デザイナー向け社内勉強会【デザイナーとしての次の一手】 を開催しました

sugam
Shibuya design engineering
14 min readJun 21, 2019

はじめに

初めまして。サーバーサイドエンジニアをしている安田と申します。

社内メンバーでデザインエンジニアリングギルドというデザインとエンジニアリングをつなぐことを目的とした活動をしています。

5/16に活動の一環として、社内のデザイナー向けに長谷川恭久さん(@yhassy)をお招きし、勉強会を開催しました。

勉強会の内容は以下になります。

  • デザイナーとして次の一手を考える」というテーマで長谷川さんにご講演頂きました
  • 長谷川さんと社内デザイナー(3名)でパネルディスカッション

長谷川さんの講演がとても勉強になることばりでこの記事では主に講演内容についてまとめました。

デザイナーとしてどう進んで行こうか迷っていた方、言語化やドキュメンテーションに課題を感じていた方、デザイナーのスキル評価に悩んでいた方、デザイナーのアウトプットが感覚的だと思っていた方など様々な方にお届けしたい内容です。

デザイナーのキャリアパスと現状の課題

デザイナーのタイプ

デザイナーと言っても、

  • Graphicデザイナー
  • UIデザイナー
  • Webデザイナー
  • Interactionデザイナー
  • Productデザイナー

などがありますが、長谷川さんから

日本のデザイナーって結局みんな作ること全部やっているよね。それで「ユーザー体験を構成する5つの要素」に辿り着いて全部やろうとするけど、極めている感じがしてこない、次何やったらいいか分からないってなる。エンジニアは分業が進んでいるのにデザイナーは専門分野が生かした仕事がまだまだできていない。

とありました。ではこれがどういう状況でどんな課題が発生しているかと言いますと、

作るという領域に関わることを全て抱えている状態

職域としてのチーム作りがされていない

足りないところを補ってチームを作るということがされていない

属人化した状態で進んでいるチームが多く見られる

やることが多すぎて忙しいわりにはスケールしていない

ものすごくできる人とそうでない人がいるが中間がいない

専門性を伸ばす選択肢がなくマネージャーや責任者へのキャリアパスしかない

というお話がありました。

私自身がサーバーサイドのエンジニアなので、エンジニア領域では、フロントエンド、サーバーサイド、iOS、Android、インフラ・・・と分業化が進んでおり、それぞれの分野に強みを持つことが当たり前になっているので、一言でデザイナーとしている状況にデザイナーへの尊敬の念とともに大変だ・・・と思ったのが率直なところです。

各分野に特化するということがまだまだこれからな状況だからか、

デザイナーのキャリアパスについて、デザイナーの次はマネージャーその次は経営というパスが多い

といったように、デザイナーのキャリアパスの選択肢の少なさについてお話されていました。長谷川さんのように、外部の様々な企業のデザイン組織をみてきた方からこういった課題があるというお話はとても貴重です。

キャリアパスの選択肢が少ないことに関して、ある程度経験を積んだらマネージャーしか用意されていない、認識されていないということが背景にあるのかなと思いましたが、全員がマネージャーになれるわけではありませんし、例えば、UIを考えることが好きでその領域をどんどん伸ばしていきたいからマネージャになることを希望しないといった方もいるかと思います。

マネージャーになれないから、ならないからチームに貢献していないというわけでなくて、UI/UXの領域を深掘りしてユーザーに喜ばれるサービスを作るという方向性で貢献していくのもありですし、定量、定性調査などのユーザーリサーチとその分析を深場りして課題発見や戦略策定で貢献していくのもありだと思います。

ただ、マネージャー以外のキャリアパスとして専門性を伸ばしていき、そのスキルによってチーム、会社に貢献するというキャリアパスがあってしかるべきなのですが、まだまだ整備されていないことが実情なのだなと感じました。

Product Design Skill Map(β)

Product Design Skill Map(β)

この画像ですが、Productデザイナー向けのスキルマップと提示されていたものです。Productデザイナーが自分のスキルを自己評価したり強みを見つけたり、さらには目指したいところを視覚化できるようにという背景から作成されたそうです。

一例としてですが、これをデザイナータイプに当てはめると

visual designer’s skill map
researcher’s skill map

といったように、Productデザイナーと言っても得意な分野が異なるということが視覚化することによって一目瞭然となります。

さらに長谷川さんは、

自己評価のみならず、チーム全員でやってみればチームとしてどういうスキルセットが必要かが把握できるので、自分がどの部分を伸ばしていくか考えるのもあり。こうやって自己評価していくことで、デザイナーの次はマネージャーという選択肢だけでなく、専門性に特化していくにあたりどの部分を伸ばせば良いの分かるし、教育プログラムや体制を作ってみると言ったこともできる

