触覚センサと物理的に柔軟な身体を持つロボットによる部品挿入学習に関する研究をIROS2023で発表します

Masashi Hamaya
OMRON SINIC X (JP)
Published in
Sep 20, 2023

本研究はロボティクス分野のトップ会議の一つである、2023 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS 2023)に採択されました(採択率 43.3%)。

Joaquín Royo Miquel, Masashi Hamaya, Cristian Beltran-Hernandez, and Kazutoshi Tanaka, “Learning Robotic Assembly by Leveraging Physical Softness and Tactile Sensing” [paper] [project page]

本研究は、Joaquín Royo Miquelが弊社インターンシップとして行われた成果です。本稿では、本研究の概要についてご紹介いたします。

背景

我々は、ロボットによる部品組立において、部品の挿入を行うための厳密な位置合わせや、部品それぞれに適した治具の使用を可能な限り減らし、より容易にロボットシステムを立ち上げることを目的としています。こののような状況においては、対象となる部品の挿入位置や、部品の把持姿勢に不確実性(ばらつき)が生じるため、作業の成功率の低下が懸念されます。我々の過去の研究[Hamaya+, 2020], [Tanaka+, 2021]では、柔軟手首を使用して安全に組立動作を学習する手法を提案してきましたが、ある特定の姿勢で部品を把持することが前提となっていました。

このような課題に対し、我々は、柔軟手首と触覚センサを統合してより頑健な組立動作を学習する手法を提案しました。触覚センサは、物体の把持姿勢を大まかに推定できるだけでなく、部品同士の接触情報をより詳細に取得することができます。特に、部品組立作業は複数のサブタスクに区分化できることが知られており、我々はサブタスクの遷移と触覚情報の変化に大きな関連があると考えました。組立におけるサブタスクには、例えばペグ挿入課題において、ペグ先を挿入する穴の縁に添わせる、ペグの姿勢を修正する、ペグを挿入する、という作業が挙げられます。ここで、ペグの先端が穴の縁に接触した際に、大きな触覚の変化が生じることが想定されます。このような現象は、部品の把持位置にばらつきが生じた場合でも発生し、この触覚の変化を捉えることでより安定したサブタスクの遷移を行えるのではないかと考えました。

提案手法の概要

Fig. 1 に提案手法の概要を示します。本提案手法は、 a)触覚を利用したサブタスク遷移のための穴検知アルゴリズムとb)探索と挿入コントローラで構成されます。本研究では、画像ベースの触覚センサDigit [Lambeta+, 2020]を使用しています。

穴検知アルゴリズムは、ペグの先端が挿入する穴の縁に接触したことを検知するアルゴリズムであり、ロボットがペグが穴に入っていない状況でペグを挿入する失敗を防ぐことができます。本研究は、触覚センサの平面にかかるトルクを推定し、トルクの周波数成分を入力とした、変分オートエンコーダに異常検知問題として、穴検知を行います。

穴が検知されたかどうかに基づいて、ロボットは穴の付近に到達するための探索コントローラ、ペグを挿入するための挿入コントローラを切り替えます。探索コントローラは、モデルベース学習を使用しています。ロボットの順モデルを学習し、モデルで未来の状態を予測することで最適な行動を決定します。挿入では、手設計コントローラを使用します。柔軟部分が変形することでペグの姿勢のずれを自動で修正できるため、複雑なコントローラが不要となります。

Fig.1: 提案手法の概要

実験

我々は柔軟手首 [Tanaka+, 2020] と触覚センサを搭載したロボットを使用してペグ挿入実験を行いました。

実験の結果、不確実性が比較的小さい場合(把持姿勢のばらつき最大5°、穴の位置の標準偏差2mm)では100%の成功率を示しました。また、比較的不確実性が大きい場合(把持姿勢のばらつき最大20°、穴の位置の標準偏差10mm)の場合で70%の成功率を示しました。また、穴検知アルゴリズムは1種類の部品で学習されていましたが、異なる種類の部品にも適用できることを確認しました。また、穴検知アルゴリズムを使用しない手法と比較してより高い成功率を示しました。

Fig.2: Robot experiments under grasp pose and hole pose uncertainty

将来展望

我々の手法をより多様な種類の部品に拡張し、作業達成時間を短縮することが今後の課題となります。我々のロボット運動学習技術に関して、技術相談や共同開発、共同研究に興味のある方はぜひご連絡ください(contact@sinicx.com)。

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