エネルギー博物館 × 淺井裕介 「土の泉」

Sato Sosei
芸術祭の記録
Published in
2 min readSep 18, 2017

どこかで淺井裕介が、「僕は大きな一枚の絵の欠片を描いている」と言っていたという噂を聞いて、ずいぶん得心したのを覚えている。淺井の絵の支持体や素材を考えると、彼の絵に対する愛情の経緯が伝わってくる。僕の記憶が正しければ、淺井君がマスキングテープを使い始めたのは、家の外に出て、目につくものすべてに絵を描きたくなって、電信柱に描いていたら怒られたからだそうだ。すぐにはがせる状態で絵を描くために使ったマスキングテープは、一時的な平面作品を空間に展開するための、淺井特有の新しい手法として確立された。そう考えると、白線の素材を切ってバーナーで焼き付ける大町名店街にも使われた白線絵画は、現代の都市空間に対応した3-5年程度残る素材であり、泥絵は自然に還るという意味で、絵描きからその残存時間を手放す事が可能な素材である。それは、彼が自分の絵と、それを描く環境について深く考えているからこそ辿り着いた手法なのだ。そんな彼が今回、初めてエネルギー博物館の屋外空間で泥絵を描いた。新しい技術で風雨にある程度強くなっているとはいえ、泥絵は儚いメディウムである。ここで僕らは、新しいステージに移行しつつある淺井の「大きな絵の欠片」である今回の作品を、どのように感じ、どう付き合っていくのか、という課題を投げかけられているのだ。

--

--