とお話されていました。

Productデザイナーとして今後どう進んでいこう、どこを伸ばせばいいんだろう・・・と悩んでいた方にこのスキルマップを使って是非自己評価して欲しいです。

さらに、チームメンバーで実施してみることによって、チーム内での自分の立ち位置や活躍ポイントが把握できるかもしれませんし、もしくは足りていない分野が分かることによって効果的な採用に繋がるかもしれません。

そして、デザイン組織や会社全体といった大きなところを見ている方には、デザイナーと一口で言ってもこんなに細分化されるということ少しでも知ってもらえたら嬉しいです。

デザイナーのコミュニケーションについて

コミュニケーションについては、どの業界、どの職種でも話に出てきますが、デザイナーに関しても、

どんなデザイナーを目指そうと必要になってくるのがコミュニケーション

とコミュニケーションの重要性と、

デザイナー同士だと「かっこいい」「イケてる」といったワードでなんとなく伝わっちゃうことがあるかもしれませんが、それだとビジネス、エンジニアのメンバーには伝わらないし、それを聞いた人たちが「デザインて感覚的なんだな」と思ってしまって、結果デザインの良し悪しについてどちらが勝つかというと政治的に上な人が勝ってしまう

と、伝えることを疎かにしてしまうとデザインが感覚的なものと認識されたまま、デザインの決定が作成者というよりは政治的に上な人に委ねられてしまうといったお話がありました。

では具体的に何をやっていけばいいかと言うと、

コミュニケーションの土台

が重要で、徹底した言語化・明文化(とにかく書き残す)を通して他のメンバーと共通認識を持てるようにしようとありました。

共通認識とは、

判断基準

スケールする仕組み

専門分野を持っているチームをどう大きくしていくか

です。

んー難しい!と言う方、安心してください。長谷川さんが実際に普段からやられていることについてご紹介くださいました。主に以下3つのドキュメントを作成しているとのことです。

  • プロダクト仕様ドキュメント
  • 提案ドキュメント
  • デザイン実装ドキュメント

それぞれ説明していきます。

プロダクト仕様ドキュメント

プロダクト仕様ドキュメント

上記のようなことを主に書き残しているそうです。プロダクトの全体像や、あるべき姿、追っていく指標といったどちらかというとプロダクトの上流部分ですね。

この辺をしっかり抑えないと、

デザインが感覚的なものとして伝わってしまう

とお話されていました。

提案ドキュメント

提案ドキュメント

特定のUIや機能についてのアプローチや修正をした方がいいのではないか?という提案のドキュメントで上記のような項目を書き残しているとのこです、

特にデザイン案について、メリット・デメリット・リスクだけでもせめてやっているとのことです。具体例となぜやっているかについては、

こういう取捨選択があって自分はこのメリットを取ったなどで、これを残しておかないと、そもそも自分が忘れるし新しい人が入ってきた時にまた同じことが起きる。

とお話されていました。
これは、単に自分の備忘録になるだけでなく、新しい人になぜこういうデザインになっているか?を伝えるとともに、捨てたことを伝えるために有効です。

デザイン実装ドキュメント

デザイン実装ドキュメント

デザインの実装に関するドキュメントで、単にどういうデザインか?だけでなく、

それがいつどのような時に使えば良いのか?とエンジニアに突っ込まれることがあって、例えば、ボタンがいっぱいあるけど、それをいつどんなタイミングで使って良いか?

を書き残していてそれはなぜかというと、

デザインと実装をつなぐコミュニケーションツールにもなるので、エンジニアが自走できるように見た目のルールだけでなく実装の考え方も言語化しておこう

とありました。ドキュメントがデザイナーとエンジニアを繋げるコミュニケーションツールになるというところがとても印象に残りました。スタイルガイドやデザインシステムなどはまさにコミュニケーションツールに当たりますね。

以上、長谷川さんが徹底的に言語化、明文化するために書き残しているお主なドキュメントを3つ紹介しました。

言語化、ドキュメンテーションのまとめとして、再度言語化やドキュメンテーションの重要性に触れ、書くことがコミュニケーションになるので「あとで入ってきた人も理解できる」ように「ぱっと見だけではわからない文脈の記録」をやっていこう、「最初は定型ドキュメントを作って小さく始めながらトレーニング」していこう「経緯と根拠の言語化に挑戦することが大事」とおっしゃっていました。

