メディアの皆さんどうしてる? 取材相手との“距離感”の話――イベントレポ

Takeshi Nishiyama
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9 min readMar 8, 2017

ライターを始めた頃からお世話になっている(頭の上がらない)先輩ライターさんが登壇するイベントにおじゃましてきました。

左からコンセントの石野さん、カメラマンの栗原さん、ライター・編集者の柴崎さん

せっかくいい話が聞けたので、ライターさん、メディアにかかわる人にとって参考になるエッセンス、かいつまんでご紹介したいなと思います。

参加したのは上記のイベント。メインスピーカーはライター・編集者の柴崎卓郎さんと、写真家の栗原論さんです。

柴崎さんは格闘技専門誌、男性カルチャー誌編集部を経て、2008年に独立。以降「人、場所、モノに込められた物語性に、丁寧に耳を澄ますこと」をモットーに、雑誌、書籍、WEB媒体、企業・学校広告物などを中心に、編集、執筆、コンテンツ制作などに携わられています。

栗原さんは 2003年からフリーで活動している写真家さん。2007年より写真家4人で4×5 ( SHINOGO ) 結成して、現在は江戸川橋にスタジオ、アトリエを構えています。音楽誌、ライフスタイル誌、書籍、学校刊行物などの撮影のほか、音楽 PV などムービー撮影・編集も手がけられています。

司会は、株式会社コンセントのプロジェクトマネージャー・石野博一さん。書籍、企業広報誌、Webサイトなど、コンセントのコミュニケーション事業領域をご担当されています。

空気を作る、チームで握る

まずは、そもそも取材や撮影において、“距離感”というものをどのように捉えているのか…という問いかけからスタート。栗原さんは「撮影って基本、相手に負担をかける行為なんですよね」と前置きをして、次のように話してくれました。

栗原さん「初対面の人に写真を撮られるのは、多くの人にとって、あんまり気持ちいいことじゃないと思います。誰だって『よくわからない、変なヤツに撮られたくない』って感じるでしょう。だから、まず大事にしているのは…最初に元気よく挨拶をして、自己紹介をすることです(笑)」

笑い交じりでしたが、これはとても大事なことだなと感じました。仕事で現場慣れしてくると、段々と挨拶や自己紹介って「一度きりだから適当でいいかな…」とおざなりにしてしまいがち。形式的に名刺を渡すことだけでなく、ちゃんと「第一印象をよいものにする」という意識を持って、ファーストコミュニケーションを取ろうと思いました。

一方、柴崎さんは「取材相手の前に、まずは一緒にコンテンツを作るクライアントとの距離感を大切にしている」と語ります。

柴崎さん「最近は、まずクライアントとのコミュニケーションを綿密に取ることを、特に大事にしていますね。取材に臨む前に『一緒にいいものを作っていこう』という“チーム感”を作っておくと、取材現場の空気感も自ずと良くなっていくなと、実感しています」

距離を詰めるはじめの一歩は“安心感”

続いて、現場での“距離感”の取り方の話題に。撮影も取材も、ある程度は相手との距離を縮めて寄り添っていかないと、いい表情・いいエピソードは引き出せないものです。

栗原さん「初めの挨拶にも通じるのですが、現場で気を遣うのは“相手の警戒心を解くこと”です。意図的に緊張感のある表情を撮るケースを除いて、相手に安心感を持ってもらわないと、いい表情は引き出せません。普段撮られ慣れていない素人さんが相手だったりすると、なおさらですよね」

緊張している相手を撮影する際に、栗原さんはどのような対応を取るのでしょうか。

栗原さん「相手が固い場合は、空気感を和らげるために少し遅れて現場に入りながら『すいませんトイレ行ってました(笑)』とおどけてみるとか。そしたら相手も『あ、なんか取っつきやすい人なんだ』と安心してくれるかもしれない。そうやって対話を積み重ねながら緊張感を和らげていって、最終的には『撮影、楽しかったです』って言ってほしいんですよね」

