時雨堂は 2020 年 10 月で 9 期を迎えます。最近は WebRTC SFU Sora が様々な場面で使っていただけるようになってきたこともあり、会社が自社製品の売上だけでまわるようになりました。
とはいえ、ただの零細企業でしかないため、いつ自社製品が売れなくなるかわかりません。次どうするかを 8 月はコード書くのを止めて色々考えていました。
一通り考えがまとまったので、まとめておこうと思います。
要約
- Sora を採用したくなる OSS の提供
- Sora 向け統計解析ツールを OSS で公開
- Sora 向け録画合成ツールを OSS で公開
- Sora 向け負荷試験ツールを OSS で公開
- 本気で日本の WebRTC 市場を取りに行く
経営状況
ありがたいことに相当順調です。税理士も開いた口が塞がらないほどです。とはいえ働き方は特に変わっていませんので、変化があるとしたら社員の賞与の金額くらいでしょう。
自社製品状況
外のお手伝いを減らして、自社製品への投資を続けています。特に主力製品である WebRTC SFU Sora にはかなり投資をしています。
- 同時に 50 人を表示可能にする新スポットライト機能
- 鍵合意アルゴリズムを利用した E2EE 対応 (OSS として公開予定)
- コードをモダンにしたデモ機能 (OSS として公開予定)
- より接続継続率を上げるためのシグナリングのデータチャネル化
- Sora Unity SDK の iOS 対応
それ以外にも WebRTC Native Client Momo や React Native WebRTC Kit といった OSS にも積極的な投資をしています。
特に Momo は多くの環境で使っていただけるようになりました。
本当に感謝しています。皆様お使いいただきありがとうございます。
自社サービス状況
Ayame Lite と Sora Labo という自社製品をすぐに利用可能にするサービスを運営しています。
Ayame Lite は現時点で累計 25 万接続ほど利用いただいております。
Sora Labo はさくらインターネット様からのご厚意でサーバをお借りしているのですが、300Mbps プランに切り替えなくてはいけないほど、ガッツリ検証サービスとして利用いただいています。
安定して動いていることもあり、手間もかからず、基本的には放置しています。なにかあるとコミュニティから突っ込みいただけるということもあり楽させていただいております。
次の一手
そんな中、OSS で公開している製品の開発が一段落してきたということもあり、次の一手をどうするか色々考えてみました。結論としては「主力製品である Sora を採用したくなる OSS の提供」になりました。
今後は 3 つのツールを開発し OSS にて提供していこうと考えています。
Sora 向け統計解析ツール
Sora は多くの統計情報を内部に持っています。今後もこの統計情報は増やしていく予定です。またクライアント側でしか取得できない情報というのもあります。これらの統計情報を吸い上げ、問題があった場合などを解析できる仕組みを提供しようと考えています。
いわば callstats.io の Sora 専用版です。
Sora 向け録画合成ツール
WebRTC SFU というのは「映像を転送する」というのが前提になります。そのため複数人で利用し、録画を残したとしてもそれぞれの映像はバラバラに記録されます。
4 人が 1 時間話せば、4 つの 1 時間のファイルが生成されます。これを 1 つのファイルに合成するツールを提供しようと考えています。
合成は CPU (アクセラレータがあればそっち) をかなり利用するということもあり、自前で気軽に利用可能なツールとして提供できればと思います。
Sora 向け負荷試験ツール
実は時雨堂は負荷試験も仕事で請け負ったりするのですが、それらのノウハウを生かして、Sora に対して負荷をかけるツールというのを気軽に利用できるような仕組みを提供しようと考えています。
とはいえ WebRTC の負荷は CPU 凄まじく食べるので 1 台でなんとかとかは絶対できません。そのため複数台がうまいこと連携する仕組みなども用意できればと思います。
日本の WebRTC 市場を取りに行く
時雨堂は零細企業ということもあり、ほそぼそとやっておりましたが、会社が安定し、製品が熟成してきたという状況もあります。取りに行くなら今のタイミングしかないと考えています。
日本で WebRTC といえば時雨堂を不動にする
WebRTC を利用したサービスやシステムを作る時に「必ず候補としてあげられる」企業を目指します。
絶対にやらないこと
時雨堂はミドルウェアを販売している会社ですが、自社製品を利用した商用サービスというのは絶対にやらないようにしています。
ミドルウェアを販売しているということは「お客様が自社製品を使って何何をしているのか、何をしようとしているのか」を把握しているということです。どのサービスがどのくらいの規模で利用しているのかまでを把握しています。
この状況での自社製品を使って商用のサービスは「お客様のビジネスやチャンスを奪う行為」だと考えていますので、絶対にやりません。
安心して弊社製品を検討いただければと思います。