知念大地 非言語ゾーン

感覚に裏付けされた好奇心を更新すること

大地のおどりは特別だ。でも、本当はなにも特別じゃない。相対的に競争で突出した身体ではなく、ただのからだ、大袈裟に言えば、絶対的なからだがそこにある。言葉にできない大地のおどりから、「非言語ゾーン」について考えてみる。

「非言語ゾーン」

原始人はわが身ひとつで生き抜くために、大気中の湿度や音や匂いを鋭敏に感じ取って生きていた。味覚や嗅覚は医学的にも分子そのものを取り込んでいるし、触覚の原始的な即物性は、当たり前じゃなければ超能力だ。野に咲く花を見て「きれいだ」と想起する前の刹那を、思想家の西田幾多郎は「純粋経験」と名付けた。 そういう言語化以前の世界を、僕らは常に認識している。でも、それを言葉にできないから、認識してない様な錯覚に陥いり、どこか睡眠時の夢の様に捉えてしまう。

非言語ゾーンを語るために、まず言語ゾーンの性質を認識を試みる。高校生の時、山口さんという先生に「ことばが信用できない」と言った。大人びて言葉に退屈していた僕に、哲学的な山口さんは「人はことばの海に生まれた」と答えてくれた。たしかに言葉は、社会全体を網羅するシステムとしても、個人の動機形成にも機能している。

社会の言葉 個人のことば

社会システムとしての言葉というのは「分類の共有」なのだと思う。右と左、白と黒、食べれるものと食べれないものを分けることを意思疎通する方法。分けて存在/現象の相対的な位相を共有し、より高度なことを協力してできるようになった。

個人の指標としてのことばというのは「信じる力」なのだと思う。文字が発明される前、きっとことばはもっと魔術的だった。名詞は存在のすべてを表し、発声が個人と不可分な世界。ことばの海の深いところから発せられた声は一種のマントラで、魂の意志を現した。

しかし、文明が生んだ文字、印刷技術、インターネットによって、魂とことばの関係は大きく変わり、言語は深海の意志を離れて、ふわふわと海面に浮上してしまった。そして表面的に分類の役割を強めて自動的に情報化したネットワークは広大に拡張されていく。

分類→情報

魔術→意志

「情報と意志」は「熱と炎」の関係に似ている。情報は過ぎ去ってしまえば冷めていくが、意志の炎は薪をくべて燃え続けさせる事ができる。情報社会の危うさは、意志を忘れて冷めてしまえること。そうやって、「自分の意志」と「世界の情報」が判別できなければ、僕らは言葉の海におぼれることになる。そこで、非言語ゾーンが機能する。

大地のおどりと一緒に絵を描いたあと、舞台で力をぬいたら、ふと数か月前にイメージした風景を思い出した。目の前がそのイメージにそっくりだと気付いた時、そうであるならこの奥に、ここから見えないなにかがあるはずだった。川を渡って奥の島に近づくと心拍数があがる。何があるかわからないけど、なにかあるという確信があって、島に上って繁みをかきわける。木なのか、石なのか、地面なのか、風景なのか、音なのか、風なのか・・・。何かに注目するというよりは、自分の内側に集中しながらゆっくりと歩いていると、すでに通り過ぎてしまったような気分になった。そのまま進むと藪の中に4メートル位の流木をみつける。引きずりながら来た道を戻ると、石がつみ重ねてある場所が目に留まる。重なっている石を動かすと何千の蟻と卵。奥の隙間へ消えたあと、その位置に流木を立てた。

— -

僕は何か得体のしれない予感に従いながら、不思議な必然性を感じていた。距離をとって認識を分別するのではなく、 感覚に裏付けされた好奇心を更新することで、意志が立ち上がる。言葉で分類したり共有できない体験だからこそ、僕にとって大切で独特な経験として、世界を受容し、確信し、自らを更新するきっかけになる。

僕がそれを言葉にできない原因は、遊べなくなるからだかもしれない。パンクしそうな情報社会で、自分が記憶すべきことを夢が整理してくれるように、言葉にならない感触に僕らが出会うとき、言語ゾーンの情報はデフラグされる。

(デフラグ:ファイルの断片化を解消すること)

魂と言葉の乖離に向き合うことは、分かることではなく、未知をただ受け入れる段階にある。星を見上げて深呼吸するだけでいい。非言語ゾーンで僕らは、人間の未発達な(もしくは退化した)能力を活用している。

大地の踊りは特別だけど特別じゃない。それは、相対的ではない身体を言語化しようとする矛盾からきている。絶対的な現象は言語化できない。する意味がない。大地のおどりは、ためらわずに魂のことを語っているだけ。魂の振る舞いに身を任せて高速化することで、大地は世界と共振して情報をデフラグしている。

One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.