片隅からエッセイストとしての活動を密かに宣言しました。

全てのスキルと、精神疾患を活かして

泣きながら名刺から外した、Webデザイナーというお仕事。でも、デザインはとっても奥が深いんです。わたしの短いデザイナー生活でも、「伝えること、すべてがデザインだよ」と教わりました。情報の伝え方は全然違うように思えるけれど、伝えたい相手のことを考えて作るのは、デザインも文章もきっと一緒だと思うのです。

そして、変わらず主軸にしているイラストは、自分の文章に添えるとき、心強い味方になってくれます。オリジナルのイラストを使うことによって、インターネットにあるたくさんの記事の中で、わたしの記事が少し特別になっていたらいいなと期待しています。

それから、わたしの抱える「双極性障害Ⅱ型」という、現代では完治しないと言われている精神疾患。健康な人より気分や体調の波が大きく、波の大きさや考え方の歪みから、対人関係でトラブルになってしまったり、生活に支障をきたす難しいものです。わたし自身、周囲の人にとても助けられて治療を続けています。でも、目で見えるものではありません。

精神疾患という形の見えない問題を、少しでも言葉にして伝えられたら。わたしはひとつの疾患の当事者のひとりでしかないので、自分の気持ちしか表現することができません。でもそれでも、何か少しでも、精神疾患を持っていても生きやすい世の中になったら。当事者と世の中が、なめらかになったら、という願いを持っています。

ライティングコミュニティsentenceでは、たくさんの人たちの文章に触れたり、想いに触れています。文章を通して学ぶことで、自分の思考まで研ぎ澄まされ、何を作りたいのかすごく考えるようになりました。

わたしは一瞬で伝わるイラストと、味わうように伝わる文章。両方から想いを届けていきたい。だから文章を学んでいます。

「世界をもっと、なめらかに。」

これは、わたしのキャッチコピー。そんなクリエイターになりたくて、今日もわたしはsentenceをのぞきます。わたしのすべてを、コンテンツにしたい。そして、もっとなめらかな世界を作っていきたい、そんなことを思っています。

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