NYTimesの大統領選挙予測ゲージはいかにして作られ、そして我々を惑わしたのか

NYTimesの大統領選挙リアルテイム更新ページより

クリントン氏とトランプ氏の死闘がSNSを騒がせた、2016年の米国大統領選挙。この行末を様々なウェブ・サイトのリアルタイム更新ページで見守った人も多かったのではないでしょうか。

こちらにまとめを作ったのですが、ちょっと探すだけでも出るわ出るわ。発見できただけで20以上のニュース・サイトがリアルタイム更新を行っていました。

なかでも分かりやすく美しいグラフィックといち早くトランプ氏優位を報じたThe New York Timesのサイトは 日本でも多くの人がチェックしていたようです。

ランダムに動く予測ゲージに巻き起こった議論

あのサイトを見ていて、ゆらゆらと動くゲージに注目した人も多かったのではないでしょうか。筆者自身も「すげー精度だな、NYTimes」と思っていたのですが、ふとTwitterを覗くとこんなツイートが。

なるほどそれはそうかと思い、その後は特に気にもせずサイトを見ていたのですが、この「ゲージの揺れ」は後に論争を巻き起こしていたのです。

Vis4はNYTimesで速報ページに関わったGregor Aischのブログです。ここでは、あのゲージに対する反響と疑問が紹介されるとともに、開発者自身による答えが綴られています。結構な人がネガティブな意見を寄せていたんですね。

“Why did we let the gauge needles jitter?”には、以下の説明があります。

  • 予測ページのコンテンツが”ライブ”で更新されている(だから定期的にリロードする必要はない)ことを表現したかった。
  • 選挙の予測が不確かなものであることを表現したかった。

そのほかにもあのページをどのような意図をもってデザインしたかが書かれています。興味を持った方は読んでみて下さい。

ちなみに、ゲージの動きそのものはランダムだったものの、動く「範囲」は実際の選挙シミュレーションにもとづいていたとのことです。

ゲージのランダムな動きはProcessing.jsのnoise()関数で生成

さて、エンジニアである筆者が一番気になったのは、”Why did the needle movements look almost real?”という質問への答えです。正直、若干炎上気味の状況でこれを書くか?というちょっとかわいいセクションなのですが、答えによるとProcessing.jsのnoise()関数を使っているとのこと。

この関数によって、ランダムでありながら自然なゲージの動きを実現していたんですね。

おわりに

米国の大統領選挙は、海外のメディアが多大なリソースを投入して報道を行い、また実験的な試みも行われるため、データ・ジャーナリズムやビジュアライゼーション界隈のお祭りにもなっています。当然こうした賛否両論の結果にもなるわけですが、将来の糧としてやはり貴重な取り組みであり、その後のブログでのフォローも素晴らしい対応だと感じました。

この記事を読んでデータ・ジャーナリズムに興味を持った方、あるいは読む前から興味を持っていた方へ

データ・ジャーナリズムに関するジャーナリスト達の手によるハンドブック「Data Journalism Handbook」が、有志の協力で日本語に翻訳されました。こちらもぜひご覧ください。

2016/11/27(日曜日)には、このハンドブックの日本語版の公開を記念したイベントも開催されます。翻訳に関わったスタッフによる講演や質疑応答を予定しています。ご都合のつく方はぜひ起こし下さい。

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立薗理彦(たちぞのまさひこ)
スタジオピグボ

「ナタリー」「ゼゼヒヒ」「ポリタス」いまはこれ→「カラクリ合戦伝」(スマホ用リアルタイム・ストラテジー・ゲーム) https://yoyaku-top10.jp/u/a/MTgwNzA