信濃講堂 × 杉原信幸 「アルプスの湖舟」

Sato Sosei
芸術祭の記録
Published in
2 min readSep 25, 2017
Photo:Tsuyoshi Hongo

杉原信幸は、2009年より木崎湖畔で毎年開催している「原始感覚美術祭」の発起人兼アートディレクターとして、この地で創作活動を行っている地元作家だ。僕自身、2012年に北アルプス山麓に越してきて、猿を追いかけながら2013年の原始感覚美術祭ではコーディネーターとして美術祭に関わり、参加作家として作品を展示していた。

杉原の制作スタイルは、自然素材との丁寧な会話を積み重ねる事が特徴的。今回の作品「アルプスの湖舟」は、大正6年より始まった日本最古の市民大学である「信濃木崎夏期大学」の舞台になっている信濃講堂に展開された、蚊帳と米粒で形どられたインスタレーション作品だ。膠で北アルプスの形に固められた蚊帳が、梅雨の時期に湿気を吸ってだんだん軟化していく様は生物の様で、7月以降のこの作品を、僕は「大蛇の抜け殻」と呼んでいた。

100年前から、知の体系を学ぶために集まった有志によって続けられている信濃木崎夏期大学。それを、独特のアプローチでリスペクトする原始感覚美術祭。これらの志ある精神がゆるやかに受け継がれていく事こそが、この地の文化的な魅力なのだと思う。

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