取材相手は、好きなれるまで調べる

一方、柴崎さんからは「現場で…というよりも、事前の準備で取材対象との“距離感”が決まる」というお話が。

柴崎さん「僕らみたいな職業は『よく初対面の人と話をできるよね』って思われがちですけど…僕は無理ですよ、初対面の人と饒舌に話せって言われても(笑)。だから取材前には、ひたすら相手のことを知る努力を重ねます。相手のことを好きになるくらい、調べますね。頭の中でその人とやり取りができるくらいまで、相手の輪郭をつかめるように」

事前に取材対象のことを調べる重要性について、柴崎さんは次のように続けます。

柴崎さん「正直、事前に構成を練っておいて、業務的に必要な項目を聞くだけだったら、そんなに時間はかからないんですよ。でもそれじゃあ、わざわざ相手に時間をもらって、対面で向き合う意味がない。僕は、取材の中で関係性を作って『この人だから、ほろっと言っちゃった』みたいな、生っぽいものを引き出したいと、常々考えています」

距離感を縮める“マジックワード”はある?

イベント後半は、来場者との質疑応答に。

会場からの「取材対象と距離感を詰めるための“魔法の言葉”はありますか?」という質問に対して、お二人は次のように答えていました。

栗原さん「企画上、やってもらわなきゃいけないポーズをお願いする際には、よく使うフレーズがあって。そういう時には『ダメだったらいいんですけど…やってもらえませんか?』って言うんです。ストレートにお願いすると断られそうなことでも、この投げ方をすると『ダメじゃないけど…』ってなる。肌感的に、8割5分くらい成功します(笑)」

柴崎さん「僕は取材終わりに、次に繋げられるような話をするようにしていますね。『今日は時間の関係でこれしか聞けなかったんですけど…次また機会を作るので、ぜひまたお話聞かせてください』とか、盛り上がりによっては『もう、近いうちに飲みましょうよ』とか。やっぱり、相手にも『楽しかった』って印象を持ってもらいたいし、僕も大体楽しんでいるので、自然とそういう言葉が出てきますね」

…ほかにも盛りだくさんお話はありましたが、それは参加した人間の特権として(笑)、こちらでのレポートはここまでに。

取材相手との距離感の取り方は、ともすれば「ケースバイケースだよね」という言葉で片づけてしまって、なかなかメソッドとして蓄積されにくいものだと思います。このイベント、「自分が感覚でやっている取材のやり方も、もっと言語化して整理してみよう」と、思い改めるいい機会となりました。

※イベント終了後、登壇されていた柴崎さんがコラムをアップされてました。こちらもぜひ。

“未来を編む、自分を編む”ための空間『amu』

今回のイベント会場は、株式会社コンセントさんが運営するイベントスペース『amu』で行われました。

“ 『amu』という名前は編集の「編」(ヘン、あむ)からつけた名前であり、まさに皆さんが自分自身の生き方を編集する場として活用して欲しいという思いを込めて名づけました。

ここは決して新しい生き方が「買える」場所ではありません。 むしろ参加する人同士が潜在的に持っている力を顕在化し、深めるだけでなく、自分の新たな地平や文脈を発見できるようにするための場所です。”

上記のサイトより、今後『amu』で開催されるイベントがチェックできます。デザインやアート、メディアにまつわる催しが定期的に行われていますので、ご興味のある方、ちょくちょくチェックしてみてはいかがでしょうか。

ライティングに関するイベントの紹介、レポートなど、定期的に出しています

ライティングコミュニティ「sentence」のmediumでは、このような「書くこと」にまつわるイベントの紹介を定期的に行っています。気になる方はぜひ、以下のあたりをご覧いただけたら嬉しいです。

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書くことを学び合うためのコミュニティです。イベントやライティング講座、月額制のオンラインコミュニティなどを運営しています。詳しくは下記HPより。

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Takeshi Nishiyama
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旅は道連れ世は情け、恩は掛け捨て倍返し、残す仕事に身を削る、湯とり世代の創食系。ばっかじゃなかめぐろ、なにゆうてんじ