ForeRunner: 12–1: 侵攻 1–1

この星系に転移窓を設置した後、ナブロスに置いてきた私のミメクトームから最後の連絡が入った。量子的に励起した場合、転移窓はやはりこの宇宙に開いていない可能性がある。

「ローガ、こちらが転移窓を開けることはあちらに伝わったな」

共有感覚空間を通して記憶を転送した。

「君のミメクトームの最後の記憶だが、もしそうだとすれば、こちらの技術を確かめるんじゃないだろうか」

エズラが割り込んできた。

「まだ転移窓を操作できるだけなのだから、宇宙を作れる存在との競争などとうてい無理だ。ラバル、君は本当にそれを心配しているのか?」

やはりミメクトームの記憶にあるように、そしてアズルが気にしたように、ヴェールコール人にしても教えをもたらした者への信仰のようなものがあるように思える。それともこれはエランとテランの歴史がもたらす不信でしかないのだろうか。

「ただ乳離れ、この言葉があてはまらない種族もいるが、そのために身を隠しているだけではないのか?」

ローガはそう言うが、そのためだけに宇宙まで作って隠れるだろうか。

「ローガ、君たちの名前で各種族に連絡だけはしておいてくれないか? 転移窓の監視をしておいてほしい。なにかがこちらに放り込まれたとしたら……」

そう言っている時に、警報が響いた。

「そうしておこう。それと、γ-1ではどうやら星系には乗り出しているようだ」

船の目のいくつかが近付いてくる船を見つけていた。船尾からは炎を吹き出している。

「力技での乗り出しだな。こちらが動き回ったらどうするつもりなんだ?」

エズラにγ-1の通信の傍受を頼んだ。γ-1の住人の言語体系はまだ解析していない。テランの船の計算資源を使い尽すことになったとしても、急がなければならない。その間はエランとヴェールコール人の船がテランの船を守る必要がある。

「力技だから、到着までにかなり時間がかかるな。何とかなるだろう」

エズラはそう答えた。


実際のところ、確かに時間がかかった。γ-1の住人と到着にも、言語体系の解析にも。

ただ驚いたのは、どうやら星系のあちこちにロケット・ユニットを配置していたらしいことだ。こちらが数回移動してみたが、γ-1の船は所々で幾分速度を下げながらも、ユニットの交換の後に方向を変えてきている。

「ここまで執念深い星系探査というのは珍しいな」ローガが呟いた。「これでは星系探査というよりも守備隊のようなものじゃないか?」

「他の種族にも接触の記録はないんだろ?」

ローガに訊ねるが、答えはわかっている。接触があれば、こんな星系探査の方法は取っていないだろう。

「接触があったとしても、それはモニュメントだけだな」

やはりローガからの答えはそういうものだった。

「あぁ、それでか」

エズラとの接続が急に回復した。

「解析できたのか?」

「細かいところはまだだがおおむね」

「『それでか』というのはどういうことなんだ?」

「どう言えばいいのかな。彼らにとってモニュメントは悪魔の象徴のようなものらしい」

私もローガも返答につまった。

「テランとエラン、そしてβ-1の住人以外には、ある程度調整された生存本能がある。テランとエランの場合、野放しの本能だが」

「つまり?」

「γ-1の住人にも調整されてはいるもののそういう本能があるらしい。地球ほどではないが、やり直しに近い状況があったようだ。それで、知性を授けたのは悪魔ということになっているらしい」

「それがモニュメントか」

ローガの声には呆れた様子が感じられる。

「人のことは言えないがね。地球でも同じような言い伝えはあったようだから」

エズラは地球の文献の要約を回してきた。

「だとしても、それを制御できているようじゃないか。少なくとも破滅はしていない」

「まぁそこは地球との違いだろうな。目に見えるモニュメントがあったという違いだ」

ふいに船の目のいくつかが転移窓に向いた。

「ラバル、数時間遅れだろうが、いくつか返信が来た。こっちの船も気づいた」

ローガが早口で言った。

「あぁ。こっちの船も気づいた。転移窓から小さな何かが現われた。いや、何かというより空間か?」

あちらの宇宙から何を送ってきたのだろうか。