SFC メディアアート実践 2022 中間課題

AIによる生成技術の面白さと未来

masaya shirai
SFC Media Art 2022
Dec 24, 2022

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text2imageなどによって生成される画像は、完全ではないからこそ生まれる面白さを孕んでいる。実際に自分が結果を想像して入力したプロンプトと全く違う結果が返ってきたときは、期待外れな気もするが実際はそれに近しいなにかを生成しているため、思わぬ発見があることがほとんどだ。その「間違い」から自分には想像することの出来なかった新しい表現が見えてくる。
今はもうAIとすら呼ばれなくなってしまった自動翻訳ツールも最初は精度が悪く、面白い間違いをしていた。それと同じように登場したばかりの画像生成モデルも面白い間違いをしてくれる。その「常識」から外れたものが人間にハッと気づかせてくれるものがあるから面白いのである。では、逆にこれがもっと精工なものへと変わっていったらそこに今と同様の面白さや発見はあるのだろうか。どちらかというと今はクリエイティブでアーティスティックなものに使われているstable diffudionなどの生成モデルも将来的には、人に求められる架空の場所などを生成するツールとしてデザイン寄りなものに使用されるようになるだろう。不気味で面白さをを有したものから、精密で精工なものへ。AI生成ツールは今と別の可能性を秘めているがそこに新しい気づきを生み出すのは難しくなってしまうかもしれない。同じような性格や趣味の人と一緒にいるよりも、自分と全く違う趣味嗜好の人と一緒にいた方が、別の視点で物事を見ていたり知りえなかった情報を持っているというあの感覚に近い気がする。人間と遠い結果を返してくれるAIとの共作によって人間の想像性が刺激されるのである。
これらのことを踏まえると、今はあまり見なくなってしまったフィルムカメラやレコードが未だ一部の人に愛され使われ続けているように、現在までの学習データのみを用いたモデルを使って作品を作るような人も出てくるかもしれない。

モノを認識するということ

数日前にOpenAIがオープンソースとして公開した、Point-E[1]というモデルを触ってみることで再認識した、人間の認識能力や想像力について考察したい。
Point-Eとは文字や画像から3Dデータ(点群データ)を生成することの出来るモデルであり、主に「テキストから画像を生成するモデル」「画像から点群データを生成するモデル」の2つで構成されている。[2]

人がある対象を想像するとき、場所の情報とは切り離されてそのものを想像するのではないだろうか。例えば赤いバイクと聞いて、湘南の海を颯爽と走り抜ける赤いバイクをイメージする人は少ないだろう。そのため、このモデルは状況ではなくある特定のものをプロンプトとして入力した際は、画像生成モデルよりも実際に人間が想像するのに近い結果を返してくれる。 image2pointcloudでは、実際に自分が撮った画像を使って色々と試してみた。そこで気づいたことは、人間は画像からその状況を「空間」として認識できるということである。画像という二次元のものからそこになにがあるのか、それはどのような状況なのかを3Dに変換して知覚してはいないだろうか。私は基本的に風景や建物などを切り取ることで、見る人にその状況の美しさや神秘性を伝えるために写真というメディウムを用いて表現している。撮影した写真の中で、部屋に一脚の椅子とブラウン管テレビのある部屋の様子をPoint-Eを用いて点群データ化してみた。

それの結果を見て、このモデルがきちんと部屋を「囲われた空間」として認識していることの驚きと、自分がその写真を「囲われた空間」として出力してくれることを期待していたことに対する気づきを得た。猫を寄りで撮影したと思われる画像を使用したときは、猫だけが点群データ化されたから余計である。最近では写真を加工してイラストライクにすることが流行っているように感じている。しかしながら、その場の雰囲気を伝えるために写真を用いるのであればそれはその「空間」を三次元空間として鑑賞者にイメージしてもらう必要がある。そして、そのことを踏まえた上で自分の作品を制作しようと改めて実感することが出来た。
AIを用いた生成は単純にその生成物を使った作品を作るだけでなく、その生成結果からも人間がどのように物体や空間を認識しているかを知ることが出来るのは非常に面白い。

まとめ

AIを用いることは、人間の業務を肩代わりしたり人間の予測を超えてくるものを生成することによる意外性はもちろんのこと、人間との対比によって人間の認識や知覚の在り方について再確認できるところに面白みがあると言えるだろう。
今後どのようにAIの技術が進歩し、それによってAIと人間の関わり方や創造・想像性がどのように変化していくか注目していきたい。

参考

[1]https://github.com/openai/point-e
[2]https://arxiv.org/pdf/2212.08751.pdf
[3]https://gigazine.net/news/20221221-openai-point-e/

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