Shunsuke Kawai
Shunsuke Kawai
Published in
6 min readMay 1, 2016

--

UX Books / Understanding Context

2016年4月23日にBOOK CLUBを開催しました。

本の概要

「Understanding Context」
インフォメーションアーキテクトである著者が、サービス設計における「文脈(Context)」の内容や流れを適切なものにするための方法論を書いた本です。

▶内容
・コンテキストの著書における定義・考え
・デジタルに触れるとき、ユーザはどのように文脈を解釈するか
・ラベル、関係性、規則によって、どのように文脈のかたまりが作られているか
・クロスチャネル、マルチデバイスの製品やサービスをよりよい形で作るにはどうするか
・言語によって、いかに組織やソフトウェア、IoTの基盤が作られているか
・ユーザエクスペリエンスを文脈の観点から分析するモデルとはなにか

▶所感
本書はコンテクストをデザインするための方法について書いているのではなく、サービスの作り方よりも仕組みを理解するための本というのが正直な印象です。ただ、コンテクストの概念を理解することで、ユーザーのコンテクストまで考慮したUXデザイン・サービスデザインを実践するための知識・議論ができるのではないかと考えています。

デジタルの出現により人間の理解が追いつく以上の速度でコミュニケーションが複雑化することで、コンテクストの理解や共有がより難しくなっています。今までは、機械や電話などはいつも特定の場所に置かれているため、現実世界と同様に、コンテクストの中に物理的な情報がまだ多く残っていました。しかし現在は、PC・スマホなどは、どこでどのような状況で使われているか全くわからないため、コンテクストと場所との関係が完全に消滅してしまいました。

デザインには、「ユーザにどのような情報を与えるか」という側面があり、”情報とは何か”を常に考える必要があります。だからこそ、コンテクストを考慮したUXデザイン・情報アーキテクトがより重要になってくると考えています。

しかし、コンテクストは情報アーキテクチャーよりも遙かに大きなトピックであり継続して議論しなければならない内容だと感じました。

コンテクストの再定義

“Context is an agent’s understanding of the relationships between the elements of the agent’s environment.”
「コンテクストとは、行為者が自分の周辺環境の中にある要素同士の関係性を理解することである」

▶コンテクストの構成要素

コンテクストの構成要素

行為者(Agent)
周辺環境の中で行為を起こす人やモノ。必ずしも人ではなく、必ずしも全員が同じように考え動くわけではない。

理解(Understanding)
行為者が周辺環境の意味を理解し、自分と周辺環境がつながっているという認知・感覚を持つこと

要素同士の関係性(Relationships between the elements)
全てのものは細かなパーツ(要素・情報)に分けられる。 コンテクストとは、そのパーツ同士の関係性のこと。

周辺環境(The agent’s environment)
行為者や要素を含む全てを包み込むもの。ここでは神が作った客観的なものではなく、行為者から見た主観的なものを示します。

コンテクストはインタラクションから生まれるものであり、行為者がどんな行動をし、どう理解しようとしているかにも関わってくる。同じ対象を見ていても、コンテクストはそれぞれの行為者の視点や理解のあり方によって変わる。行為者ごとに異なる“World”の中におり、それによって理解のあり方に影響を受けます。

今までの定義のように、コンテクストを静的なものとして捉える(行為者は外からそれらを理解しようとする)と、「どのユーザも同じように解釈してくれるだろう」と思い込んだデザインになってしまいます。

情報の定義と分類

情報とは、メッセージや知識・意味など、何かを伝えるものです。コンテクストが作られるうえでの媒介となる要素である。これらを理解することで、コンテクストをデザインする重要な手がかりになるのではないかと思います。

デジタル(Digital)
コンピュータが作り出し、コンピュータ同士でやり取りする情報。人間には読めない。

意味的(Semantic)
コミュニケーションによって意味を伝達するために使う人工的な情報。
例:言語、文字、グラフィック

物理的(Physical)
物理的な行動を起こす際に、周辺環境を理解するために
使う情報。
例:触覚、視覚

人間の理解のプロセス

人間は、時代による変化が遅いような情報から理解していきます。
著書では、認知/感覚、口語、文章、情報構造/デザイン、テクノロジーの順となっています。思考というよりも、身体に紐づく感覚や認知を通じた情報から先に理解します。

コンテクストと空間近接論について

空間近接論とは、人が空間的に対話することを研究し、他人との距離のとり方や意思の伝達方法は、民族や文化によって、またお互いの新密度によって異なることを実証する学問。

ホールのパーソナルスペースを例としたモデルでは、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化の二つ分けられます。

高コンテクスト文化とはコンテクストの共有性が高い文化のことで、お互いに相手の背景・周辺環境を察しあうことで生まれる環境です。
低コンテクスト文化では、コンテクストに依存す るのではなく、あくまで言語によりコミュニケーションを図ろうとする。そのため、言語に対し高い価値と積極的な姿勢を示し、 コミュニケーションに関するスキルが必要になります。

ユーザー同士のインタラクションのデザインをする場合、ユーザー同士の距離感に注意しなければならないと感じました。パーソナルスペースを広げることで、コンテクストの質も変化するのではないでしょうか。

--

--