「培養肉、今いくら?」

Shojinmeat Project
Shojinmeat Japan
Published in
10 min readMar 3, 2022

~最重要課題の現在

普段使いのSlideshareはログインが必要になったので、ここでも公開します。元⇒ https://www.slideshare.net/2co/ss-251277137

  1. 1. 「培養肉、今いくら?」~最重要課題の現在
  2. 2. 細胞培養肉をめぐる議論 食肉生産の環境負荷 が危機的。。。 そこで培養肉! 2013デモンストレーション 仔牛胎児血清 (FBS)使用 3000万円 かかる… 脱FBS成功! 価格も1/1000に (複数のベンチャー企業、 ~2018年) ※それでもまだ数万円 資金調達 ラッシュ … ? 小売できる 量, 質, 価格?
  3. 3. 細胞培養肉の「お値段」史 ・設備費込み? ・何費まで算入する? ・細胞足場の割合? ・どのレベルの培養肉? 急速に価格低下とは言われるが… ■培養肉価格(1食/one serving) ■ゲノム配列決定の価格 ■ムーアの法則(半導体) ↑こんなに安くなったはずなのに なぜ一般市販されない?
  4. 4. 設備 地代家賃 ・人件費 基礎培地 成長因子 (GF) 「お値段」内訳け 細胞に増殖や分化を促すシグナル物質、俗に「ホルモン」とも。 使用量は微量だが、1gで81億円(TGFβ)する事例もあり、培養 肉1kgあたり1800万円相当になる。 主に糖分・アミノ酸・ビタミン・ミネラルから成り、成分的にはス ポーツドリンクに近い。従来品( ¥1500/L)を使うと、培養肉 1kgあたり50万円相当になる。 従来方式(浮遊培養)にて、2000Lバイオリアクター(1億円前後) で1月1回8kgの細胞質が作れる。減価償却10年なら培養肉 1kgあたり10万円相当になる。 ※ここでの「培養肉」とは、筋芽 細胞を培養したもの
  5. 5. 低価格化の戦略 設備 基礎 培地 成長 因子 (GF) 今の”医療グレード”がオーバースペック。そこで… ・培養液のリサイクルで、培養液全体ではなく、 糖分とアミノ酸だけ補充すればよくする。 ・大豆分解物など、精製度の低い糖分とアミノ酸を使う 大型の無菌設備が必要だが高価。そこで… ・さらに大規模化して「規模の経済」を利かす。 ・中空糸膜などにより、細胞密度を上げてる。 ・一部の性能を削って簡素化する。 現状では抽出と精製が高コスト。そこで・・・ ・精製や抽出がしやすい、少量で済むGFの開発 ・似た効果を持つ代替物質を使う ・GFが無くても細胞が増える系を設計する。 参考情報: https://bit.ly/3KgGqKx or https://www.slideshare.net/ 2co/2021–244884151 25P 参考情報: https://bit.ly/3KgGqKx or https://www.slideshare.net/ 2co/2021–244884151 31P 参考情報: https://bit.ly/3KgGqKx or https://www.slideshare.net/ 2co/2021–244884151 48P 主ソース GFI/Delft技術経済性分析(TEA) https://gfi.org/blog/cultivated-meat-lca-tea/
  6. 6. 主ソース: Joe Fassler氏による The Counter記事 https://thecounter.org/lab-grown- cultivated-meat-cost-at-scale/ 低価格化の戦略に嫌疑がかかる ・基礎培地をリサイクル利用しても、培養 肉の価格の下限は現状4000円/kg ・大豆加水分解物等は研究開発が途上 ・細胞培養はClass8クリーンルームなど事実上の医療グレードを要し、規 模の経済が成立しないのでは?(GFI/DelftのTEAで想定する年産1万tの 工場は、費用が$10億を越えて採算が取れない可能性) ・攪拌性、コンタミリスク、老廃物蓄積などの制約条件により、 バイオリアクターの大きさには、25kL辺りで上限がある。 設備 基礎 培地 成長 因子 (GF) ・GFI/DelftのTEAでの「精製と抽出がし やすく、少量で済むGFの開発や代替物 質などの低価格化策」に根拠や実例が不 十分 ↑この記事が根拠とする、「 GFI/Delft以外でのTEA結果」 https://engrxiv.org/preprint/view/1438 https://www.scribd.com/document/526220188/Cultivated-Meat-r eview-of-the-cost-of-manufacturing