今後の課題

長谷川さんから講演の締めくくりとして今後の課題についてお話がありました。

今後の課題

これはその通りで、ある程度の規模のデザイナー組織がある企業にとっては、言語化やドキュメンテーションに関する重要性を再認識するとともに、デザイナーのキャリアパスの多様性を認識し、専門分野を伸ばした先のキャリアパスや評価指標を組織的に用意していかなくてはいけないタイミングにきているのではないか?と感じました。

アンケート

勉強会の後日、参加してくださった方達にアンケートにご協力頂きました。大好評だったのでほっとしました。一部を紹介していきます。

最近デザイナーはなんでもできなくちゃいけない、みたいな強迫観念を感じていたので少し救われました…笑 ただ言語化はコミュニケーションを円滑にするためにやっぱり必要なんだなと再確認できた。

「デザイナーはデザイン全部をつくる仕事だ」というように自分も考えてしまっていたことを課題認識できてよかったです。

デザイナーの仕事おおすぎ!っていうのがすごくありがたかった。言語化してデザインをみんなのものにするのも大事だと思った

言葉がしっかりと誰にでもわかるものに定義されていたため、ビジの私でも理解しやすい勉強会でした。

今後、デザイン提案を社内外に行う機会が増えるので、伝え方について実践していきたいと思います。

12スキルの分類で、自分の強みと伸ばしたい部分を認識できたところ。

徹底とした言語化・明文化、はどこまでやるかは考える必要がありますが、実践すべき内容だと感じました。「コミュニケーション=共通認識を持つこと」という定義がかなり腹おちしたため、この言葉の定義を浸透させながら進めたいと考えています。

ドキュメントで認識を共有すること。今までざっくりと記述していた部分がありましたが、言語化について意識するべき部分がクリアになったので今後に活かしていきたいと思いました

自分では意識していたつもりだったけど、フロントエンジニアはもちろん、プロデューサーも、サーバーサイドエンジニアも、みんなが何かしら広義の「デザイン」に関わっていて、その認識を今一度持てるようにすることが課題だと思いました。そして、その共通認識のための「デザイン」を誰かがする必要があって、そういう人材を育てていく必要があるなぁと思いました。

などなど色々なお声を頂くことができました。アンケート結果を見ても言語化、コミュニケーションに関することが多かったので、多くの人が何かしら課題感を持っていると言うことが分かりました。一人一人で解決していくというよりは、組織的に解決した方が大きい効果が得られそうです。

おわりに

様々なデジタルコンテンツが乱立している現代において、デザイナーの重要性が再認識され、また上がってきています。そんな背景がある一方でフタを開けてみると、一人のデザイナーに求める職域が広かったり、キャリアパスが用意されていなかったり、評価について整備されていなったりといった状況があることを再認識しました。

こういった状況において、一人のデザイナーが「デザイナーとして次の一手を考える」ためにスキルマップを使って「自己評価」し今の自分となりたい像の乖離を視覚化することの重要性を学びました。

スキルマップついては、勉強会に参加された方がチームに持ち帰って、個々人が自己評価しチームとしてのスキルマップを視覚化するということを実施したチームがありました。
これは、個々人が自分のスキルマップを俯瞰して今後どうキャリアパスを築いていくか再考するきっかけになったと思いますし、チームとして得意不得意分野が可視化されるので今後の育成や採用に役立つのではないかと思っています。
さらには、評価する側としてもメンバーとどの領域を伸ばしていくか、それはどれくらい伸ばせば良いのか?といった評価指標にも利用できるので、評価基準を明確にできるとともに合意形成にも有効です。

また、どんなデザイナーになりたいとしてもコミュニケーションは避けて通れない問題で、そのためには徹底的に言語化・明文化することが大切ということと明日から実践できるドキュメンテーション術も知ることができ、大変学びの多い勉強会となりました。

勉強会、開催して本当によかったです!

ご講演頂いた長谷川さん本当に貴重なお話ありがとうございました!また、当日会場の設営や準備を手伝ってくれたギルドメンバー、飲食物を用意してくださった方、皆さんどうもありがとうございました!

今後もギルドを通して、デザインとエンジニアリングを繋げられるような活動を行っていきますので引き続きよろしくお願いします。

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