人も家具も、出会いは必然。ずっと使ってきたかのような、古いダイニングテーブルのこと

Eriko Masumura
SuMiKa.me magazine
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3 min readFeb 11, 2016

長野県に移住する前、東京の、“超”がつくほど都心で暮らしていた私は、当時、暮らしに必要なものを自分の手でつくるという発想は持ち合わせておらず、デザイナーズ家具に心惹かれて、決してお安い買い物ではなかったけれど、ダイニングテーブル&チェアを、ちょっと頑張って買い揃えていました。

移住が決まって、そのダイニングテーブル&チェアも持ってきたのですが、どう考えても新しい暮らしに馴染まず、家に置いてみることもせず、かといって思い切って手放すこともできず、文字どおり“お蔵入り”に。ずっと欲しいと思ってやっと手に入れた家具なのに、移住先ではまったく魅力のないものに見えてしまうという、大きな価値観の変化を経験しました。

今つかっているダイニングテーブルは、再婚相手である夫に、とある取材で初めて出会ったとき、そのテーブルで取材をした、という、言ってみれば思い出の一品。

そのダイニングテーブルは、いつの間にか移住先のトレーラーハウスに運ばれていて、住み始めてから少しばかり天板を削ったり、補強したりして、もう何十年もずっと使ってきたかのような、当たり前のようにそこにある家具になっています。

新品&高級なデザイナーズ家具と、夫が手を入れた、古くて味のある、そして思い出深い家具。

このときの価値観の変化で、私自身のものごとの考え方、ものの入手のしかたは、ガラリと変わったように思います。

新品よりも、中古品。
既製品よりも、自分でつくったもの。
工業製品よりも、人の手でつくられた、味わい深いもの。

何か欲しいものがあるとき、買うのではなく自分でつくる。
つくれないものは、顔馴染みの骨董品屋さんに電話して、こんなものを探しているんだけど、と相談してみる。

そうこうしているうちに、忘れかけた頃に、いいの見つけたよ、と骨董品屋さんから連絡が入ったりするんです。

近頃、もしかすると(新品を)買うという行為は、自分から遠い存在で、本当は自分の力では入手できないものを、無理やりたぐり寄せているんじゃないか、という感覚さえあります。

できれば、人も家具も、必然的に出会いたい。
そうすれば、粗大ごみやリサイクルセンターにあれほど家具が集まるようなこともなくなるんじゃないかな、と想像したりします。

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Eriko Masumura
SuMiKa.me magazine

国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスエディター。二児の母。長野県諏訪郡へ移住し、八ヶ岳の麓で、DIY的暮らしを始める。“小さく暮らす”をモットーに、賃貸トレーラーハウスにてミニマルライフを実践中。