訪日外国人が日本の航空法に反してドローンを飛ばす理由

日本の法規制がわかりにくい。
理由は、これにつきます。

訪日外国人の方が、日本国内でドローンを飛ばす際、法令・規制に反する形となって注意を受けるケースがあります。現状は、そうなっても仕方が無い状況です。

「そんなもん、日本に来る前に検索して、ルールを調べておけばいいじゃん」

と思っていたのですが、実際に検索してみると、さっぱりわからない。

日本の法規制はわかりにくい、と書きましたが、航空法をはじめとする法令・条例がわかりにくい、ということではありません。実際にどのようなレギュレーションとなっていて、どう運用すればいいか、が非常にわかりにくい形になっています。

日本のルールのわかりにくさ

1. 検索に引っかからない

あなたが外国人だとして「今度、旅行で日本へ行くついでに、ドローンを飛ばして景色を撮影してみようかな~」と思ったとします。

その際、まず最初に、どういう法規制になっていて、ルールに違反するとどんな罰則を受けるのか、気になって調べますよね。

実際に“drone japan guideline” “drone japan law” “drone japan regulation”と検索してみると、下図のような結果が表示されます。 (GoogleのSERP [初出でSELPとしていたのを訂正]。パーソナライズはオフ)

「日本のドローンのルールってどんな感じ?」と検索した結果

ドローンのフライトに対して最も影響が強い国土交通省のWebサイトは、検索結果上位5件以内に表示されません。

最も適切で確実な情報を伝えるべき省庁の情報へ、容易にアクセスできない状況です。

いずれの検索結果も、東京の法律事務所で働く方がボランタリーに作っているWebサイトが最上位に表示されています。恐らく、このWebサイトを作られた方も「これじゃ、わからんよね」と感じて、情報を発信されているのかもしれません。

他の国ではどうなっているのでしょうか。
まずは、アメリカの場合を見てみます。

“us drone guidelines”と検索すると、下図の結果が得られます。

「アメリカのドローンのルールってどうなってるの?」と検索した結果

1位から3位まで、FAA (連邦航空局)のWebサイトが表示されます。
1位はドンピシャでドローンの運用に関する情報を掲載しているページです。

4位はAUVSIというドローンに関する団体による啓蒙サイト、5位は報道機関 (CNN)のニュースページです。

AUVSIのページには、FAAが制作した「ここ注意やで!!!」と解説した動画が掲載されています。

1回検索しただけでこれだけの情報にアクセスできるので、少なくとも「アメリカでドローン飛ばしたいんだけど、どうしたらいいのかわからない」ということにはならないですよね。

続いて、シンガポールの場合を見てみます。

“singapore drone guidelines”と検索すると、下図の結果が得られます。

「シンガポールのドローンのルールってどうなってるの?」と検索した結果

1位と2位は、ドローンに関するシンガポールの法規制を紹介する、ニュースサイトの記事。

3位に、国土交通省やFAAに相当するCAAS (シンガポール民間航空庁)のWebサイトが登場します。

4位と5位は、民間の企業による、法規制ガイドのページです。

3位に登場するCAASのページが1位にあることがベストですが、現状でもそれほど迷うことなく、シンガポールにおけるドローンの運用ルールを把握出来るはずです。

アメリカもシンガポールも、検索すれば監督省庁が発表するドンピシャの情報へアクセスできる形になっていますよね。これなら、ルールをきちんと把握することが出来ます。同時に、知らなかった、では済まされない環境といえるでしょう。

日本の国土交通省も、ドローンの運用ルールを英文で発表しています。

にも関わらず、検索結果の上位に表示されません。

検索に引っかからない理由は、上記リンク先のソースコードを見ていただくと、一目瞭然。 “drone”という単語が1箇所も登場しません。
ドローンと書いていないのだから、ドローンに関する法律やルールを探している人が見つけられるわけがないですよね。

発表はしているけれども、検索でアクセスするのは容易ではない、という状況を国土交通省は作り出しています。
しっかりして欲しいところですね。

なお、先ほどの国土交通省のページでは、文中の画像で1箇所だけ “Drones (Multi-copters)” と書いてありますが、今のところGoogleは、画像中の文言を検索対象には含めていません。