  7. 7. 嫌疑への反論(+補足事項) 主ソース GFIの専門家の発言 https://twitter.com/elliotswartz/status/1465807343631880194 設備 基礎 培地 成長 因子 (GF) ・食品グレードのアミノ酸や安価な加水分解物は、先例が多くある (↑Shojinmeat Projectでも、一般飲料での細胞培養を実証済みである) ・すべてを医薬グレードにする必要はなく、現に MosaMeat社は「部分的医薬グ レード」である。食品グレードの大型無菌培養設備の先例も多い。 ・バイオリアクターの培養方式は浮遊培養に限らず、 AirLift混合やマイクロビーズ 方式もあり、攪拌性は大規模化への制約条件にならない。 ・開発されつつある様々な新規の細胞培養方法を考慮していない。 (↑食品用無菌真空パックの細胞培養への転用など、ハードウェア改善の余地は実際大きい) ・セルラーゼの$10/kgなど、安価な非医薬ペプチド生産の実例がある。 ・ORF Genetics社はIGF-1を2025年に$50/g、LaurusLabs社は $100-$500/g、タンパク質は$1~$10/gとしている。 ・アルブミンをひよこ豆成分で代替して培養液コスト -60%の例もある。 ・GFI調査では、33%の会社が2022には培養液が$1/L以下としている。 (↑最もコストのかかる抽出や精製に関する言及がないなど、疑念は残る)
  8. 8. 細胞培養肉の種類(完成度レベル) 低価格で大規 模な細胞培養 生 体 組 織 と し て の 完 成 度 ハイブリッド肉 細胞ペースト 本物のステーキ肉 細胞が配置 されている 生体組織とし て機能する 細胞が分化 している 血管新生 3Dプリントでの細 胞配置 細胞足場の活用 どの順番でやっても良い 細胞が ある Maastricht Uni, 2013 各種の細胞の用意 文献:E.A. Specht, D.A. Welch, E.M.R.Clayton et al., https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1369703X1830024X EAT JUST, 2020
  9. 9. ハイブリッド肉(植物足場&繊維芽細胞)~妥協の産物? 「筋肉組織そのものを培養」 ↓さすがに困難 筋芽細胞/筋肉衛星細胞の増殖からの分化 2017頃 ↓筋芽細胞に必要な成長因子が安くならない 「足場の上で線維芽細胞を培養する」2019頃 ↓ 線維芽細胞を増やしたい 植物性細胞足場 +「安価な」FGF2成長因子 + 無血清培地(ITS等の生存因子込み、各社開発) 現在 肉として の完成度 ハイブリッド肉 細胞ペースト 本物のステーキ肉 EAT JUST, 2020 Maastricht Uni, 2013 ※Future Fields社(昆虫)、NuProtein社(細胞部品)、 Tiamat Sciences社(植物)などの選択肢 (成長因子FGF2さ えあれば増やせる )
  10. 10. ハイブリッド肉(植物足場&繊維芽細胞)の特徴 線維芽細胞は比較的増えやす いため、コストで成長因子の割 合が減り、設備費と運用費の割 合が相対的に増える。 現状の成長因子では $50~100/kgとなり、一般上 市にはあと一歩の価格にな る。 大豆ペーストの代わりに細 胞ペーストを使うだけの差 で、植物肉やつみれと食感 が近い。 海産物は線維芽細胞の培養方 法からして不明で、ハイブリッド 肉でも困難がある。 フォアグラなど、線維芽細胞で はない肉は作れない。肉の風味 の実現には、繊維芽ではなく脂 肪細胞が必要になる。 3Dプリンター等を使っても、 食感が従来のステーキの 再現には至らない。
  11. 11. ハイブリッド肉の、その先へ 超大型化、中空糸膜、組織培 養、培養液リサイクル、無菌化 方法など、新たな培養方式の工 学的実装が求められる。 線維芽細胞用のFGF2以外 に、脂質など非ペプチド系の 成長因子も安くなる? 線維芽細胞肉は植物肉に 対して優位性があるのか? 培養だからこその風味や食 感はあるのか? 海産物の細胞培養は基礎研究 が必要だが、高スループット化 や自動化の余地が大きい。 脂肪細胞の培養の低価格化、 筋芽細胞の培養の低価格化な ど、安価に培養可能な細胞の種 類を増やす必要がある。 やはり本丸は培養ステーキ を作ることで、何らかの生 体組織工学技術は必須に なる。
  12. 12. 最終的に、培養肉は普及するのか? 発明 期待の山 がっかり 啓発活動 実になる “ハイプ曲線” https://ja.wikipedia.org/wiki/ %E3%83%8F%E3%82%A4 %E3%83%97%E3%83%BB %E3%82%B5%E3%82%A4 %E3%82%AF%E3%83%AB PP到達 https://www.digitalfoodlab.com/top-foodtech-trends-2019-dfinsights/ https://shojinmeat.medium.com/%E7 %B4%B0%E8%83%9E%E8%BE%B 2%E6%A5%AD%E3%81%AE%E6% 99%AE%E5%8F%8A%E3%82%B7 %E3%83%8A%E3%83%AA%E3%8 2%AA-e7ea5a9c8c05 ←Medium版 Slideshare版↓ https://www.slideshare.net/2co/ss-23 5586436 本格普及は2030’s~ 他の新興技術同様、いくつ か段階を経る見込み 線維芽細胞肉で山越え 培養ステーキ肉で谷越え ↓普及プロセスの見通し↓

--

--

Shojinmeat Project
Shojinmeat Japan

Japan-based cultured meat and cellular agriculture citizen science project