ナイチンゲールとデータ・ジャーナリズム

「The Data Journalism Handbook」”データ・ジャーナリズムの展望”より

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By w:Florence Nightingale (1820–1910). — http://www.royal.gov.uk/output/Page3943.asp [dead link], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1474443

もう一つヨーロッパにおける初期の例に、Florence Nightingaleと1858年に公開された彼女の重要なレポート 「英国陸軍の死亡率」 がある。議会に向けたレポートで彼女は、グラフを用いて英国陸軍における医療サービスの改善を訴えている。最も有名なのは彼女が「鶏のとさか」と呼ぶ円グラフで、これは月毎の死者数を示しており、その死の大部分が銃弾ではなく避けられたはずの病気によるものであることを強調するものだった。

データ・ジャーナリズム・ハンドブックの”データ・ジャーナリズムの展望”からの引用です。ナイチンゲールは統計学の知識も持ち、クリミア戦争に派遣された際にデータを元に環境の改善を求めるレポートを作成したのですが「統計になじみのうすい国会議員や役人にも分かりやすい」ように当時としては珍しかったグラフを用いて、視覚に訴えるプレゼンテーションを工夫しました(ナイチンゲールと統計|総務省 統計局 http://www.stat.go.jp/teacher/c2epi3.htm)。

1858年にすでにこのような試みが行われていたことに驚くとともに、子どものころに読んだ偉人伝から持っていたナイチンゲールのイメージが大きく変わった瞬間でもありました。

さて、データ・ジャーナリズム・ハンドブックでは、1952年に初めて使われた「コンピューター支援報道(Computer-Assisted Reporting/CAR)」や、1970年代初期に生まれた「精度ジャーナリズム(Precision Journalism)」など、様々なデータを使った報道の「先例」が紹介されています。

派手なグラフやインタラクティブなコンテンツなど、とかく「最新」のイメージがつきまとい、それゆえに悪い意味での若さも感じさせるデータ・ジャーナリズムですが、こうした類似の先例とその影響を知ると、年月をかけた試行錯誤の上にその思想がなりたっていることが理解できるのではないでしょうか?

この記事で紹介した内容は、先日公開された「データ・ジャーナリズム・ハンドブック」日本語版からのものです。興味を持った方は、ぜひ他のセクションも読んでみてください。

11/27(日曜日)には、このハンドブックの日本語版の公開を記念したイベントも開催されます。翻訳に関わったスタッフによる講演や質疑応答を予定しています。ご都合のつく方はぜひ起こし下さい。

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立薗理彦(たちぞのまさひこ)
スタジオピグボ

「ナタリー」「ゼゼヒヒ」「ポリタス」いまはこれ→「カラクリ合戦伝」(スマホ用リアルタイム・ストラテジー・ゲーム) https://yoyaku-top10.jp/u/a/MTgwNzA