恋活アプリを勝手に考えて事業責任者にプレゼンしに行った件(後編)
「新しい恋活アプリ」をテーマにデザイン思考を実践してみた件の後編になります。
前回→http://urx.space/Y6Tb
3. アイデア創出
アイデアスケッチ
インタビューとインタビューの分析をもとに、アイデアを作るフェーズになります。
デザイン思考ではより多くのアイデアを出すブレーンストーミングが重視されることが多いように思いますが、今回は1人でじっくり考えるアイデアスケッチという手法を選びました。
IAMAS(情報科学芸術大学院大学)のアイデアスケッチ(※1)とデザインスプリントのソリューションスケッチを参考にしています。
※1 https://www.iamas.ac.jp/activity/idea-sketch-book/
IAMASのアイデアスケッチの例
デザインスプリントのソリューションスケッチの例
今回のアイデアスケッチのルール
アイデアスケッチ
スケッチをアイデアでかく
UIや画面みたいなものは、3枚使って絵コンテ風にかく
アイデアのコアの部分に赤ペンでハイライトを入れる
アイデアを一言で表現するタイトルを入れる
実際のアイデアスケッチを張り出したところ
美術館とヒートマップ
これもデザインスプリントから拝借した手法です。
出来上がったスケッチは、壁に張り出していきます。このとき作者の説明は一切しないで、張り出して鑑賞していきます。
張り出されたスケッチのよいと思うアイデアにシールを貼っていきます。シールを貼るのはアイデア全体でも、アイデアの一部分でも構いません。
議論をしてしまうと、議論に時間がかかったり議論のうまい人の意見に流されてしまいます。アイデアスケッチ+美術館、ヒートマップは議論なしで、良いアイデアが一目瞭然になります。
ヒートマップで得票数の多い順でカンタンに補足の説明をしてもらいます。
今回は出来上がったアイデアの中から、プロトタイプへ進めるアイデアを決めるので、デザインスプリントの投票システムを借りて、プロトタイプしてみようと思うアイデアに投票します。
4.プロトタイピング
次の工程の検証でユーザーテストをするためのプロトタイプをつくります。スマートフォンのアプリを前提としているためプロトタイピングツールである程度インタラクティブなプロトタイプを作成します。
詳細は作り込まず、ユーザーテストでコア機能が体験できるレベルで作ります。また、この段階で作り込みすぎると壊すのが惜しくなるので注意が必要です。
プロトタイプツールも世の中にはたくさんあるので、複数のプロトタイプツールを使ってみて、比較検証してみました。
使用したプロトタイプツール
- Adobe XD
- Framer X
- ProtoPie
ツールによって得意不得意があると感じました。詳細は別の記事でまとめようと思います。
作成したプロトタイプ
5.検証
実際にさわれるプロトタイプをさわってもらい、アイデアのコンセプトがユーザにとって有用なものか検証します。
今回は簡易的に社内の独身の人にテスターとして協力してもらいました。
自分のアイデアを身近な人に話すときもそうですが言葉だけではなかなか伝わらないものですが、実際に触れるプロトタイプがあることでユーザーにコンセプトが伝わりやすく、それゆえ現状の問題点もはっきりしてきます。
基本的にはプロトタイプを操作してもらって感想を聞きます。事前に「すごい」とか「おもしろい」とか「わからない」など思ったことをそのまま口に出してくださいとお願いしておきます。
大きく分けて2つのやり方があるかなと思います。
- 何もいわずにユーザに自由に触ってもらう
- ナビゲートしながら1画面ずつユーザに感想をいってもらう
どちらがいいというわけではないですが、動かないボタンや仮の文言・デザインなどはユーザが気になって指摘したくなるので多少のナビゲートはしたほうがいいかなと思います。
なるべくリラックスしてもらうために
感想などを率直にいってもらうためになるべくリラックスできる環境をつくります。知り合いにユーザテストをしてもらうときはすでに関係性があるので不要だとおもいますが、初めて会った人に本音をいってもらうための工夫になります。
- 会議室よりはなるべくカフェなどソファーがあったり多少他の人の声も聞こえる場所で
- 挨拶とアイスブレーク(本題とは関係ない話)で緊張をほぐす
- 飲み物やお菓子を用意して一緒に飲んだり食べたりする
※Fearless change パターン9: 何か食べながら
ユーザの感想は付箋などにメモしておき、その日のユーザテストが終わったら共通項をまとめたり重要な発言をピックアップします。
次のアクション
デザイン思考は5つのプロセスの繰り返すことを推奨しています。
必ず最初の共感フェーズまで戻らなくても途中のフェーズから続けるのもよいと思います。
- 別のユーザーでもう少しテストしたい→5の検証から
- プロトタイプの出来がよくなかった、すでに出ていた別のアイデアを試したい→4のプロトタイピングから
- 同じ課題からアイデアを出し直したい→3のアイデア創出から
- 課題設定がずれていた→2の問題定義から
- ユーザーの隠れたニーズ・インサイトを捉えられてないのでは→1の共感から
どういう状態になったら実際の開発に移るかという基準はなかなか決まったものはなさそうで、今後の研究課題にしたいと思います。
デザイン思考では
「みんなにそれなりにいいねといわれるものより1人でも熱狂的なユーザーを見つける」というような考え方があり指標にしたいと思っています。
ただ、実際にコストのかかる開発に移る際には持続可能性、実現可能性も考慮する必要があります。
今回の話のその後
勉強会としての成果発表の後、社内で恋活アプリを開発してる事業責任者にもプレゼンする機会をもらいました。
このアイデアをすぐ実装しよう!とはなりませんでしたが、手法には興味を持ってもらい別途実サービスでデザイン思考導入のお手伝いをすることになりました。こちらも進展があればまた記事にしたいと思います。