2. 読む気が起きない

先ほど、シンガポールのケースに触れました。
僕は、シンガポールのCAASが発表しているレギュレーションが最もわかりやすい形だと思っています。

CAASが発表しているドローン運用ルールは、下図のように、とてもわかりやすい形にまとめられています。

image from CAAS http://www.caas.gov.sg/caas/en/ANS/unmanned-aircraft.html
image from CAAS http://www.caas.gov.sg/caas/en/ANS/unmanned-aircraft.html

やるべきこと (DOs) 6点、やってはいけないこと (DON’Ts) 8点。
間違えようのない形で、ドローンのフライトに関するルールを紹介しています。

前述の通り、日本の国土交通省もルールを掲載しています。 http://www.mlit.go.jp/en/koku/uas.html
しかし、肝心な「運用時の禁止事項」に恐るべき注釈がつけられています。

(A) Airspace above 150m above ground level.
(B) Airspace around airports. (airspaces above approach surface, horizontal surface, transitional surface, extended approach surface, conical surface and outer horizontal surface. For further details, please refer http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000004.html(available only in Japanese))
(C ) Above Densely Inhabited Districts (DID), which are defined and published by the Ministry of Internal Affairs and Communications. (For the further details, please refer http://maps.gsi.go.jp/#8/35.563512/140.339355/&base=std&ls=std%7Cdid2010%7Ckokuarea&disp=111&lcd=kokuarea&vs=c1j0l0u0f0&d=vl (available only in Japanese))
国土交通省 Webサイト http://www.mlit.go.jp/en/koku/uas.html より引用。太字は筆者による

“available only in Japanese”。「郷に入りては郷に従え」メソッドですね。
これは流石に読む気がしませんよね。

ちなみに、この“abailable only in Japanese”な内容を把握しない限り、うっかり東京のど真ん中でドローンを飛ばしてしまいかねません。

(B)と(C)はそれぞれ、航空交通管制圏と人口集中地区に触れています。
ここで示す内容を理解すれば、事前の申請無しに東京23区内でドローンを飛ばせる場所は無い、とわかるのですが、これを理解するにはまず日本語を勉強しなければならないというハードルの高さ。厳しすぎる。

図解も併記されているのですが、結局 “Airspace other than (A), (B) and (C)”がどこなのか、よく分からないのです。

ご多分に漏れず、いらすとやさんが活躍。

これだけ見ると、日中で有視界飛行、人や建物から30mの距離を保っていれば、なんとなく大丈夫なのかしらね? とも読めますが、全くダメです。

そもそも、大半のドローンオペレーターは、ドローンの危険性を知っています。
だからこそ、なんとなく、という理解は許されないことは承知で、実際のルール・レギュレーションを各人で調べます。

そこで、日本語を読めなければルールを正確に知ることができない、というのは、あまりに厳しいのではないでしょうか。せめて、英文だけでも、きっちり情報を公開しておいてほしいものです。

「ルールがわからないなら、ドローンを飛ばすべきではない」という話は、その通りです。しかし、法令に則ったフライトをするためにルールを知りたくても、容易に知ることが出来ない現状は、変えていく必要があります。


訪日外国人に人気の高い観光地では、ドローンのフライトを試みる方も多いようです。大半は、航空法をはじめとする法令・規制に違反する形になります。

こうしたことを防ぐには、ドローンを飛ばしたい方に向けて、国内におけるドローンのフライトに関するルールをきちんと伝わる形で公開する、という当たり前の対応から始めるべきです。

僕のところでも、YouTubeやInstagramのコメントで、外国人の方から「日本でドローン飛ばす時ってどういうルールなの?」「飛行機で日本へ行くんだけど、ドローン持っていって大丈夫?」と聞かれることがあります。
その度に、国土交通省のページのリンクを送ったりするのですが、上記の通り、役に立たないページとなっているので、「とにかくルールが厳しいから、街中や観光地で飛ばすのは諦めて」という話になります。

国外からやってくる優れたドローンオペレーター・映像クリエイターが、国内法に則った形で安全にドローンを運用して、日本の素晴らしい光景を写真や映像に収めて公開してくれれば、日本の観光プロモーションとして有効な一手となります。

そうした機会を、この国が自ら捨てているのは残念でなりません。


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