「友達が多すぎるのは実は良くないかも…?」などの ”起業家の人脈 (ネットワーク)” に関する研究

Taka Umada
Startup on Rails (仮)
5 min readJul 7, 2015

様々な分野でソーシャルキャピタルの重要性が説かれていますが、その中でも起業家にフォーカスした人的ネットワークの研究では、MIT Center of Collective Intelligence の Peter Gloor の研究が個人的に気に入っています。

たとえば以下の Gloor らの論文では Nann らとの共同研究を引きながら、「オンラインの友達が多すぎるのはスタートアップの長期的な成功に悪影響かも」といったようなことが示唆されています。

In earlier work, Nann et al. (2010) found a correlation between central network position of entrepreneurs in XING and their business success. Meanwhile, a more differentiated picture emerged, where having too many online friends might be detrimental to longtime startup success.

日本語での概要把握

実際は Gloor らの論文を読んでいただきたいのですが、起業している方にはなかなか論文を読む時間もないかと思います。なので、人工知能で有名な松尾豊先生のところで研究されていた松田さんによる起業家のネットワークの研究のサマリーが概要把握の上で便利かと思い紹介させていただきます。

あるいは起業活動に望ましい影響を与えるコミュニティの研究として、S. Nann et al. (2010)は、ドイツのXingというビジネスSNS上の12の大学の同窓会を対象に、どの同窓会コミュニティが卒業生の起業家の成功をもたらすか分析を行った。これによれば、より閉鎖性が高く同窓会の中での人間関係が濃密なほど、起業家が成功しやすい傾向にあった。コミュニティ内の信頼があるので、資金集めや人材募集を容易にしたためだと考えられる。ただし、起業家の成功を企業規模等で5段階に分けた場合、最も成功した起業家達は、その下のレベルの起業家達よりも僅かだが閉鎖性が低いということも分かった。

スタートアップに限らず、日系企業内では学閥があると聞きますし、日本のスタートアップ界隈では「元リクルート卒業生スタートアップ」つながりとかがあるのかな、というのを感じるところではあります。

また同じ松田さんによる別の論文のノンテクニカルサマリも、こうした起業家の人的ネットワークの導入の手引きとなるのではないかなと思います。

その結果、人的資本については管理職経験の長さは、起業の3つの段階を越えるのに正の影響を与えるが、MBA資格やベンチャーキャピタルでの投資家経験は、起業前には正の影響を与えたが、起業後の利益には役立たなかった。また社会関係資本については、起業の実行に際しては起業家や経営者の家族がいることが正の影響を与えたが、起業後の利益については家族は関係が無く、むしろ起業家や経営者の友人がいることが正の影響を与えていた。つまり、起業前と起業後で起業家に求められる資質は異なっており、起業家や経営者の友人を作れば起業の成功率が上がる可能性があるといえる。

また起業後に利益を上げることのできた起業家は、そうでない起業家に比べて、経営相談をする相手の持つ人脈の広さを考慮し、起業経験者に「経営者としての心得」および「共同設立者、優秀な社員、取引先、顧問、サービス提供者探し」について特に相談するなど、相談相手に応じた相談内容を選択する傾向にあることも分かった

個人的にも、起業家間については弱い紐帯より濃いつながりのほうが、特に起業後は利するところが多いのではないかと考えています。

こうした研究の成果を鑑みて、本郷近辺のスタートアップの人たちとの昼食会を短期間だけ開きたいと思います。ご興味ある本郷周辺のテクノロジ系スタートアップの方は是非ご参加ください。

凝集性の高いつながり(サムネイル用)

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Taka Umada
Startup on Rails (仮)

The University of Tokyo, Ex-Microsoft, Visual Studio; “Nur das Leben ist glücklich, welches auf die Annehmlichkeiten der Welt verzichten kann.” — Wittgenstein