スタートアップのエンジニア採用

採用競争力が低くても生産性の高いチームをつくる術

Kohei Kataoka
SOELU Developers
6 min readJan 6, 2019

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株式会社ワクテクというスタートアップでCTOをしているカタオカといいます。オンラインフィットネスサービス『SOELU』を開発しています。

今日はスタートアップのエンジニア採用について書きます。あなたが会社を興してプロダクトを作ることになったら、どんな開発チームを作りますか?どんなエンジニアを採用したら、いいプロダクトが作れるでしょう?

答えは分かりきっていて、スタートアップは短期間でプロダクトを急成長させることを目的とした組織なので、経験豊富で機動力のあるエンジニアを少数精鋭で集めるのがいいです。

…が、これができるのはごく小数のスタートアップだけです。簡単そうに書きましたが、めちゃくちゃ難しいです。

まず、優秀なメンバーに高い年収のオファーを出すキャッシュがありません。転職ドラフトでスタートアップが提示している年収を見るとよく分かりますが、キャッシュの余力がないのでメガベンチャーの提示するオファー金額に敵いません。

次に、スタートアップには優秀なエンジニアを引き付ける魅力が多くありません。福利厚生はよくないし、会社に社会的信用はないし、プロダクトは急ピッチで作られていて粗が目立ちます。

なので、スタートアップは一般に採用がとても難しいです。一気に優秀なメンバーを集められるのは、大きなピッチイベントに出て話題になったとか、Fintechのようなバブってる分野で大型資金調達をしたとか、CTOが著名な人で個人に採用力があるとか、そういう恵まれた状況に限られます。

ではその他大勢の採用力の低いスタートアップはどうやって開発チームを組成したらいいでしょう。

よくあるのは、優秀なエンジニアに副業で手伝ってもらうという戦略です。正社員では雇えなくても、副業で参画してもらうのは結構ハードルが低いです。これは一見よさそうに思えます。実際、前職で一緒に働いた人など信頼がおけて優秀であることが分かっている人が協力してくれることもあって、出だしは順調に進むと思います。

ですが、この採用はいつもうまくいくとは限りません。技術力があっても、副業で安定したバリューを出すのはけっこう難しいことです。自分の本業が忙しくてなかなか副業に時間が割けないときもあります。自分の生きがいになっている趣味や家族の時間があって、それらを優先したくなるときもあります。その中で結果を出せる人は限られます。強い縁があって本気で会社を応援したいと思ってくれている人や、忙しい状況でも自分を律することで成果を上げることができる人なら副業でもバリューを出せると思います。

そのような理由から、会社の命運に関わるような開発の仕事を副業の人にお願いするのは当然リスクがあります。本人は重圧を感じるし、会社としても計画通りにプロダクトをグロースできない危険性があるし、双方にとって不幸になる可能性があります。

そして、スタートアップでは会社の命運に関わらない仕事のほうが少ないのです。

副業でも比較的バリューを発揮しやすいのは、技術顧問業のような、自分自身は手を動かさずに技術的な相談に乗るような仕事です。開発のボトルネックになっている箇所のリファクタリングなど、明確な期限がない仕事も副業と相性がいいと思います。

ぼくがいるワクテクという会社の開発チームが、まさに前述したような副業メインの開発チームでした。そして副業メインの開発組織に限界を感じ、現在はフルコミット中心の開発体制に変化しています。フルコミットといっても、最初に述べた通り年収の高い経験豊富なエンジニアを何人も雇えるわけではありません。新卒や休学中のインターン生がメインです。

それでも、優秀なエンジニアに副業で手伝ってもらっていた頃より今のほうが開発速度や品質がずっと高い状態になっていると感じています。

経験の浅いメンバーで構成されたチームでも開発速度や品質を高い状態にできたのは、ほとんど実装方針に迷うことなく短期間で開発できる状況を作ったことが影響しています。

具体的には、ぼくが尊敬していて信頼がおける方に、スタートアップとしては頑張った金額で業務委託として入ってもらいました。ぼくたちが作っているSOELUというプロダクトは、Webフロントエンドのリッチ化と開発効率の向上が最も大きな課題だったので、サービスそのものの開発ではなくフロントエンドの開発基盤の整備に注力してもらいました。その結果、ほとんど実装方針に迷うことなく短期間で新規画面を実装したり、安心して既存コードを変更できる体制ができました。

このことでぼくが学んだのは、スタートアップにはテックリードの存在がとても重要だということです。

テックリードを担う人が「どんなメンバーでもほとんど迷うことなく開発できる」状況を作ることで、経験の浅いメンバーでも安定した品質・スピードで開発を行うことができます。テックリードはCTOがいるならCTOが担ったらいいし、CTOがいない、またはCTOがカバーできない領域があるのであれば外から人を雇うのがよいです。

スタートアップは経験豊富なエンジニアを何人も雇うことはできませんが、地頭がよく吸収力のある若いメンバーなら集めやすい傾向があります。

テックリードが基盤を作ることで、経験は浅くてもやり切り力があるフルコミットメンバーが、経験豊富な副業のエンジニアよりバリューを発揮することもあるわけです。

この体制のいいところは再現可能なところです。いまエンジニア採用に困っているスタートアップがあるとして、おそらく同じようなチームを作ることができます。何人も優秀なエンジニアを雇おうとしなくていいので、なんとか頑張って開発基盤を作れる特別優秀なエンジニアを1人雇ってください。そしてその人が作った高速道路に乗ることで、いまいる経験の浅い若いメンバーがより活躍できる環境が作れるはずです。

ポイントは、イチからプロダクトのアーキテクチャを自分で設計し運用した経験のある人を探すことです。正社員は難しいので業務委託か副業でOKですが、フィーはしっかりと払うべきです(ここは人件費をケチるところではない!)。

文字ばかりの長文で読みづらい記事になってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。何かの参考になったら嬉しいです。Twitterなどで記事をシェアしていただけるとブログを更新するモチベーションになりますので、ぜひよろしくお願いします。

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