未来の農業、「細胞農業」

農業と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。田園風景?トラクター?牧場?

今、これらのイメージと全く違う「農業」が生まれつつあります。

細胞農業(Cellular Agriculture)と呼ばれる新たな「農業」では、農産物を細胞培養で生産します。この技術はまだ研究開発段階ですが、例えば酵母に牛乳を作らせたり、筋肉細胞を増やして食肉を作ったりすることで、「牛がいらない牛乳」や「家畜を殺さない食肉」が可能になります。

そんな「細胞農業」の風景は、現在の農業のものとは全く異なる姿になると予想されています。ここでは軽い思考実験として、アメリカのバイオベンチャーのMuufri社が実際に取り組んでいる、「牛がいらない牛乳」を想像してみましょう。

まず、牛がいないので牧草地や牛舎がいりません。牧草地が無ければ、トラクターや干し草もないでしょう。その代わりに牛乳を作る微生物への養分(培養液)が必要です。この培養液がパイプラインで届くのか、とかして使う固形肥料になるのかは分かりません。

また、「バイオリアクター」とよばれる、タンクのようなものが並ぶでしょう。このタンクの中で微生物が活動して牛乳が作られます。ただし現在の牧場にも牛乳タンクはあるので、これについては違いが分からないかもしれません。

細胞農業の風景

ここまで想像してみると、「細胞農業」の景色がうっすら浮かんできます。その景色はビール工場か味噌醤油工場のようになるでしょう。場合によっては、都心の高層ビルや月面基地で細胞農業が営まれるかもしれません。“Shojinmeat Projecct”が取り組む純肉も細胞農業の一つであり、将来は都心や家庭で食肉を作ることを目指しています。

細胞農業のイメージは、すでに植物工場が描いているものと似ていると気づく人も多いかもしれません。ただ、細胞農業は植物工場よりも広い概念であり、はるかに巨大なスケールで「農業」の意味を変えるかもしれないのです。