Shojinmeatが目指すもの -豊かなお肉と未来を育てるプロジェクト(1)
「いただきます」
「ごちそうさま」
お馴染みの食事のあいさつです。
この2つは日本独特のあいさつで、食べ物への感謝と、大変な思いをして食べ物を用意してくれたことへの感謝の気持ち、食事への敬虔な気持ちを表すあいさつの言葉、と言われています。
でも、「いただきます」とは、何をいただくのでしょうか。
「ごちそうさま」について、「ちそう(馳走)」とは何でしょうか。
我々が取り組む人工培養肉開発プロジェクト”Shojinmeat”は、このあいさつの意味と深い関係があります。
それは具体的にはどういうことなのか、これから全3回にわたって、その意味をお伝えできればと思います。
Shojinmeat Project代表
羽生 雄毅
人工培養肉って何?
そもそも「人工培養肉」とは何でしょう?普通の肉と比べてどこがいいの?という疑問が湧いてきます。
食べ物である以上、「おいしいの?」という疑問も大切です。
培養肉については、ウィキペディアでも日本語記事が作られているので、参考になります。
培養肉(ばいようにく)とは、動物の個体からではなく、可食部の細胞を組織培養することによって得られた肉のことである。
動物を屠殺する必要がない、厳密な衛生管理が可能、食用動物を肥育するのと比べて地球環境への負荷が低い、などの利点があり、従来の食肉に替わるものとして期待されている。現在のところ、高価であることが培養肉の課題の1つである。
しかし、技術の発展によって、従来の食肉と同等程度までに低価格化することができると予測されている。
*2016.03.23の時点
人工培養肉の作り方は、コンセプト的には簡単です。
まず、牛や豚から筋肉の細胞を少しもらいます。細胞は定期健康診断での採血のような方法で採取します。将来的には、皮膚や毛根の細胞からiPS細胞を作り、それを増やして肉にする方法も考えられます。
次に、筋肉細胞を「培養液」と呼ばれる栄養スープの中で増やします。この技術は細胞培養と呼ばれます。概念的には、日本酒・醤油・ビール・みそ・ヨーグルトを作るときに、大きな樽の中で酵母菌や乳酸菌や麹を増やすのと同じです。
こうして筋肉細胞のかたまり、つまり「肉」ができます。これが人工培養肉です。
人口培養肉の何がすごいの?
この人工培養肉を作るのに、牛や豚を殺す必要はありません。(細胞をもらう時に、ちょっと「ちくっ」とするかもしれませんが…)また、 「狂牛病」や「人畜共通感染症」などの問題も起きません。
牛や豚を育てるための広大な牧草地や、大量の水もいりません。
やろうと思えば都心の高層ビルでも肉が作れるので、ガソリンを燃やして地方から運んでくる必要もありません。(「地産地消」です)そのため人工培養肉は省資源で環境にやさしいとされ、また省資源である以上、理論的には今の肉よりも安くなるはずだと言われています。
ただし、筋肉細胞を増やすタンクの消毒はどうするのか、どんな料理で使えば一番おいしく食べられるのかなど、まだ未知のことが多い技術でもあります。
そして人工培養肉には、今のところ致命的な欠陥があります。それは、とてつもなく高いことです。
今の技術のままでは、人工培養肉をスーパーで売ろうとすると、おそらく200gで300万円になってしまいます。300円ではありません。300万円です。
そこで我々は、この値段を下げる研究を中心に取り組んでいます。
まず、培養液に大幅な改良が必要です。
今の培養液には「仔牛血清」という成分が含まれており、これを作るために牛を殺しています。
それじゃ意味無いじゃない!ということになります。仔牛血清は狂牛病の危険もあり、そもそも非常に高価なので、これを使わない培養液を開発する必要があります。
そこで我々は、仔牛血清を使わない培養液を、今の百分の一、千分の一の値段で作る見通しを立て、すでにある程度の実証試験に成功しました。
この成果は、とある記者さんの大変な厚意もあり、雑誌でも紹介されました。
今は、さらに研究体制を強化して開発を進めているところです。
そしてこのプロジェクトを、”Shojinmeat Project”と呼んでいます。
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Shojinmeatが目指すもの -豊かなお肉と未来を育てるプロジェクト(2)
Shojinmeatが目指すもの -豊かなお肉と未来を育てるプロジェクト(3・終)
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