人間ってすごい
⑴AI技術によって人の創作活動を模倣する意義/危険性
①人間の創造性の再認識
私は、AI技術によって人の創作活動を模倣する意義の一つは人間の創造性の再認識であると考える。AIによって模倣されたアウトプットにはどこか違和感というものを感じずにはいられない。それは、生まれる前から持っている直感的認識に反することを人間が無意識に察知しているからであるように思う。人間による創作活動には、作家が今まで見たものや聞いたもの、感じたものが全て統合され、反映される。そのため人間のアウトプットには一人の人間が作ることでしかできない一貫性がある。そしてその統合された認識はその人にしか出せない表現を生み出すと同時に、どこか気持ちよさを生み出す。「気持ちよさ」の原因は、そのような統合的認知が複雑に絡み合うことで生まれている。それに対してAIにはそのような複雑な統合的認知が存在しない。AIのアウトプットは、人間の作品の表面だけを削り取って混ぜるという”作業”の結果に過ぎない。人間がAIによるアウトプットを見た時に感じる「違和感」とはそのような単純作業をどこか見抜いているからかもしれない。私は、人間がAIの作品を見た時に感じる「違和感」を理解しようとする試みこそが人間の創造性への再認識につながるのではないかと感じた。
②思考材料
私は、模倣することの意義の2つ目は、人間が思考を深めることができる点にあると考えた。AIが人間を模倣することで生成されるアウトプットからは、人間が学ぶことができる。人間の模倣のはずが、作家の思いもよらない意外な結果になることも多い。そのような結果から考えられることとしては、作品に込めた意味の再定義ができたり、配色の意外性からカラーリングを学べたりなど、作家としての視野が広くなることが考えられる。’
③印象の画一化
私はAIが人の創作活動を模倣することによる危険性として、アウトプットの画一化があると考えられる。AIによって人間の創作活動を模倣することの先には、人間が作家としての主体を失い、AIによってでしか作品が作られない可能性もある。あくまでもAIはプログラムであり、過去に存在するものの模倣≒コピーすることしかできないので、表面的には異なるものでも、作られるアウトプットが似通ったものになる可能性を否定できない。
⑵Stable DiffusionのようなAI画像生成技術が人の創造性、アートに与える影響
私がAI画像生成技術が人の創造性、アートに与える影響として危惧している内容は、多く語られているように人間の創造性の減少である。Stable DiffusionのようなAI画像生成技術は、私たちの画像生成のハードルを大きく下げた。これは大きく捉えると何かを「作る」ことの民主化とも言えるかもしれない。実際にはアルゴリズムで出力された再現性のあるものに過ぎないのだが、人はそれを自分の作った唯一無二の作品と捉えるかもしれない。そうなれば、「作る」という言葉に対する定義が「文字を入力すること」という定義に変化し、最終的にはAIによって生成された画像は、「作品」に擬態したものであるという認識を人々が忘れていくことになるかもしれない。私が危惧している世界は、そのような気付かぬうちに人が創造性を失い、機械によって画一化されたディストピアである。