ユーティリティトークンの最適発行枚数について

ユーティリティートークンの最適な発行枚数について、SKILLCOINの発行枚数を検討した際の経緯を交えて考察をしたいと思います。

SKILLCOINの総発行枚数は300億枚です。
この枚数は、SKILLCOINプロジェクトが目指すプラットホームにおいて最適な流通量となるよう、経済学で用いられる「貨幣数量説」に基づいて算出しています。

貨幣数量説とは

貨幣数量説とは、物価水準、通貨の総発行枚数、流通速度の関係を表す経済学の仮説です。通貨の発行枚数と流通速度が物価の水準を決めることになるので、政府や通貨当局が通貨管理政策として通貨発行量の算出の参考にもされています。

貨幣数量説では、フィッシャーの交換方程式が用いられ、以下の式によって表されます。

貨幣量 × 流通速度 = 物価 × 取引量

ユーティリティートークンへの応用

貨幣数量説のフィッシャーの交換方程式はユーティリティートークンの価格算定にも応用することができます。ユーティリティートークンのトークン経済圏においては、以下の項の関係が式で表されます。

M:経済規模
 V:流通速度
 P:サービスの価格
 Q:サービスの利用量

MV = PQ

この式は、Chris Burniske氏のCryptoasset Valuationsを参考にしています。

経済規模とトークン価格

具体的な例を見ていきましょう。
Chris氏のブログでは、クラウドストレージのFilecoinを例に挙げており、Filecoinサービスの価格をP($/GB)、それが利用される量をQ(GB)と定義しています。
これを掛け合わせたPQ($)がFilecoin経済圏における価値の交換量であり、同氏はそれをFilecoin経済圏におけるGDPとしています。
また、流通速度(V)については、年間に何回の交換(購入)が行われたかを表しており、この例ではFilecoinサービスを年間何回購入したかという意味になります。

例えば、価格が100円/GB、月々平均5GB分購入、10万人が利用、年間12回利用であれば、

PQ=100*(5*100,000*12)
 =600,000,000

となり、GDPであるPQは6億ドルとなります。

経済規模(M)の算出は式を変形して以下のようになりなす。

M=PQ/V
 =600,000,000/12
 =50,000,000

 
つまり、上記例の前提条件における経済規模(M)は、50,000,000ドルということになります。
仮にFilecoinが1000万枚のトークンを発行していたとすると、1枚あたりのトークン価値は以下のようになります。

1枚あたりのトークン価値 = 経済規模/トークン発行枚数
 = 50,000,000/10,000,000
 = 5
 
1枚あたり5ドルが適正価格ということになります。

SKILLCOINの経済規模

上記をSKILLCOINに当てはめて考えてみます。
まず、SKILLCOINプロジェクトによって置き換えられる既存市場の市場規模を見てみましょう。

一旦、わかりやすくするために日本市場を対象に話を進めます。
総務省および国税庁から発表されている統計によると日本における転職者数はおよそ311万人、平均年収は421万円です。
総務省統計局 労働力調査
国税庁 民間給与実態統計調査結果

転職仲介業者に支払われているコストを仲介手数料は年収の30%として計算します。必ずしも全てが仲介業者による転職ではないですが、派遣や請負など他の転職方法にもSKILLCOINプラットホームの活用が可能であるため、それらも同程度のコストが発生しているものとし、概算を算出します。

コスト = 4,210,000 * 0.3 * 3,110,000
 = 3,927,930,000,000

 
3.9兆円がGDP(PQ)となります。

また流通量(V)は、311万人が年に1回転職しているためV=1であり、経済規模(M)は以下の式で表されます。

経済規模(M) = PQ/V
 = 3,927,930,000,000/1
 = 3,927,930,000,000

経済規模(M)も3.9兆円となります。これがSKILLCOINプラットホームによって置き換えられる日本の転職市場規模であり、SKILLCOINの経済規模の概算値となります。

トークン発行枚数の考え方

経済規模が3.9兆円と算出されましたが、ブロックチェーンを活用した職歴証明といっても一般的なユーザーリテラシーではピンとこない人が多いと思います。リテラシーが形成され全ての市場が置き換わるには長い時間が必要になります。

そこで、当プロジェクトの初期段階ではイノベーター理論におけるイノベーターとアーリーアダプターをターゲットとしたサービス展開を行います。イノベーターは全体の2.5%、アーリーアダプターは13.5%のボリュームで世の中に存在するので合計16%の人口がターゲットボリュームとなり、直近で目指す経済規模は3.9兆円の16%の6,300億円となります。

トークンの1枚あたりの価格は、あまりに小数点が増え過ぎたり桁が大きすぎたりすると直感的でなくなり、計算ミスが発生しやすくなります。そのため将来的な実利用の可能性を考慮すると法定通貨に対して1〜4桁以内の倍率に抑えたいと考えました。

イノベーターとアーリーアダプターのみをターゲットとした上記の経済規模における一枚あたりのトークン価値を以下のように計算し、SKILLCOINの総発行枚数が理想的な桁数に収まるように設定しています。

1枚あたりのトークン価値 = 経済規模/トークン発行枚数
 = 6,300億円/300億枚
 = 11円(≒0.11ドル ※)

これがマジョリティ、ラガードまで含む全体ボリュームになると経済規模が3.9兆円なので、1枚あたりのトークン価格は130円(≒1.3ドル ※)となります。また、ワールドワイドに事業を拡大した場合も単純人口比で55倍しても4桁以内に収まります。
※USD/JPY=100で計算

まとめ

・実経済における通貨の発行枚数は貨幣数量説を用いて算出される
・貨幣数量説はユーティリティートークンにも応用が可能
・SKILLCOINの発行枚数も貨幣数量説に基づいて算出している
・トークンの経済規模と発行枚数によって適正トークン価格が決定する
・SKILLCOINの経済規模は日本市場において3.9兆円
・法定通貨に対しての倍率が1〜4桁になるよう発行枚数を設定している

今後様々なユーティリティトークンが世に出てくると想定されますが、
この貨幣数量説に基づいた算出方法は様々なトークンに応用可能です。興味のあるトークンを見つけたら自分なりに計算してみると面白いかもしれません。