英”EU離脱”国民投票についてのデータ・ジャーナリズム事例

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津田メルマガで「世界のデータ・ジャーナリズム最前線」という連載をしていたのですが、その番外編という感じで記事にしてみました。

イギリスのEU離脱に関する国民投票を扱ったデータ・ジャーナリズム記事集です。投票結果と地図のマッシュアップや、投票結果を投票者の属性と関連づけるなど「分析」が行われているものを選んでいます。

※ 「できるだけ多くみつける」努力はしていますが、網羅性は考慮されていません。
※ あくまでもデータ・ジャーナリズム事例の収集を目的としていて、イギリスのEU離脱についての多角的な視点をカバーすることを保証しません。

記事を作成した経緯も公開するというデータ・ジャーナリズムのお作法に従って、本稿で紹介された記事をどうやってみつけたのかを書きました。

EU referendum: The result in maps and charts (BBC)

URL: http://www.bbc.com/news/uk-politics-36616028

投票結果を元に地域ごとを色分け。ほかに、

  • 年齢
  • 教育レベル
  • アイデンティティー

と投票行動の相関などをグラフにしています。BBCによる純粋な投票結果一覧(地域別含む)はこちら

EU referendum full results — find out how your area voted(The Guardian)

URL: http://www.theguardian.com/politics/ng-interactive/2016/jun/23/eu-referendum-live-results-and-analysis

データ・ジャーナリズムに早くから積極的に取り組んできたThe Guardianの記事です。投票結果マップのほか、投票者のさまざまな属性と投票内容の相関についての分析を掲載しています。

  • 教育レベル
  • 収入
  • 年齢
  • 中流・上流などの社会階層
  • 人口における移民の割合

こうした属性が、投票内容にどのように影響を与えたのか?結果が気になる方はぜひ記事をチェックしてみてください。

How Britain Voted in the E.U. Referendum (The New York Times)

URL: http://www.nytimes.com/interactive/2016/06/24/world/europe/how-britain-voted-brexit-referendum.html

投票結果を元に地域ごとを色分け。データ元はBBC。シンプルな記事になってます。

Fallout From Britain’s Exit: Markets, Immigration and Trade

URL: http://www.nytimes.com/interactive/2016/06/23/international-home/brexit-leave-repercussions.html

イギリスのEU脱退の影響を様々なグラフ(EU各国のGDP、移民の割合、通過レートなどなど)で解説。

Why the Surprise Over ‘Brexit’? Don’t Blame the Polls

URL: http://www.nytimes.com/2016/06/25/upshot/why-the-surprise-over-brexit-dont-blame-the-polls.html

なぜ、事前のネット投票などの結果を基にした投票結果の予想が外れるようになってきたのか?

What Is Driving the ‘Brexit’ Debate, and What a ‘Leave’ Vote Could Mean (The New York Times)

URL: http://www.nytimes.com/interactive/2016/06/19/world/europe/brexit-debate-immigration-trade.html

今回の投票で「離脱」派がリードした背景とされる、イギリスにおける移民の実態をグラフで紹介しています。

Britain votes to leave the EU (The Economist)

URL: http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2016/06/daily-chart-17

エコノミストによる分析です。

  • 教育レベルと投票内容の関係
  • 年齢と投票内容の関係

このほか、イギリスに入ってきている移民、EU各国に在住のイギリス人のマップなど。

Mapped: where is Ukip’s support strongest? Where there are no immigrants (The Telegraph)

URL: http://www.telegraph.co.uk/news/politics/ukip/11539388/Mapped-where-is-Ukips-support-strongest-Where-there-are-no-immigrants.html

EU離脱をとなえるUKIP(イギリス独立党)の支持者の分布図と、イギリス国内の移民の多い地域を比較した記事。

This map shows Britain’s striking geographical divide over Brexit(The Washington Post)

URL: https://www.washingtonpost.com/news/worldviews/wp/2016/06/24/this-map-shows-britains-striking-geographical-divide-over-brexit/

The Washington Postによる、地域別投票マップ。今回、The Washington Postがおとなしかった印象があるのですが、まだ探せてないだけでしょうか。

EU referendum results (Financial Times)

URL: https://ig.ft.com/sites/elections/2016/uk/eu-referendum/index.html

Financial Timesはライブ・ブログの更新とTwitterなどを通じて大量の情報を流しています。URLは結果をまとめたグラフのページです。投票に影響を与えた地域のグラフなどがあります。

What will Brexit mean for immigration? (Financial Times)

URL: https://next.ft.com/content/a874de26-34b2-11e6-bda0-04585c31b153

移民の実態。グラフは、ここ数年で急激にEU各国からの移民の数が増えていることを示しています。

以下、データ・ジャーナリズムに類するFinancial Timesのツイートです。

離脱への投票は、経済的にEUへの依存が大きな地域でより多くなっている。グラフは、縦軸がその地域での離脱への投票の高さ(割合)、横軸がGDPに占めるその地域のEUへの輸出の割合です。

