The DECK:大阪に魅力的なコーワーキングスペースができるまで
井登 友一 (スプリント・マスター)
Note: you can also read this article in English here.
コミュニケーションとコラボレーションを創出するイノベーション空間のデザイン
The DECKは大企業に属する人からフリーランスとして仕事をする人まで、様々なバックグラウンドをもつ人々を対象に、これまでになかったイノベーティブな共創空間をもたらすことを目的として、四社が参画し、2016年4月に設立された。
集客によるオープンイノベーションの促進
コミュニティの多様性を保つためには、その場を誰にでも魅力的なものにしなければならない。そのために、The DECKにおいては、三つの基本的な考え方を重視した:共創、デジタル・ファブリケーション、そしてオープン・イノベーションである。
この統合は、空間創出の重要なキーとなる。まず、2〜3週間に渡りサービスデザインスプリント(SDS)の方法論に則った形で議論を進めた。その後、4週間の集中的な創造フェーズへと移行した。最終的には、創造フェーズのスケジュールに合うように、SDSのプロセスを若干短縮する形で調整した。
時間的な制約の中でいかにして「最も重要なこと」に集中するか
予定が詰まった中で遂行しなければならなかったこのプロジェクトであるが、もしクライアントの経営陣がSDSの全プロセスに関わったとしても、可能なアクションをリストアップし、彼らのニーズを満たす形でスケジュール調整を行うことができたであろう。
第一に、我々のチームは、これから取り組む事柄に対して、内部で共通の文脈を持つことからスタートした。本やインターネットなどでリサーチを行い、プロジェクト遂行に当たっての基礎情報の入手に努めた。具体的には、過去・現在・未来の類似例を思い浮かべることができよう。
そして、気づきを得るために、フォーカスユーザー(我々の「ヒーロー」でもある)、そのメンタルモデルについて、簡単なインタビューを行なった。また、協働・協力・共創の分野において、知識や経験を持つ5名のエクストリーム・ユーザーに対しては詳細なインタビューを行った。
第二に、モーメントマップの作成により、ユーザージャーニーを明らかにし、彼または彼女のニーズを反映させる形で、機会や障壁に関する事柄をマッピングした。
アイディエーションの後は、The DECKが実ビジネスに適用可能な形にするために、いくつかのアイディアに優先順位をつけた。階層化されたアイディアは、「ヒーロー」のニーズと実現可能性に従って情報を整理することに役立った。
そして、有益最小限のサービス(Minimum Valuable Service:MVS)を探求するセッションを行った。このセッションを通じて、複数のチャネルをカバーする経験を検討した。このアプローチは特にアイディエーションフェーズには有効である。
それでも、発展途中である
SDSの方法論を用いた三週間の集中ワークショップは様々なアイディアを生み出した。2016年9月までの半年間において、The DECKが検討するべきアジェンダも提案した。次のステップとしては、開業後に真の「ヒーロー」とともにプロトタイプを創造することになろう。すでに来訪者よりフィードバックを得ており、いくつかはサービスアイディアを改善することに役立ちそうだ。
クライアントは、The DECKを、様々なアイディアと人々が行き交う”アツい”場所にしたいと考えている。我々はこれからも、多様性を持った人々がイノベーティブなアイディアを創出する場を作るべく、継続的にクライアントをサポートしていく所存である。
気づき
- 時間管理を効率的に行うために、オフラインでの議論・検討を行う前にGoogle Formにてアイディアの収集を行った。
- 参加者のモチベーションを維持することが重要である。我々は一週に一度のワークショップを3週に渡って実施した。この頻度は適切であり、これまでの議論を忘れることもなく、メンバーが適度にリフレッシュしながらワークショップに参加することができた。
- アイディア実行と検討のためのロードマップを示すこと。スケジュールはローンチ後でもサービス創出のためのアイディアを磨くために重要である。クライアントは常に多忙であり、取り組みを持続的なものにしていくためにはアクションプランを提示することが重要である。