縦軸に離脱への投票率をとり、様々な属性との関係をグラフにしている。左上は大卒資格を持っている人の割合、右上は大卒程度の学歴が要求される職業に就いている人の割合。大卒の人口比率が高いエリアでは、残留派が強い

中断左はパスポートを持っていない(最近海外に行っていない)人の割合、中断右は平均収入(相関は若干弱いと書いてありますが)。海外に無関心な人が多いエリア、平均収入が低いエリアでの離脱への投票意向が強い。

そして一番下は年齢との相関。年齢が若い人ほど残留に投票している。

Britain votes to leave EU (REUTERS)

Reutersは、投票結果のみのシンプルなグラフを掲載。

How the U.K. Voted in the ‘Brexit’ Referendum (The Wallstreet Journal)

The Wallstreet Journalも、結果ページはシンプルです。

Unexpectedly high turnout in Leave areas pushed the campaign to victory (YouGov)

URL: https://yougov.co.uk/news/2016/06/24/brexit-follows-close-run-campaign/

YouGovは独自の事前調査を元に投票の当日まで「残留が4ポイントリード」という発表をしていました。結果としては予想が外れてしまった訳ですが、その理由について自ら考察した記事を公開しています。

5 facts about migration and the United Kingdom (Pew Research Center)

URL: http://www.pewresearch.org/fact-tank/2016/06/21/5-facts-about-migration-and-the-united-kingdom/

イギリスにおける移民増加の実態など、5つの「facts」がグラフと共に提示されています。

Brexit vote highlighted discontent with EU in UK, other countries (Pew Research Center)

URL: http://www.pewresearch.org/fact-tank/2016/06/24/brexit-vote-highlighted-uks-discontent-with-eu-but-other-european-countries-are-grumbling-too/

イギリス国民がEUに抱く感情についての調査まとめ。他のEU諸国の平均と比べて低い評価。スコットランドとの違いも。

Lego Brexit Map is the only way to track the EU referendum (Mashable)

URL: http://mashable.com/2016/06/26/lego-brexit-map-eu-referendum/#91WiXeEbRmqV

レゴで表現した、EU離脱投票の結果マップ。

Petition Map (Unboxed)

URL: http://petitionmap.unboxedconsulting.com/?petition=131215

イギリスの政府が提供する請願サイト。1万人以上の署名を集めると政府から回答が、10万人以上なら国会で取り上げるというルールになっています。こちらは、その署名のデータを地図上にプロットしたもの。政府のサイトからリンクが貼られています。

Stop Using Google Trends (Medium)

「EU離脱に投票した人が、結果が出てから”EUって何?”と検索した」は本当か?

Google Trendsは相対的な検索数をグラフにする。「Euro 2016」など他の検索結果と比べると”EUって何?”の検索は多くないという指摘。

英国:国民投票 離脱派、地方の不満利用 経済停滞訴え (毎日新聞)

URL: http://mainichi.jp/articles/20160626/ddm/007/030/156000c

YouGovの投票者の属性データや専門家の分析を紹介しています。

The online polls were RIGHT, and other lessons from the referendum (YouGov)

URL: https://yougov.co.uk/news/2016/06/28/online-polls-were-right/

今回の投票では事前調査の結果をもとに「残留が僅差でリード」と発表していたYouGov。結果は予想と異なるものになった訳ですが、その予測のプロセスについて検証をしています。

イギリス人がEU離脱の結果に悔やんでいるという報道は本当か? (今日も日曜日)

一川 堅さんによるブログ記事です。投票後にメディアが報じた「イギリス人がEU離脱の結果に悔やんでいる」という論調の報道について、YouGovの意識調査のデータをもとに検証しています。

終わりに

引き続き収集を続けたいと思います。「こんなのもあるよ」というのがありましたら、Twitter ID: mshkまでご連絡ください。

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更新履歴

2016.7.1: 一川 堅さんの「イギリス人がEU離脱の結果に悔やんでいるという報道は本当か?」とYouGovの「The online polls were RIGHT, and other lessons from the referendum」を事例に追加しました。

2016.6.29: 毎日新聞の「英国:国民投票 離脱派、地方の不満利用 経済停滞訴え」を追加しました。

2016.6.28: “Stop Using Google Trends”のリンクを追加しました。

2016.6.27: MashableのレゴによるEU離脱投票グラフと、EU離脱投票やり直し署名のインタラクティブ・コンテンツを追加しました。

2016.6.26: Pew Research Centerの事例を追加しました。

2016.6.25: NYTimesによる、イギリスにおける移民の実態の記事と、YouGovの「なぜ我々の予測は外れたのか」という記事のリンクを追加しました。

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立薗理彦(たちぞのまさひこ)
スタジオピグボ

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